海面上昇が続き、国土が縮小し、あるいは水没し、環境が変わってこれまでの作物が育たなくなった近未来。
主人公は「叔父さん」の逝去をニュースで知る。
主人公は叔父さんの家に居候しているが、じつは帰る場所がある。
実家だ。
海面上昇の影響を受けておらず、おそらくは関東の沿岸部が沈んだことによって経済的な地盤が底上げされた地域だ。
それなりに「よい」くらしが約束されてはいるが、そこには魂の自由はない。
しかし、主人公とともに叔父さんと暮らしていた「うおちゃん」は、そこには行けない。
うおちゃんは、人類の進化の過程で海棲に適応した「人類」だ。
叔父さんがいたことによってギリギリ保たれていた均衡が、失われる。
そのとき、主人公はなにを選ぶか?
SF的なガジェットのリアル感が良い。
ただし、そのガジェットが仮になかったとしても、本作のテーマはいつの時代にも通用するだろう。
持てるすくないカードのなかで、自分はどう生きたいのか。
そんなことを静かに問いかけてくる作品である。