3-2
何事かと衝撃の出所を確認すると、スーツ姿の中年男性がこちらを見ていた。パグのような重い瞼をしている。どうやら後ろから来た彼が私のカゴにぶつかってきたらしい。男性はちらとこちらを見たが、すぐに目をそらし、そのまま吉岡さんの方へ向かった。
「はーい、今日も美味しそうな弁当だね」
パグは笑顔で吉岡さんから弁当を受け取っていた。訂正する。パグだとキュートな中年男性をイメージすると思うが、全くキュートではない。キュートではない方のパグだ。そういうと、パグに失礼な気もするが。
パグ男が去った後、私は吉岡さんから無事弁当を受けとることができた。
「あの人、常連さんですか?私にぶつかってきたのに、なんの謝罪もありませんでした」
どうしても気持ちを抑えきれず、吉岡さんに愚痴をこぼしてしまった。
「ああ、あの人ね。うん、ちょっと変わってるっていうか何ていったらいいのか」
いつも笑顔な吉岡さんの表情が一瞬、曇ったような気がした。
弁当をもらい、レジに並ぶ。
「いらしゃいませー。あ」
2号レジにいた、きよ たさん通称キヨさんは、必要最低限の接客がスタイルだ。いつものように顔が死んでいたが、私に気づいたようだ。お疲れさまです、と返す。
「今日もいつも通り、ヨシバってるよ。私も帰りにヨシバるつもりだけど」
2号レジは総菜がよく売れるレジだ。キヨさんがそう言うならそうなんだろう。まあ、私が2号レジに入る日も、ヨシバらない日などないのだけど。
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