第46話 天佑神助

ー将軍ケイイチー


「せや!」

 ヒュッ!という音とともに繰り出される拳をひたすら避ける。

「どうしたの!臆病風にでも、吹かれたかしら!」

 カザリの煽りには耳を貸さぬよう、目の前の筋肉の動きだけに集中する。

 魔法少女イサドラ、魔法少女ロナと二人の情報は知っていたが、ここでカザリもなってしまったか。先程から動きが衰える様子も見れず、逆にキレが増している。このままいくと俺が押しきられてしまうだろう。

 合図はもう出してもいいのだが、負けっぱなしで行くと、後々の俺の名前に傷が付くから嫌だ。

「くらえ!」

 その声とともに視界に現れた何かに最高速度で反応してカザリと距離を取る。

「大丈夫ですか!?カザリさん!」

「フゥー。ありがとう、赤木。ここからは二人で行くわよ!」

「もちろんです!」

 ふーむ………誰だ?どっっ…かで見たような見てないような……ムムム…思い出せん。


「ハアァ!」

 俺が考え事をしているとカザリがまた攻撃を開始する。

「そこだ!」

 追加された男の銃撃をプラスで。この銃弾はそこまで脅威ではないが、本能的に避けようと反応してしまうせいでカザリの追撃をもろに食らってしまう。

 追い詰められた今なら合図を出しても良い…だが、あのぽっと出の男に良い顔をさせるのは何かムカつく。

「……おら!」

「注意散漫ね!当たらないわ!」

「流石です!」

 俺の拳もカザリに届かない。あのムカつくヤローを殴りたくても、カザリが庇うように立ち回るに違いない。

「畳み掛けます!」

「えぇ!」

 チッ!とりあえず銃弾は受け止めるしかねぇ!

 ……?この力……あいつ元ニューワールドか!?

「よそ見かしら!」

「するか!」

 俺はカザリの拳に拳をぶつけ、右フックでカザリを押し退ける。

「くっ!食らえ!」

 さらにカザリに追撃をしようとするとヤローが銃撃で阻もうとする。

「効くかよぉ!」

 ヤローの銃弾には俺の力が込められていた、だからこそ当たる寸前で力を吸収しちまえば無力な鉄屑だ。元ニューワールドと言っても今の俺は悪の親玉将軍。慈悲は与えらんねぇな!

「食らいな!」

「ここまで……!」

 俺がヤローを殴ろうとすると、横槍を入れるようにカザリが足蹴を繰り出す。

「させないよ!彼も大事な仲間だから!」

「カ、カザリさん!」

 せめて、ヤローは潰しときたかったが……


 ガサ!

「ん?」

「おやおやおやぁ?そこにいるのは私の愛孫では?」

 ……従者?何でこんなところに?脱退したと聞いていたんだが……?

「お、お祖父ちゃん!?」

「「お祖父ちゃん!?」」

 カザリの放った衝撃の発言にヤローとハモる。

「おや、これはこれは………」

 従者は俺をチラリと見る。

「俺は火男だ。忘れたか?」

「いえいえそんな!大事な仲間ですもの、忘れるはずがございません。」

 良かった、察してくれたようだ。

「え………お祖父ちゃんニューワールドだったの!?」

「……従者、俺からも聞きたいが……分かるよな?」

 ヤローも気になるのか、一言も聞き逃さないように口を大きく開いて待っている。お前は犬か?

「おやおや、人気者は辛いですね。そうですよ、私こそニューワールド日本支部の幹部、従者にして、日本最初の魔法少女のお祖父ちゃんなのだ!」

 ……違う意味ではあるが、あそこまではっちゃけてるのは、昔のニューワールド時代以来だ。孫の前だからってカッコつけたいのだろうな。

「ちょ!お祖父ちゃん、止めて!恥ずかしいよ!」

「アッハッハッハ!………それより…後ろにいるそのヘタレとはどういう関係かな?カザリちゃん?」

 あ……あれはキレてるな。ヤローと従者は知り合いのようだな。俺は顔を覚えるのが苦手だから、幹部と周りの人しか思い出せないんだよなぁ。

「この人は私のサポーター……っ!?」 

 驚いた……瞬きをしたら従者がヤローの首根っこを掴んでいる。俺でもギリギリだったな………

「……………」

「ひぃ!?」

 従者がヤローの耳許で何かを呟くと、ヤローは怯えきった顔でブルブルと震え出した。

 ……あぁ、あいつは従者監督の戦闘重視の戦闘員だったんだな。従者は手心を放り棄ててひたすら追い込むタイプの指導者だからな。あの症状は従者が担当した戦闘演習班は全員発症していた。

 そのままズルズルと引きずりながらヤローを運ぶ従者。

「お祖父ちゃん!その人をどうするの!?」

 カザリが、心配そうにヤローと従者を交互に見る。

「大丈夫だよ。ちょぉっっとだけお話し合いをするだけだからね。」

 満面の笑みでヤローの頭蓋骨を鷲掴みする従者。

 流石に俺でも怖いな、あれは。

「あ…………フゥー、火男!続きを!」

 なにも言い返せず、見送るだけしたカザリは、俺のことを忘れていたのか焦ったように構えを取る。

「ハァー……興ざめだ。」

 俺はそう言って、とある場所へ向かう。

「あ!待ちなさい!」

 フ、ついてきたな。ここで!

 俺は黒い狼煙を上げる。

 従者に助けられたな。なんとか戦場を移す口実が出来た。

「自分の場所を知らせてどうするのかしら!」

「さぁな!」

 それはもちろん、相棒に合図をだすためさ!

 ………太郎、本当に良いんだな?

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