魔王人生 第2章 第17話 病魔
神代は冒険者組合の受付の人から、書類を受け取り、嘘ではあるがミネルヴァの指示で情報を書いていた
「・・・よし、これで終わりか」
「・・・はい、記入漏れはありませんね!お疲れ様でした」
受付の人は書類をまとめた後、ボードとペンを取り出した
「では簡単な質問に答えていただきますね・・・試験の方はどうされますか?」
「あ~・・・実技の方で」
〈筆記もやればいいのに~〉
〈頭良いように見えるか?〉
神代は質問を受ける中、ミネルヴァとも念話で話をしていた
「では次に―」
〈私は実技の方の部屋には入れないから、観戦部屋で観てるね〉
〈・・・バレるぞ?〉
〈姿を隠す魔法があるから、大丈夫よ〉
〈それ最初からやれよ〉
それから数分後、受付の人からの質問を終え、試験案内で呼ばれるまで待っていた
「・・・」
〈試験の方頑張ってね~・・・多分だけどランクに合わせた魔獣や魔物と戦うはずだから〉
〈ランクがあんのか〉
〈そうそう、S~F級のランクがあってね、魔獣や魔物のランクは冒険者のランクの強さ程度って扱い、でも賞金首は少し違うわ〉
〈分かりやすいランク制度だな・・・〉
「・・・――カガーマさん!試験の準備が出来ましたので受付までお越しください!」
「そろそろか」
〈あと一つだけ・・・試験の審査を行うのは高ランク、S~Bまでの冒険者が別室で観ているわ〉
〈・・・そうか〉
これは・・・だいぶ面倒くせぇな、加減しねぇと目を付けられそうだな
神代は受付の案内で、部屋を移動した
「・・・こんな建物で戦闘しても大丈夫なのか?」
神代は階段を降りながら、案内役の人に聞く
「はい!問題ありませんよ、結界と魔法障壁の二重で被害は出ません・・・なので全力で戦ってもらっても問題ありません」
「へぇ~・・・」
ここの魔法の技術がどこまでか知らねぇけど、丈夫であることを祈ろう・・・
しばらく階段を降りると――
少し大きな広間に出た、地面には薄く魔法陣が書かれており、壁には切り傷や引っかき傷が至るところにあった
「案内はここまでとなります、ご武運を!」
そう言い、案内役の人は颯爽と部屋を出て、ドアを締めた
「・・・」
・・・視線を感じるな
少し上の方の壁、マジックミラーみたいになってんのか?
神代の見る先の壁は少し形が他とは違い、魔力で出来ていた
「観客もいんのか・・・まぁいいか」
― それでは、実技の試験を行います、準備をしてください ―
広間のどこからか、アナウンスのようなものが流れ、神代は近くにあった武器を手に取り、構えた
― F級の魔獣 フェイウルフ ―
「ウォォォンッ!!!」
「・・・オオカミじゃん」
そう言っていると、フェイウルフは神代の方へ走り出し、飛びかかる―
「はっ!遅いな―」
神代はフェイウルフ前足を切り落とし、切り返す―――
フェイウルフは胴から真っ二つに斬られ、粒子となって姿を消した
― F級の魔獣 フェイウルフ討伐 ―
「Fでこれか・・・」
いろいろと技を見せずに済みそうだな・・・
― E級の魔獣 炎々鳥 ―
次に出てきたのは、身体が炎で覆われた鷹のような魔獣だった
「・・・焼き鳥?」
その後も、E、Dの魔獣や魔物を倒し、次の魔獣が召喚されそうになっていた
「・・・まぁ程よく負けるか」
一方別室では、冒険者が次の魔物を呼び出そうとしている所に誰かが割り込んできた
「いや~・・・なかなか良い、順番を飛ばそうか」
冒険者たちは後ろを振り返ると、一人の青年が立っていた
「ギっ、ギルドマスターっ!?」
冒険者たちは立ち上がり、お辞儀をした
「まぁまぁ、今は試験に集中してくれ、だけど・・・彼の次に戦う相手は僕が決めよう――」
広間の方で神代は準備運動をしていた
「・・・ふぅ~、まだなのか?」
突然、目の前の魔法陣に尋常じゃないほどの魔力を感じた
― A級の魔物 指定悪魔 ベリアル ―
「・・・A級?」
召喚されたのは、神代の二倍近くある身長に大きな羽を広げた悪魔があらわれた
「グオォ・・・またここか・・・」
「てめぇ喋れんのか、次の相手は――・・・」
次の瞬間、どこからか出した大剣を神代に振り落とす――
ドォォオオオンッ!!!!
広間で煙が上がり、冒険者たちは神代の様子を確認できなかった
「あ、あれはベリアル!・・・昔、A級の試験で突如現れて、冒険者たちを虐殺した・・・」
「ギルドマスター、あれは勝てる相手じゃないですよ!」
冒険者たちは召喚した悪魔が危険だと、ギルドマスターに進言するも
「あはは、君たちはちゃんと彼を観ていたのかい?・・・先程の戦いを途中から観ていたけど、F級の魔獣はともかく、E級やD級の魔獣をいとも簡単に倒している・・・それに報告では、B級賞金首「
砂煙が晴れると、神代は無傷で立っていた
「なっ・・・!?」
冒険者たちはベリアルの攻撃を受け無傷で立っている神代を見て驚く
「――悪魔でも問題は無いはずだよ」
一方広間で戦っている神代とベリアルはお互いの出だしを伺っていた
「・・・我の攻撃を受け、無傷か・・・魔法・・・いや魔術や魔導具によるものでは無いか」
「単純な話、お前の攻撃が遅いだけ――・・・」
次の瞬間、ベリアルは横薙ぎで神代を攻撃するが躱される
「っ・・・!」
「――っぶねぇ!」
神代は、ベリアルから距離を離し、様子を伺う
「流石に今のは危なかったな・・・」
普通に避けるとこだった・・・目立つのがダメなら、せめてギリギリで避けねぇと
―
神代が「
「・・・魔人よ、その『魔力』は何だ?」
「・・・へぇ~お前、分かるのか・・・「
ベリアルは大剣を構え、神代に勢いよく向かう――
「グァアアアッ!!!」
―
ベリアルの放った技を神代は避けるも、地面から黒い槍の様なものが飛び出してくる
「フンっ!!」
身体を大きく仰け反り、黒い槍も避ける
「――っと・・・流石に一撃でも食らったらヤバそうなやつだなっ・・・!」
「・・・ハハ、感が鋭いな・・・我の「獄拷斬」はキサマの魔力を削る・・・痛みは無いがな」
するとベリアルは、空を飛び、口から黒い炎を吐く――
―
「ぐっ―――」
試験の間一帯が黒い炎に包まれる
「我が「
ベリアルはそう言い、燃え広がる広間の中心目掛けて技を放つ――
―
ドガァアアンッ!!!!
大きな音と衝撃は、結界と魔力障壁を越えて、冒険者たちとギルドマスター、ミネルヴァにまで伝わった
「す、凄まじい衝撃だ・・・結界にヒビが入っているぞ!」
「・・・フッ」
ギルドマスターだけは笑みを浮かべて、その様子を見ていた
ベリアルの放った技で、黒い炎は消え、地面の魔法陣とレンガは消し飛んでいた
「・・・やはりこんなものか・・・所詮、魔人は悪魔を超えることは出来ぬ・・・」
ミネルヴァは広間の様子を見て、急いで念話を神代に飛ばした
〈君っ!・・・生きてるよねっ!?〉
〈・・・〉
〈そんな・・・!〉
「さて、ここは退屈だ・・・外に――」
ベリアルは頭上から強力な一撃を喰らい、顔から地面に叩きつけられる
「――ぐぅっ?!」
何だ・・・何が起きた・・・?
数刻前
ベリアルが「
「・・・」
このまま、凌ぐか・・・
ミエルから学んだ、「分身」・・・魔力で無理やり形だけを作ったが、不格好もいい所だな
だけど、あの黒い炎の中だとわかんねぇだろ
―
ドガァアアンッ!!!!
「っ・・・!」
おぉおおいっ!!めちゃくちゃかよ!
衝撃が天井まで・・・結界にヒビ入ってるじゃねぇか・・・!
〈君っ!・・・生きてるよねっ!?〉
ミネルヴァから念話が飛んできた
「・・・」
ミネルヴァか・・・魔力の察知能力が鋭いあの悪魔に今バレるのはまずいな・・・
無視でいいか
〈・・・〉
〈そんな・・・!〉
いい反応ありがとう・・・んじゃ早速――
神代はベリアルが落下地点に来たため、天井から腕を抜く
―
神代の放った「
「―――ぐぅっ?!」
「フゥ・・・気を抜くとか、悪魔ってよりかマヌケに変えたほうがいいんじゃね?」
ベリアルは大剣を振り回し、神代を払いのける
「キサマぁあっ!!我を誰だと思っているッ!!
「悪魔将軍?・・・だとしても弱ぇな・・・人のほうがまだマシだぞ?」
神代はベリアルの様子を見ながら笑い、武器を手に取った
「まぁ話はここまでにして・・・後がまだあるからな、終わりだ――」
―
「ぁァあァぁアあぁッ・・・・!!」
ベリアルに「
― A級の魔物 指定悪魔 ベリアル討伐 ―
アナウンスが流れた後に拍手をしながら誰かが歩いてきた
「いや~・・・お見事です!ギリギリの戦い、どっちが勝つか分からない状況での最後の一撃!・・・良い剣筋です」
歩いてきたのは二十歳ぐらいの青年で白いスーツをした魔人というよりも人間だった
「あっこれは失礼・・・僕は、この「ベルゼ」の冒険者組合統括大臣、よく言われるのはギルドマスター・・・
「お、おう・・・」
名前からして、日本人だよな・・・?
漫画とかで見る転生・・・いや見た目は完全に人だ、異世界人か
「・・・カガーマだ」
「カガーマさん・・・少しお話よろしいでしょうか?」
すると、樹の後ろにいつの間にか秘書みたいな魔人が待機していた
神代はギルドマスターの樹の後について行った
「・・・」
いや~事前に魔術「
上手いこと、このギルドマスターの目を欺けた
神代は階段を登りながら、豪華な扉の前にたどり着いた
「こちらにどうぞ、僕の部屋だったら色々安全だから」
「・・・どーも」
神代はふかふかのソファに座り、秘書から茶菓子をもらう
「僕なりに、故郷の味を再現したんだ、口に合うかは分からないけどね」
「・・・」
ん~・・・これせんべいだよな、どこぞの「お〇ぎりせんべい」みたいだな
神代はお面を外さず、ギルドマスターの樹の様子を見ていた
「まぁ食べるかどうかはさておき・・・試験合格おめでとう!」
「・・・どーも」
「試験合格でいきなりA級・・・これは僕としても、冒険者組合としてもありがたいことだよ・・・何年振りかな?」
すると後ろから秘書の魔人が答えた
「おおよそ30年振りかと・・・」
「おぉ!それは良いことだね、冒険者たちも活気づくよ・・・ここからは僕個人の意見だが・・・・君の実力はすでにA級を超えていると思っている」
「・・・!」
まぁ魔術で誤魔化したとはいえ、A級って言われた悪魔倒したわけだからな・・・
樹は、立ち上がり、窓の外を眺めた
「ギルドマスターの権限で、カガーマさんをS級冒険者にすることも出来ます・・・もちろん無理強いはしませんよ」
樹の言動は、少し脅しのようにも聞こえた
「・・・何が言いたいんだ?」
「そんな怖い顔、まぁ仮面をしているので分かりませんけど、そう気を立てないでください・・・僕が望むのは、冒険者への新しい風です・・・魔界は年々魔人が増えていますが冒険者になって、亡くなる方も数多くいます、ここ数年は依頼を受けて、失敗すること事案が多くなりました・・・まぁ簡単に言えば、冒険者を舐めている魔人が多いからです」
樹は椅子に座り、話を続けた
「危険を伴う仕事ですからね、魔界では強者であればあるほど豊かな暮らしが出来ます・・・一発を狙い、身に合わない依頼を受け、失敗する・・・他にも日常に溶け込んだからこその魔人たちの怠慢・・・まぁマンネリ化という感じです、そのために新鮮な話題、情報がいるんです」
樹は神代のそばまで寄り、肩に手を置いた
「新人でいきなりS級冒険者!みたいなね・・・良い話かと思いますが・・・?」
「・・・断る」
神代は樹の話を断り、驚いた秘書は後ろで物を落とした
「なっ・・・!?」
「それは困りましたね~・・・あなたにしか頼めない話もあったのですが・・・」
「・・・だが、こっちが提案する条件で良いのなら呑んでやる」
樹は大人しく椅子に座り、神代の話を聞く
「条件として、E級からのスタートと宿の提供と依頼で稼ぎが良いものが合ったら優先で俺に渡せ・・・それが条件だ」
多分、こいつにとって俺は絶好の相手・・・
話にそのまま乗っていれば都合のいいコマとして扱われる
お前を最上位の階級に上げてやるかわりに俺の指示を聞け的な感じでな
神代が出した条件を聞き、樹は考えていた
「う~ん・・・」
僕の話に一部乗るという感じかな、彼の条件に僕が頭を縦に振らなければ、彼は乗らないだろうね
「・・・良いでしょう、そちらの条件で構いませんよ」
樹は机から書類を出し、神代に書かせた
「この書類は、契約に近いです・・・どちらかが破れば破った側に罰が下されます」
「破る気ねぇから安心しろ」
神代は適当に書類を書き込み、颯爽とギルドマスターの部屋を出た
秘書の魔人が、樹にお茶を出し心配していた
「本当にあれで良かったのでしょうか・・・?」
「・・・僕は契約よりも、彼の正体の方が気になりますからね・・・『カガーマ』・・・魔界でも最上位の者しか知らない名前を・・・『
すると音もなく、部屋に数人黒ずくめの魔人が出てきた
「この人物の後を着けて下さい、何か分かった事があれば随時報告を・・・あとくれぐれもバレないように」
「・・・御意」
黒ずくめの魔人たちは音もなく姿を消し、部屋は静けさに満ちた
「・・・【
「承知いたしました」
神代は階段を降り、受付の広場まで戻ってきた
いや~・・・圧迫面接かよって言いたいぐらいの緊張感だったな・・・
あのギルマス、明らかに黒、何かと探りを入れてきやがって
「この先関わることが無いように願っとくか・・・願う神なんて居ねぇけど」
〈それなら、ユグドラシル様を崇めなさいっ!〉
〈うわっ・・・めんどくせぇ〉
〈めんどくさいとは何よ・・・それよりも、あなた魔術使って、私とか他の魔人たちを騙していたでしょ!・・・私の目は誤魔化せないからねっ!〉
神代は近くにあった席に着き、物を漁るふりをしてミネルヴァと話した
〈お前・・・意外とやるな〉
〈それはこっちのセリフ・・・今までの動きを見た感じ、あなた人間じゃないの?〉
〈少し前までは人間だった・・・とだけ〉
〈そう・・・まぁ良いわ、人には言えない秘密は誰しもが持っているから、突っ込まないけど、この後はどうするの?〉
神代は席を立ち、依頼が貼られている掲示板を見に行った
〈そりゃあもちろん・・・今後、魔界で生きるための金稼ぎ〉
〈そ、それはそうね・・・もうちょっと、「冒険ができる!」とか「遊んでやる!」とか言うのかと・・・〉
〈お前の中での俺のイメージはどうなってんだよ・・・まぁ冒険というか、俺の知らない未知の世界に来たから楽しみではあるが、金が無いと明日は飯抜きになるからな〉
神代は掲示板に貼られていた一枚の紙を取る
〈・・・これはどうだ?〉
〈なになに~・・・「ニゴサンソウ、ポトクス、ケスチオンの一定量の採取!この絵の通りの見た目です」・・・ってこれ全部毒を持つ植物じゃない、ポーションとかでたまに使われるものだけど・・・〉
〈確か【
〈あなたさっきの言葉、自分に帰ってるわよ・・・でも歴史に残る情報の通り、劇物を作ったり、いろんな実験もやってたそうだから、あながち間違ってないわ〉
〈なら――〉
神代はその紙を受付まで持っていた
「さーせん、これ」
「はい、薬草採取の依頼書ですね・・・指定しているE級のランク・・・問題ありませんね!」
その後、色々と話を聞き、数分後――
「――という形になります、一応有毒の植物ですのでお気をつけ下さい」
「あざしたー」
神代は依頼書を受け取り、紙に書いている指定場所まで歩いていった
神代はギルドを出て、街の中を観ながら目的地まで話をしていた
「結構、報酬が多いな、金貨2枚、銀貨40枚、銅貨130枚・・・日本だと何円ぐらいだ?」
ミネルヴァの魔力がかなり減ったため、念話をするのはやめて小声で話していた
「そうね・・・ざっと2万円といえばいいかしら?」
「・・・・マジか」
普通にバイトするより・・・
まぁでも危険も含めての値段か、そして日雇いだから、関わりを持ち続けるも、依頼主次第・・・
基本的に、冒険者組合が間に立つから、依頼主的には依頼を出せば、勝手にやってくれる上、良い人材?良い魔人材がいれば個人で交渉することもできる・・・
神代は依頼書を見ながら考えていた
「メリットでしかないな・・・デメリットは必ずしも依頼が達成される訳じゃないってところか・・・」
「あなたそんな気難しいこと考えていないで、もっと街の景色でも観なさいよ・・・」
周りは店や屋台などに群がる人たちで賑わっていた
「ん?・・・あぁ、あそこの串屋うまそうだな~今度寄るかー(棒読み)」
「適当ね・・・」
ミネルヴァは神代の返答に呆れながらも目的地まで話をしていた
神代が向かう目的地にフードを被った者が2人、何かを話していた
「お師匠さま、何か他にはありますか?」
一人、かごを持った魔人がもう一人の魔人と思しき者と話していた
「いや、特に・・・やっぱりもう一つだけ・・・もし、仮面に魔族の紋章が書いている人物がいた場合、私に伝えてもらえるかい?」
「・・・?はい、わかりました」
そう言い魔人と思しき者はその場を離れ、かごを持った魔人は神代を待っていた
・・・・・
・・・
一方その頃、神代たちは目的地の近くまで来ていた
「えぇ~っと、この先の道を右に曲がったところか・・・」
「たしかこの先に、噴水広場みたいな所があったわ!」
道を右に曲がると、ミネルヴァの言う通り噴水広場があった
神代はフードを被った魔人と思しき者とすれ違う
「っ・・・!?」
・・・何だ?
一瞬だけど鼻につく様な臭いが・・・
神代は振り返るもそこには誰も居なく、魔人たちで賑わっていた
「・・・まぁ魔界ならそういうこともあるか」
目的地の近くにフードを被り、かごを持った魔人が立っていた
「多分あれが依頼人よ・・・」
ミネルヴァは小声で神代に伝える
「あんたが依頼者か?」
「・・・っ!あっどうも、今回の依頼を受けてくださる冒険者ですね!」
ツンツン頭に仮面を被った魔人・・・仮面・・・?
絵柄が書いてある・・・魔族の紋章・・・!
依頼者の魔人は神代の顔を凝視し、何かを考えていた
「・・・おい、近い」
「あぁ!すみません・・・すごく良い仮面ですね、魔力がかなり宿った物で~」
「まぁな・・・それで、どうすれば良い?」
依頼者の魔人はかごから紙を取り出し、神代に渡した
「まず、これが採取するモノを書いたメモと、その後に受け取る場所ですね!」
「・・・了解、またあとで届ける」
神代は紙を見ながら、外と繋がっている門がある所まで歩いて行った
依頼者の魔人は神代を見送った後、先程の魔人と思しき者に連絡を取っていた
「・・・お師匠さま、言われた通り仮面の魔人だった場合のメモを渡しました!」
薬やポーション、分厚い本やガラスが散らばった部屋で先程の魔人と思しき者が連絡を受け取っていた
「そう・・・どうやらあの時の話と魔力は勘違いじゃなかったわけか・・・わかったわ、早く戻ってらっしゃい、まだ依頼された物が出来てないからね」
魔人と思しき者は通信魔法を切り、本棚から一冊の本を取り出し、笑みを浮かべていた
「あぁ・・・退屈な数百年がようやく終わるのね・・・ふふっ・・・!!」
神代は半日ぐらい、ミネルヴァとの協力でメモに書いていた植物を採取し、都市「ベルゼ」に戻っていた
「まったく・・・なんて所にあんだよ・・・冒険者のランクに合ってねぇ」
「そりゃあそうよ、崖や渓谷、洞窟の中とか色々危険な所にあるから依頼するのよ、依頼者の体格見たでしょ?多分魔術使いだと思うけど、魔力量とか身体的に足りなかったから依頼したんでしょ」
神代はかごに依頼の植物を入れ、ミネルヴァに愚痴をこぼしながら、指定された店に向かう
・・・・・
・・・・
指定された店は少し気味の悪い外観で、観葉植物と思うが明らかに禍々しい見た目をしていた
「本当にここ・・・か?」
「メモに書いている場所は・・・ここね」
神代は恐る恐る店のドアを開け、中に入ると――
「―――ぐっ・・・!?」
神代はすぐに店出て、深呼吸をしていた
「すぅ~・・・はぁ~・・・臭いが・・・キツ過ぎる」
「わ、私も・・・あれは無理・・・今まで嗅いだことない臭いだわ・・・」
神代は覚悟を決めて、店の中に入る
「ぐぅっ・・・!?」
牛乳をこぼして雑巾で拭いて、洗わずに置いていたときのあの臭いよりもヤバい
ていうか、そんなレベルの臭いじゃねぇ!
色んな物が混ざってる・・・!
神代はゆっくり、店内の奥に歩いていく
辺りにはポーションみたいなものや、袋の中で何か動いていたり、いかにも研究しているような試験管やフラスコが置いていた
「・・・」
やっぱ、実験とかいろんなことしてるから、こんなくそ・・・
やべぇ臭いが充満してんのか
「ほれて?ほれはとうすれはいい?(それで?これはどうすればいい?)」
神代は机に物を広げて作業していた魔人と思う者に話した
「・・・あぁ、そこの机に置いておいてくれ」
魔人と思しき者は隣の机を指差し、作業に没頭していた
「・・・とりあえふ、ここにおいほくぞ(とりあえず、ここに置いとくぞ)」
神代は机に依頼された物を置き、そそくさと店を出ようとすると――
「――待って、私こう見えても眼は良くてね・・・君、魔人じゃないだろう?」
「「!?」」
神代とミネルヴァは言われたことに静かに驚き、立ち止まった
「・・・やっぱり、あなたの魔力は少し不自然なのよね・・・この魔界では力を隠す者なんて余程やましいことがあるか、暗殺者か、スパイか・・・もしくは知られたらまずい――」
次の瞬間、神代は抜刀し、魔人と思う者の首に刃先を向けていた
「――何が言いたい?」
「・・・この武器・・・?」
魔人と思しき者は神代の武器見ていた
「ふふっ・・・懐かしいわ~・・・昔、共に仲間として戦った彼の武器みたい・・・というよりその武器ね」
「お前・・・名前は?」
すると魔人と思しき者はフードを取り、何かを唱えると姿が変わり、身体や顔には歪な文様と変わった色をした肌を持つ魔人だった
「私の名前はアルニアス、今は薬師としてここにいるけど・・・昔は『病魔』なんて言われてたわね」
第18話に続く――――
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