「島人われは」という言葉に込められた、誇りと郷愁。
戦後民主主義の理想と、伝統的な「家」の価値観のはざまで、真面目に、そして情熱的に島を生きた父。
その背中を50年以上にわたって見つめ続けてきた著者による、静かな、しかし深い愛に満ちた回想録です。
かつては「海の向こう」に憧れ、世界を飛び回っていた著者が、いつしか父と同じ「しまなみの引力」に引き寄せられ、故郷で教育に携わっているという数奇な巡り合わせ。
「自分たちもやってみたかった夢を、我が子を通して体験していたのではないか」という一節には、世代を超えてつながる親子の、言葉にならない対話が凝縮されています。
最後を締めくくる父子の短歌の唱和が、しまなみの美しい風景と共に心に響きます。故郷という場所が持つ抗いがたい引力と、親という存在の大きさを再確認させてくれる、格調高いエッセイです。