芽生えた殺意の行方への応援コメント
ひぃいいいいいいいいいい、怖い、でも、わかる! すばらしい(?)傑作でございました( ;∀;)
アンサーSS「殺意を消す針治療(サイド:夫)」
「ぶげぇえええええええええええええええええっ!」
僕は凄まじい痛みを感じて夜中に目を覚ました。
最近、こういう事が増えている。初めてのたうち回った時は、おでこに刺す様な激烈な痛みが起こり、もはや死んだかと思った。
「大丈夫?」
隣で寝ていた妻がねぼけまなこで僕を眺める。
「いや、大丈夫だから」
「そう、おやすみ」
そう呟くと、妻は満足そうに幸せな顔ですぐに寝息を立て始めた。
僕はベッドを出てキッチンに行き、冷蔵庫からミネラルウォターを出してごくごく飲んだ。
頻繁に続く異常事態に僕は脳に何かの疾患が起こったのかと多くの精密検査と診察を受けたが、まるで問題なかった。だが、この刺す様な痛み、地獄だ。鏡で見る自分の顔がげっそりとし、寝不足とは違う意味で、まるで死相が現れているみたいだ。もうずっと全身を、終わる事のない鈍い痛みが襲い続けていた。
翌日、僕はわらをもすがる思いで知人の鍼灸師を訪ねた。
「なる程な。大体把握した。さぁ、そこで横になってくれ。いいかい、私は君の友人だ。決して悪い様にしないから、驚かない様に」
「どういう事?」
「まぁ、いいからいいから」
そう言われ僕は治療用のベッドに横たわった。すると彼が僕の四肢に針を刺した。途端、全身の神経が途切れ僕は身動きが取れなくなり、言葉すら発する事が出来ず、急激な恐怖に襲われた。
「さぁ、今から君は少し旅をするんだ」
そう彼が言った瞬間、僕のおでこにすごく長い針をずぶずぶとめり込ませた。
(ぶげぇええええええええええええええええええええっ!)
僕は心の中で絶叫した。そして、次に心臓。その次は目に刺した。口にも刺した。ぶす。ぶす。ぶすぶすぶす。
(ひぎゃああああああああああああああああああああああっ!)
僕はかつて感じた事のない激痛で、最早意識さえ飛び、泡を吹き気が遠くなった。
だが、次の瞬間だった。
「今日のごはん、おいしくないよ。君、もっと料理をきちんとしたら?」
「ちょっと! 勇樹がうんちしたみたいだよ。おむつ替えて。そもそも、いつになったらおむつ外れるんだよ。トイレトレーニングしているの?」
「君、幸せだよね? みんなに羨ましがられるでしょ?」
僕が妻に普段何気なく言っている言葉と場面が、次々に頭の中に浮かんで来た。
「どうして起こしてくれなかったんだ!」
「お弁当っていう気分じゃなくてさ。いつも似たような中身だし」
「君、家事苦手だよね。どうしてもっとてきぱき出来ないの?」
「ねえ、君さ。ほんとうに出来ない人間だね。自分でそうは思わない?」
「僕と結婚してよかっただろ? 働かなくて済むし。子どもの世話と家のことやっていればいいんだから」
「勇樹はいい子だから、君も楽だろう?」
曖昧に微笑む妻の顔が、何故か酷く寂し気で痛ましく感じられた。すぐに理由がわかった。この尋常ではない苦しみの中だからこそ、僕は隠された妻の痛みを感じ取る事が出来た。そして普段の僕が、いかに嫌味で傲慢で、そして自己中で思慮が浅く、相手の心を救い取れない小さく惨めな人間なのかと思い知らされた。
(僕は、僕は、そんなつもりじゃないんだ!)
悔恨を言い訳にすり替えて、まだ自己正当化しようとする情けない言葉が浮かんだ瞬間、さらに激痛は増す。僕は耐えがたい痛みの中でさらに映像を見せられた。
それは勇樹の世話を一人で懸命に健気に行う彼女の姿、僕の脱ぎ散らかした服を黙って畳む彼女、朝から忙しくお弁当を作る彼女の側でだらしなくソファで寝る僕。
そうか、僕は何年も、何年も、彼女を虐げ、彼女に甘え、彼女を苦しめていたんだ。
僕の顔面には次々と針が打ち込まれて行く。凄まじい激痛が続く中、ぶすぶすという音だけが聞えた。
「ただいま」
「おかえりなさい、って、え?」
僕は彼女の大好きなケーキを買って来た。
「どうしたの?」
「なんとなくね」
驚く妻の顔を見ながら、僕は「コーヒーを淹れるよ」と着替えもせずにキッチンに向かった。
もしかして、もう遅いのかもしれない。でも、それがどうした。僕はえらそうな事を言うけど、やる時はやる。悪いと思ったら、全力で償いをする。ただの自己満足かもしれないけど、それでも出来る事はなんだってやるんだ。
「へんなの、ふふふ」
彼女が少しだけ穏やかな笑顔を僕に向けた瞬間、ぬぷって音がして、おでこから針が1本だけ抜けた様な気がした。まだまだ全身を刺す様な痛みが襲い続けているけど、少しだけ気分が軽くなった気がした。僕は急いでコーヒーカップを二人分用意した。
おしまい
なんか、すいません( ;∀;)
作者からの返信
福山典雅さん
素晴らしい、ショートショート、ほんとうにありがとうございます!
そして、お題もありがとうございます!!
福山さんのおかげでショートショート書けました。
福山さんはすごいなあって改めて思うのですよ!!!
編集済
芽生えた殺意の行方への応援コメント
男性側ですが。
いや、これは殺意湧くわ……。
こういうことにならないようにしないとと思います……こんなことはいくら何でも言ってないと思いますが。
最初の子の時は二カ月休みとって交代制でフォローしたけど、その時で大変さは分かったしその後どんどん大変になるのも分かったから、感謝しきりです。
でも最近子供が大きくなったから少しフォロー足りないかもな……気をつけよう、うん。
作者からの返信
和泉将樹@猫部さん
この実例はわたしの体験は一つもなく妄想ですが(笑)、
これやられたら殺意湧くなあって思います。
わたしは赤ちゃんのころよりも、小学校が結構大変だったので
そこでワンオペになってしまった恨みみたなものはありますね。
頼んで学校に行ってもらうとしても
「スリッパはどこ? 名札は? 筆記用具は?」と聞かれ、
結局わたしが用意しなくてはいけなくて、微妙な気持ちになります。
で、そこで手を抜いているから、思春期に息子たちが夫の言うこと聞かないのですよ。
いやいや、参りますよ~
芽生えた殺意の行方への応援コメント
こんにちは。
ぶすぶすと針が刺されるたびに、自分に刺されているような、痛みと恐怖を感じました😱
この作品は、主婦の心を代弁して下さっているように感じます。そのままでは無くても、似たような経験は誰しもありますよね😭
男性陣にもぜひ、読んで頂きたいですね‼️
気が付いてーーッ(笑)
作者からの返信
ヒニヨルさん
想像で用例書いたけど、こういうのあるかなあっていうのを入れました。
こんなことされたら、ぷすぷす刺したくなりますよね。
本人に刺さないだけ、いいですよね。くす。
ほんと、気づいて欲しいなあ。