八、初修行
日が登り、窓から光が差し込んでくる。
部屋にドゴンッという大きな音が響いて、
「ふぁ……こんな朝からなんだぁ?」
先程の大きな音は隣の
「
はみ出したシーツと共に髪が広がり、枕も床に転げ落ちている。
「
「
「ありがとう」
「一体何があったんだよ、寝相が悪いどころじゃないよな」
「はぁ……霊気を取り込む修行してたんだよ。そしたら力が入りすぎちゃって……」
こんな顔を見せてくれるとは、
「うぇっ!?」
「なんだ、そのマヌケ面は」
「
「それもそうだ。
「くそっ、今度こそ打ち負かすからな!
(ふふふっ、やっぱり
後々伴侶となる相手に向かって闘志を燃やす
修行の邪魔をしてはいけない。
◇◇◇
「さてさて、二度寝したいところだけど……」
昨夜は
結局、"仙人様"が何者なのかも
というか、突然の近距離にドキドキしすぎて、
あの感じだと、直接聞いても教えてくれなさそうだ。
「昨日のことは一旦置いておこう……」
今日と明日は
そのため、
「修行しますかぁ……」
今の
少なくとも、練気期後期くらいにはステップアップしておきたいけど……。
「理屈は全部知ってるんだけど」
教書に書いてあるのは全部
まあ、この世界を作った張本人であるから、それは当たり前なのだが、もっとこう、
まあ、理屈で分かっていても実践できるかは分からない。
「霊草とか落ちて……ないよなぁ」
伝説の桔梗のような霊花や霊草を取り込めば、一気に霊気が吸収されて霊力が蓄積される。
しかし、それらは天材地宝と呼ばれる希少なアイテムであるから、そこら辺には生えていない。
「あとは……あ、」
もうひとつ、効率が良く手っ取り早い修行方法がある。二者間で繋がりを持ち、霊力を高め合うアレだ。
しかし、それは
「うっ、なに考えてんだ!」
我ながら不純すぎるし、望みはゼロに近い。
(この方法はナシだ、ナシ……!)
「やるかぁ」
まずは、床に座して楽な体勢にし、目を瞑る。そして、霊根を活性化させて、仙郷に漂う霊気を吸収するイメージで、体内の気を循環させる。
(うおお! よく分からないけどなんか強くなってきてる気がする……!)
どくどくどく、と脈打つ。
初めての修行だったが、霊気が体内に吸収され、霊根に霊力が蓄積していく感覚がする。
(えっ、なんか簡単すぎない? これであってるの!?)
なんだか、スムーズに行きすぎてる感じが。
◇◇◇
「ふぅ……」
気がつけば座禅を組んでから五時間が経っていた。恐ろしい集中力だ。前世で一日中ノートパソコンに向かって執筆していたときの経験が役に立ったのだろう。
「つかれたぁぁ……」
背に汗をかき、足は痺れて痛い。
だが、
基本、修仙者は何十日、何百日と月日をかけて霊力を蓄えていくのだが、
(転生者特有のご都合最強設定ってヤツですか……!? それとも、妖魔王の器だから?)
これはとんでもないことである。
新入り弟子の行う修行を一日で終えてしまったのだ。
しかし、この先は少し気合を入れて、境界と呼ばれる壁を突破しなければ、次の修行段階には進めないはずだ。
「うーん……でもなんか、境界突破もできちゃいそうな感じなんだけど」
今、
「そうだなぁ」
今度は何をしようかと頭を捻らせる間に、ふと、部屋の隅に置かれた長剣が視界に入った。
◇◇◇
次は実践演習だ。実際に身体を動かして術を発動してみなければ始まらない。
「ここら辺かな」
書院で見たことあるような者も数人修行していたため、「あの
厄介事は避けたいから、
「ここなら、何してても誰も気にしないだろ」
(ええと……
「
「うぐっ、剣って重いなぁ……なんかちょっと錆びてるし」
(でもほら、扇とか札とかの方がスマートでかっこいいじゃん? 運動神経悪くてもなんとかなりそうだし)
よし、新しい武器を手に入れよう。
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