第13話「SFホラー映画とわたし。」

温室のようなあの部屋に、キャラメルの甘い香りが広がる。


未来「映画も久しぶりね。アダムもポップコーンとコーヒー、いる?」

リオ「コーラ等も御座いますよ。」


わたしは今朝コーヒーを体験したので、コーラを選んでみた。

キャラメルポップコーンにコーラだと、甘すぎたかな?

でもいいんだ、わたしは新しい体験がしてみたい。


ルシェ「上映会開始するよー。」


ルシェが言うなり眼前に巨大スクリーンが投影されて、

部屋は暗くなり、発掘作品鑑賞会がはじまった。

…なんだか懐かしいね。

映画館には一度、子供だけでアニメを見るのに、

わたしが親代わりで行ったんだ。

記憶保存禁止だったから内容は覚えていないのだけれど、

楽しかったよね…。って気持ちだけが残っている。

ポップコーンとドリンクセットは子供たちには贅沢だし、

わたしも食べられる機体ではなかったので、

その時は無かったけれど今はそれを抱えている。

人類は滅びる寸前だけれど、

またこうして人と映画を見ているのはとても幸せなのかもしれない。


*


未来「…んー、まあそうねー…。」


映画が終わった。SFホラー作品だった。

ロボット達が人類を越えてしまって、人が追いやられる話だった。

人間に反撃の手段はなかった。

当時の風刺作品だったのだろうか?まさかドキュメンタリー…?


未来「人間のやれる事なんて実際もうないものね。

   全ては機械が作り出し、

   わたしたちは機械に助けてもらうしかない。

   そして彼らがわたしたちを必要としないなら…追いやられるのも当然ね。」


当然なの?映画の中で人は滅んだ。


ルシェ「…わたしたちは、そんな事はしないけどね。」

未来「今、機械のずっと先の天使達と

   こうして仲良くしてるのも、

   昔の人には思い描けなかったんでしょうねー。」


そうか、仲良く…。

…なんだろうな、昔に何かこういう話を聞いたような…

デジャヴュを感じる。

このお話の良い結末は、そうして思い描けなかったのだろうか。

だから、後味の悪いSFホラーとなってしまったのだろうか。

子が親をこえてゆき…親が劣るなら必用とされなくなる。

でも…子と親なのだから。


そしてお話とは違う現実に辿り着いて、でも。

何か戦争のようなものを経て生物としての人間は、やっぱり絶滅しかけている…。

全てを機械、天使任せで…。

…人間はまるで自分達がペットのようだとは、思わなかったのかな…?

そのあたりルシェには筒抜けだろうけども、口にはしないでおいた。

今はそういう世界なんだ…。


ルシェ『人間がペットのよう。…お前も、そう思ったのか?』


思っていたらルシェが聞こえないように通信をかけてきた。

…お前もって?


ルシェ『… …いいや。なんでもない。』


未来「昔の人の危機感なんか関係なく、天使は、人間の守護者よねー。」


…ルシェ。そうなんだよね?


ルシェ『そうだよ。』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る