第10話・ウンガ
襲いかかるプレイヤーをサンカが捌き倒している中。ソールは、俺の後ろにいつの間にか現れた。
「おや、戦闘中だったのですか。まあいいでしょう。……さっさと帰りたいし……」
小さな声で何かを言ったような気がしたが、気にしないでおこう。……お仕事お疲れ様です。
「では、結論から言いますと、今回のは仕様です。と言っても納得はしてくれませんよね」
「それはそうでしょ、魔法使いなのにMPが無いなんておかしいでしょ」
「おや、いつからこのゲームで魔法を撃つ際に魔力値を減少させないといけなくなったんですか?」
ソールは何か知っている顔でそう言った。
「それってまさか、MP以外の何かを減らしてでも魔法が撃てるってこと!?」
「つまりはそういうことです」
驚いているサンカをよそに、ソールはさも当たり前かのように言った。
「サンカ、そんなに驚くものなのか?」
「当たり前でしょ!そんなの見たことも聞いたこともないわよ!」
興奮気味にサンカはソールの方に向いた。
「で、なにを消費するの?HPとか?」
「いえ、魔法を使用した際にMPが消費量を下回る量だったらインベントリ内のアイテムのうちランダムで消え、魔法が使用できるスキルてす」
ランダムって、それじゃ……
「え、それって強いアイテムとか拾っても……」
「運がなければ消えます。しかも捨てられないアイテムや、ゲーム内で一つしかでないアイテムなども問答無用で消します」
「「えええええええええええ!」」
平然と、トンデモ発言が来た。
もう一度言うが、サンカはこの会話を襲い掛かってくるプレイヤーを捌きながら聞いている。すごいを超えて、ちょっと怖い。
……しかし。
「デメリットがでかすぎないか」
このゲームでは倉庫とかにものをしまったりできるが、いちいちそこに行き、道具を出し入れしないといけなかったり、盗まれたりなどして大事なものを入れるには適していない。
インベントリでは別プレイヤーに倒された際に、装備していたものを落とすようになっているので、インベントリ内のアイテムを失くすことはない。
「いえ、その代わりに、どんな魔法も撃てます」
ソールがそう言うと、サンカが目を輝かせた。
「え⁉それじゃあ、ジン試しに最強魔法のウンガ、撃ってみせてよ!」
こちらに顔を向けキラキラとした目を向けてきた。
「まあ、いいや」
俺は魔法一覧からウンガを探し選んだ。
頭の中に動きが浮かぶ。
あとは撃ちたい方向にその動きをまねるだけ。
……腕をくるくる~。
「ウンガ」
そうすると、ポンッっと音がしただけで何も変化がなかった。
「あれ?」
間違えたかな?
そう思い魔法の説明を見る。
なになに……。
【魔法名】ウンガ
必要MP1000000000000000
説明・何が起きるかは、お・た・の・し・み♡
「な……なんじゃこりゃ!」
「えぇ、プレイヤーが気になる魔法ランキング上位の魔法なのに、なにも起こらないなんてぇ……期待外れね」
「いえ、そうでもないですよ」
「「え?」」
ソールは意味ありげなことを言って、レヴィアタンのいる穴の方を指さした。
穴の方を見ると、なぜか周りが地響きしていた。
「面白いことになったけど、これは帰れなさそう。……はぁ。ではまた」
ソールがそそくさ消えていった。
「え?ちょっと⁉」
俺がそう言うと、穴の方から高い女性の悲鳴のような、甲高い声が響き渡った。
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