第1章 冒険者編

第四話 成長した元王子


 フログレンス王国近辺にある国、ヴァルベル帝国。

 数百年前に起こったモンスターたちの暴走、通称スタンピード事変が起こった際に対処した6人の冒険者たちによって作られた国である。

周りは六つのダンジョンに囲まれており、それに挑む冒険者たちが多いことからこの国は別名、冒険者の国と呼ばれている。






 ヴァルベル帝国の外れにあるダンジョンでとある少年がモンスターと戦っていた。


「オラッ!!!」


「グォォ・・・」


 緑色の皮膚を持ち少しボロボロの鎧を着ているモンスター、ゴブリンジェネラルにトドメの斬撃を放つ。

 トドメの一撃を喰らったゴブリンジェネラルはくぐもった声を上げながら灰になって消えた。


「ふぅ〜これで依頼完了だな」


 少年は剣をしまい、モンスターの核である魔石を拾うと腰にあるポーチに入れる。


「・・・ゴブリンジェネラルくらいじゃあ、簡単に倒せるようになったか」


 少年は灰になったゴブリンジェネラルの方を見ながらボソッと呟きその場を後にした。









「フランさん、依頼完了しました」


「あ、セリトさんお疲れ様です。討伐記録を確認しますので魔石をこちらに」


 俺は、ダンジョンから街へ戻り、冒険者ギルドに討伐確認報告に来ていた。

 そう言われ、俺は腰のポーチにしまっておいてゴブリンジェネラルの魔石と他にも買ったゴブリンたちの魔石を受付嬢に渡す。

 魔石を渡された受付嬢さんはカウンターの横に置いてある鑑定機に魔石を入れる。


「確認できました、討伐対象のゴブリンジェネラル一体とその配下のゴブリン9体、合計10体ですね。いや〜流石ですね、セリトさん!」


「いえいえ、まだまだですよ」


「そんなことないです、2年目にして冒険者の中で中堅の部類であるB級冒険者になった新生冒険者で噂になってますからね!」


「そんな噂流れてるんですか!?」


 受付嬢のフランさんからとんでもない爆弾を落とされた。

 恥ずかしくて顔から火が出そうだ。


「まぁまぁ、恥ずかしがるものじゃないですよ。それだけ知名度が上がってる証拠です!」


「だとしても、恥ずかしいもんは恥ずかしいですよ」


「それはさておいて、こちら今回の報酬です」


「さておかないでくださいよ!あ、ありがとうございます」


 ツッコミをいれながら、報酬を受け取る。

 今回の報酬は金貨2枚。

 金貨は庶民の生活なら1ヶ月は持つかなりの大金である。

 でも冒険者はわりかし、装備やらなんやらで金が飛んでいくのでこの金額では生活はあまりできない。


「それじゃあ、また明日来ます」


「はい、お待ちしてます」


 貰った報酬をポーチに入れ、フランさんに挨拶をして冒険者ギルドを後にする。













 俺は冒険者ギルドを後にし、泊まっている宿まで帰ってきた。

 この宿は若干建物の作りが古いけど飯がうまいし、ベットの寝心地もいいため一年前から利用させてもらっている。

 部屋に着くと、俺は腰のポーチと剣を外し机に置く。

 次にベット脇に置いてある背嚢から剣の手入れ用の道具一式を取り出すと今日も頑張ってくれた剣を労うために丁寧に手入れをしていく。


「・・・あれから2年か」


 刀身を拭き終わり、刃こぼれがないか確認した時にボソッと呟いてしまった。

 2年前、俺は無事にフログレンス王国からヴァルベル帝国に行くことができ、強くなるために冒険者になった。

 最初の頃は大変だった。

実践経験のなさが原因でまともに戦えなかったし、がむしゃらに剣を振って組んだ冒険者に危害を加えそうになったりもした。

 でもその度に叱ってくれる人がいたし、模擬戦を一緒にやってくれた人もいた、そのおかげで俺はあの頃よりかは強くなれた。

 そして、冒険者の中でも中堅の部類であるB級になれたし俺を強くしてくれた人たちには感謝しかない。


「よし、手入れ終了」


 手入れが終わり、剣を鞘に戻す。

 鞘に戻した剣をベット脇に立てかけ、体をほぐすために軽くストレッチを行う。


「ふぅ〜明日も依頼受けに行くか!」


 そう言って俺は窓を閉める。

 そして、翌日俺は自分の運命が動き出すことをこの時の俺は知る由もなかった。

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