主人公の藤井が「好きな人ができたことがない」という悩みを抱えながらも、周囲の男子たちの予想外の行動や告白に巻き込まれる姿が非常に微笑ましく、クスリと笑わせる場面が満載でした。
その中でも特に三人の男子たちの掛け合いが印象的でした。純粋さとおバカな発想が絶妙にミックスされていて、テンポの良い会話が読み手を飽きさせません。翔太、クロ、矢島それぞれのキャラクターも際立っていて、彼らの藤井への想いが真剣でありながらも子どもらしい不器用さで描かれているのが、物語に温かみを与えています。
また、藤井が恋愛について悩む姿は多くの人が共感できるポイントかと思います。恋愛の未経験に対する疎外感や不安、それをどう乗り越えていくかというテーマが、物語に深みを与えています。それを男子たちが「卒業までに誰かを好きになればいい」といった無邪気な提案で解消しようとする展開は、なんとも微笑ましくて読後感が良いです。
いいお話だった。読後感はそれに尽きる。
物語は、小学校で三バカと呼ばれる三人の男子が女子の藤井さんに「好きです」と告白をするところから始まる。
藤井さんは、思春期で恋バナが栄養の他の女子とは違ってあまり恋がぴんと来ていない女の子。
彼女はとりあえず友達として、三人と小学校生活を過ごすようになる。
僕がこの話で一番印象に残ったのは、三バカの個性が際立っていることだった。
三バカはそれぞれ、三方向にバカだ。それも、憎めない爽やかなバカである。
このバカさは、小学生男子の持つ、幼さだったり元気さだったりする。
作者はよくここまで練り上げて書いたと感嘆した。
そして一方で、物語が進むにつれて藤井さんが恋について悩み、知っていくことも、面白さの一つだと思う。
この話は徹底して、小学生の恋愛を書いている。しかし、小学生の恋愛描写がチープに映らないのは、作者がちゃんと大人の目線で俯瞰した恋を丁寧に紡ぎあげているからだろうと思う。
だから僕は、小学生特有の神聖視されがちだった恋の純粋さにきゅんとしてしまったし、同時に彼らの成長を楽しみながら追えた。
そして、どこまで行っても今を楽しむ小学生の時のキラキラを、思い出しながら物語に浸れたのだと思う。
昨今、ドロドロとしていたり深い恋愛を好みがちな皆様も、あの日の自分に戻って、あった恋を、あってほしかった恋を追体験してはいかがだろうか。
是非読んでいただきたい一作です。