第39話
どうにかしなければとは思うものの、
どうすればいいのかわからないまま、時間だけが過ぎていきました。
そんなある日、久しぶりに彼から誘いを受けました。
久しぶりだったので、喜んでOKしました。
当日、待ち合わせ場所に行くと、すでに彼が待っていました。
挨拶をすると、笑顔で返してくれます。
それだけで幸せな気分になります。
その後、予約してあるレストランに向かい、食事を楽しみました。
コース料理を堪能した後、デザートが出てくるのを待っている間に、会話が弾みます。
最近の近況報告をしたり、お互いの趣味について話したりしました。
楽しい時間はあっという間で、気付けば、そろそろ帰る時間になっていました。
名残惜しい気持ちを抑えつつ、支払いを済ませ、店を出ます。
駅までの道程を歩いている途中、不意に手を握られました。
驚いて彼の方を見ると、真剣な眼差しで見つめられます。
その瞳からは、何かを訴えかけているような印象を受けました。
その視線から逃れることができず、しばらく見つめ合っているうちに、
不意に顔を背けられてしまいました。
一体どうしたのかと不思議に思って尋ねようとしたところ、
逆に質問を投げかけられました。
その内容は、予想していなかったものでした。
何と、先日、職場の女性と親しくしていた理由を聞きたいと言うのです。
それについて説明するためには、まず、彼女との関係を説明する必要があるため、
順番に話していくことにしました。
まずは、彼女が同僚の神崎沙織であることから始まり、
彼女との出会いや経緯などを詳しく説明しました。
一通り聞き終わった後、彼は納得した様子で頷いていました。
どうやら、納得してくれたようです。
安堵しつつ、話を続けることにしました。
それから、しばらくの間、雑談を続けた後、解散することにしました。
別れ際に、また連絡すると約束を交わし、それぞれの帰路につきました。
自宅に帰った後は、疲れ切っていたこともあり、すぐに眠りに就きました。
翌朝、目を覚まし、身支度を整えた後、朝食をとるためにリビングへ向かうと、
テーブルの上に置き手紙があることに気付きました。
手に取って読んでみると、そこには、丁寧な文字で綴られたメッセージが記されていました。
その内容を確認すると、思わず笑みが溢れてしまいます。
そこには、私に対する想いがたくさん書かれていました。
こんなにも想ってくれていたことを知り、とても嬉しく思いました。
それと同時に、罪悪感に苛まれます。
私は、最低なことをしてしまったのだと自覚させられます。
だからこそ、ここでケジメをつけるべきだと考えました。
私は、彼女への想いを断ち切るため、別れを告げることを決断しました。
彼女にメールを送り、会う約束を取り付けます。
そして、指定された場所へと向かうため、家を出ました。
待ち合わせ場所に着くと、すでに彼女が待っていました。
声をかけると、嬉しそうな笑顔を見せてくれます。
その姿を見るだけで、幸せな気分になれます。
しばらく談笑した後、予約していたレストランに
移動するために、手を繋いで歩き出します。
道中、何気ない会話をしながら楽しんでいると、あっという間に到着しました。
個室に案内され、向かい合って座ると、早速、食事を始めることにしました。
食事中、お酒が入ったせいか、いつもより饒舌になっていたようで、色々なことを話しました。
その中で、ふと思い出したことがあり、尋ねてみることにしました。
それは、先日、彼女と一緒に買い物に行った時のことなのですが、
たまたま立ち寄ったアクセサリーショップで、彼女が熱心に商品を見ていたので、
気になって聞いてみたところ、 指輪が欲しいけど、自分で買うお金がないと言っていたのです。
それを聞いて、プレゼントしてあげようと思ったのですが、
生憎、持ち合わせがなく、後日、給料が入った時に買おうと考えていたことを打ち明けました。
すると、彼女は目を輝かせながら、本当ですか!? と身を乗り出してきました。
私は、本当だと答えると、満面の笑みで喜んでくれました。
そんな彼女の様子を見ていると、こちらまで幸せな気持ちになってきます。
それから、しばらく雑談を続けていたのですが、
ふと、会話が途切れたタイミングで、彼女が私の方を見つめてきました。
その目は、何かを期待しているかのように潤んでおり、頬もほんのり赤く染まっていました。
その表情を見た瞬間、ドキッとしてしまいました。
私は、ゴクッと唾を飲み込みながら、ゆっくりと手を伸ばしていきます。
そして、彼女の頬に触れた瞬間、ビクッと体を震わせましたが、
嫌がる素振りはなく、むしろ、私の手に自分の手を重ねてきました。
その手はとても温かく、柔らかく、心地よい感触でした。
しばらく、そのままの状態が続いた後、
どちらからともなく顔を近づけ合い、唇を重ね合わせました。
最初は軽く触れるだけのキスでしたが、次第に激しさを増していき、
最終的には舌を入れる大人のキスへと発展していきました。
お互いの唾液を交換し合い、飲み込む度に、興奮度が増していきます。
やがて、息が続かなくなったのか、一旦離れて一息つきました。
それから、再び顔を近づけると、今度は先程よりも深く、長いキスを交わしました。
お互いの口腔内を隅々まで味わい尽くすように、何度も角度を変えながら、
貪るように求め合いました。
やがて、満足したところで、唇を離すと、銀色の橋が架かりました。
それを名残惜しそうに見つめる彼女の表情は、とても色っぽく、
妖艶な雰囲気を漂わせていました。
それを見て、思わずドキッとしてしまいます。
その後、しばらく見つめ合っていたのですが、不意に視線を逸らしてしまいました。
恥ずかしすぎて、目を合わせられないのです。
その様子を見た彼女は、クスッと笑うと、耳元で囁きかけてきました。
その言葉を聞いた瞬間、一気に顔が熱くなるのを感じました。
羞恥心でいっぱいになり、俯いていると、突然、肩を掴まれ、押し倒されてしまいました。
何が起こったのかわからず混乱していると、馬乗りになった彼女が、
妖しい笑みを浮かべながら見下ろしてきました。
その表情はまるで獲物を狙う肉食獣のように思えました。
これから何をされるのか悟った私は、抵抗することもできず、
ただ、じっと待つことしかできませんでした。
それから数分後、ようやく満足したらしく、
退いてくれたのですが、その時の私の顔は、真っ赤になっていたことでしょう。
翌日、会社へ行くと、真っ先に課長の元へ行き、辞表を提出しました。
すると、驚いた表情をされました。
どうやら、私が辞めるとは思っていなかったようです。
確かに、ここ最近の業績はかなり落ち込んでいましたが、
それでも、もう少し頑張ってみようとは思いませんでした。
今思えば、あの時、辞めなかったとしても、いずれ同じ結果になっていたでしょう。
何故なら、私には目標が無かったからです。
どんなに頑張っても報われない、そんな人生に嫌気が差してしまったのだと思います。
そして、何より、彼女の存在が大きかったのでしょう。
彼女と出会っていなければ、今も働いていたかもしれません。
ですが、今となってはどうでもいいことです。
それよりも、今は、一刻も早くこの場から離れたいという気持ちの方が強かったのです。
足早にその場を立ち去ろうとした時、不意に呼び止められました。
振り返ると、そこには、例の女性の姿がありました。
彼女は、私のことを引き止めようとしてきたのです。
しかし、今の私にとって、彼女の言葉に耳を傾ける気はありませんでした。
無視して立ち去ろうとすると、腕を掴まれてしまいました。
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