ブレイブ&ストライカー
バールのようなもの
騎士団起動編
第2話 妄想、空想、夢想の変身
「ここが戦場か…..」
遠くに敵が見える
数は1。たった一機だが、民間人にとってそれは一機でも十分な脅威となる。だからこそ、この森林で食い止めなければならない。
無論、相手の機体は武器を装備している
しかし、彼の機体の武装は、無し
ご都合展開なんてない
厳しい世界だ
ビュン
晴人の横をビームが通り過ぎる
(得物がなくとも、戦わないとな)
そう思い、晴人は加速し、敵に急接近しようとする。
「ぐっ…!」
だが、敵は見事なまでの蹴りを入れてくる。
そしてそれに連なるに、腕の形を変えての斬撃。
(一体どうなってるんだ?)
敵の前情報はただの機械。形状そのものが原型も無く変わるような、物理法則を無視した動きなどできるはずがない。
拳と刃物が交錯し、晴人は身動きも取れない。操縦経験無しの初心者に、このような連続攻撃に対応するなど無理に等しい。
コクピット内に警報音が鳴り響く
敵が煌めき、晴人を殴り飛ばす。
「ぐぅっ!」
軽やかに、尚且つ重く、一方的な蹂躙が続く。
殴られた衝撃はコクピット内に濃く伝わり、晴人の身にも影響する
(どうにか…!)
一撃。
敵を弾き飛ばす。
攻撃が途切れる繋ぎ目。ただ一瞬の攻撃をしない空き。
その刹那とも言える空間をついた拳は見事に敵を捕え、ふっ飛ばす。
油断はしない。
さらなる追撃をしようと、彼が足を踏み出したその瞬間。
腕が増える。2本だった白銀の腕は、背中からもう2本。機体を異形に変えるという代償を払い、顕現する。
「嘘だろ……」
衝撃度最大の敵の変化。
それと同時に、敵がただの機械ではないことも確定した。
新たに生えた2本の腕が晴人へ伸びる。白銀の腕は一直に彼を捕え、掴む。
敵の方へ引き摺り込まれ、刃の鋒を向けられる。
そして訪れる刺突。
機体の装甲が貫かれ、モニターには『warning』という文字が表示される。
「ならばっ」
生えた腕を引きちぎる。
「くそっ。腕が!」
だが、その代償として機体の腕のどこかが折れる。
引きちぎった腕はすでに再生し、追加でもう2本腕が増えている。
敵の腕を投げ捨て、もう一度向かい合う。
だが
「どこの駆動系がイカれた!?」
機体は動かない。
敵機が機体を襲う。
(くそっ!)
警報音はこれまで以上の大きさとなる
(このままじゃ…!)
起死回生の一手は、ない
どうしようもない状況だ。
『射出用意』
モニターにそんな文字が浮かぶ。
パイロットだけでも助けるという、人道的なシステムだ。
そんな急脱出装置が作動しようとしていた
普段であれば、素直に脱出に従うべきである。素人なら尚更だ。
だが、今は違う。彼以外の機体数は0。そして敵の脅威度を考えるならば、少なくともここは滅ぶだろう。
「……」
晴人も焦る。ほぼ全ての機能が一時停止を始め、期待をかなぐり捨てた上でのパイロット救出が行われようとしている。
白日に照らされる敵の白銀は、いっそう輝き、機体を追い詰める。
(昔…。)
鳴り響くアラートの中。あまり働かない脳が、微かな記憶を再生し始める。
(昔…。昔誰かが言った。)
(ヒーローとは手を届くものを守るんだと)
その記憶は、鮮明に言葉だけを。
(自らの手に届くなら、それを精一杯に)
遡る記憶は、昔の想いを。
(手に届くものを、守る。)
深層に眠っていた希望を。
射出のカウントダウンが進む。
時計のように、寸分の狂いなく、無情に進むそれは、パイロットを救わんと作動していた。
だが、それも破られる。何者でもない、救うはずのパイロットの手によって。
「させるかよ」
モニターを思い切りぶん殴り、無理やり停止させた、血の滴る拳で、操縦桿を握りながら、前方を見据える。視線も精神もどちらも前へ。
「俺はヒーローになりたかった。だから」
独り言が紡がれる。それに呼応するように、中央のモニターだけが起動する。
「だから!全部救ってヒーローになってやる!」
それは守るとはまったくといってもいほどの違いを持つ宣言。そして、彼にとっての覚悟の宣言。
モニターは呼応し、[NEED WORD]という言葉を紡ぎ出す。
「さあ、行こう」
感情昂ぶる一人の男は、脳裏に浮かぶ幼少期の妄想、空想、夢想の言葉を叫ぶ
「ブレイブチェンジ!」
[CONVEYD!!!!!!!]
コクピットは光りに包まれ、モニターが起動する。視界を完全に得た。
機体は、真紅の炎に包まれ、破壊された腕を型取り作り上げる。肩の装甲に火が灯り、覆いかぶさるように外装を創造する。
脚に着火し、新たな装甲を顕現させる。
頭に点火し、四本の角が作られる。
そして、胸が発火し、覆うように胴体を包み、装甲を発現させ、胸にエンブレムを描きあげる。
そのエンブレムはエネルギーとして実体化し、機体に輝きを与える。
機体そのものが新たな機体に変わったかのような現象。
まさに変身だった。
「一気に行くぜ!!!」
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