現代社会に根深く蔓延する「不寛容」をあぶり出す、非常に鋭く、かつ誠実な考察です。
ホロコーストという極限の悲劇を起点としながらも、著者の視線は決して遠い過去や異国に留まりません。パレスチナを巡る連鎖、日本の移民・難民への冷淡な制度、そして教育現場での息苦しいほどの厳格さ……
それらを地続きの「不寛容」として捉える筆致に、背筋が伸びる思いがしました。
「不寛容は、よほど意識して目を凝らさないと気づかないほどに蔓延っている」という言葉が重く響きます。
今の時代、私たちは知らず知らずのうちに不寛容の海を泳いでいるのかもしれません。自省の念を込めて、今こそ多くの人に読まれるべき一編だと強く感じました。
物事を理解する上で、真っ向からの直線的な思考で分かりにくければ、その逆側からのアプローチで捉える方法も一考ですね。思考の訓練に適した題材だと感じます。
本作は『寛容(tolerance)』というキーワードに対して様々な切り口で展開されるお話です。
興味深いのは『寛容』という言葉を理解する上で、敢えて反対の『不寛容』の意味を例に上げて深掘りしている論法にあります。
不寛容の行き着いた先に【ナチスによるユダヤ人迫害】という悲痛極まりない歴史を皮切りに、現代での移民・難民受け入れに対する日本政府の後ろ向きな態度も含めた社会的なトピックにフォーカスしていて、とても意義深いです。
じっくりとよく読み込めば分かりやすく解説されていて比較的記憶に残りやすい内容だと思います。
日頃から論理的な思考を取り入れることで、考え方の幅を拡げたい方にオススメです。