森の中

安部 真夜

第1話〜少女のお引越し

 ある所に一人の少女がいました。


 夢見がちで空想をしてはそれをお話にしたり、絵にしたりしてそれはそれは楽しく暮らしていました。

 名前を千砂ちさといいます。


 ある日の事です。

 千砂ちさが以前から親しくしていた剣士からお手紙が来ました。


『俺は今、ある森にいるんだ。

 そこは楽しいから君も来てみてはどうだい?』


 それを聞いた千砂ちさは、一冊のノートとスケッチブック、お気に入りの本や綺麗な便せんを持って、その森へと向かいました。


「やっと着いた!」


 森に着いた千砂ちさはあたりを見回しました。


 その森ではいろいろな人間や動物たちが歌ったりおしゃべりしているのを、他の人間や動物が耳を澄まし聴いたり拍手をする、それはそれは素敵な場所でした。

「私もこのお気に入りの本をみんなに読みたいなぁ、お話を書いたり、おしゃべりや聴く人をお絵かきしたい」



 そう思った千砂ちさは森の中をたくさん歩きました。

 あれ、素敵な歌が聴こえる。

 そう思った千砂ちさは木の陰から様子を伺いました。


 青年が歌を歌っていたのです。

 その歌はとても素晴らしく、千砂ちさは聴きいってしまいました。


「すごいわ! あなたって歌が上手なのね!」


 ちゃんと青年の歌を聴きたいと思った千砂ちさは気づくと青年の目の前まで歩み寄り、歌の感想を述べました。

 本を読むことが好きな千砂ちさはありったけの語彙ごいを使い、その歌声の素晴らしさを精一杯伝えます。


「そうやって褒めてくれてうれしいよ。

 ありがとうー!」


 青年は聴いた人から拍手はもらっても、歌をほめられ慣れてていないので照れくさそうにしていました。


「私こそありがとうです。 素敵な歌をまた聴かせてくださいね」


 そして森をてくてくと歩き、色々な人のおしゃべりをし。

 英国紳士風の男性と大きなリボンが可愛らしい少女が仲良さそうに会話してるのを見て
、

『素敵だな、仲がいいって素晴らしいなー』

 そう思った千砂ちさは、思い切って話しかけてみました。 リボンの少女は

「えへへ、あいちゃんと友だちになりませんか?」

 と言ってくれました。



 初めてのお友達です。


 自らのことを“あいちゃん”という、リボンの少女は博学で。

 けれども口調は幼く、どこか風変わりな印象を受けます。

「あいちゃんはいろいろなことに詳しいんだね。

 私も本を読むのが好きだけど、あいちゃんはそれ以上にたくさんの本を読んでるみたいだし」

「えへへ、あいちゃんは天才ですからね!」


 リボンの少女との出会いが嬉しかった千砂ちさは、さらに森の中を歩き始めます。

 少しだけ疲れていましたが、もう少しだけ…あと少しだけ…と散策することにしました。



 そして辿り着いた先には、うさぎの耳を付けた女性が素敵なおしゃべりと、絵を披露していました。

「この森では見慣れない顔だね。 はじめましてかな?」

「うん! ここは素敵な森ですね」

「ありがとう、私もここを気に入っているんだ」


 女性はこの森で起きた出来事をいろいろ話してくれました。

 彼女の話は明るい人柄が滲み出ていてとても楽しく、それはそれは元気が出るので、少女はこう言いました。


「あなたのおしゃべりで、疲れていた私も元気がもらえました。

 ありがとうございます」


「いえいえ、私こそ聴いてくれてありがとう! だよっ」

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