34. 恋って沸騰したヤカンみたいだわぁ



 そして数日後。今日はシャーロット様とのお茶会の日ということでまた学園へ。まさか卒業後にこんなに訪れることになるなんて、思ってもみなかったわぁ。


「遅れて申し訳ありませんねぇ」

「別に構わなくてよ。……何をしてきたの?」


 怪訝そうな顔で私の後ろを見ていらっしゃるけれど……何か憑いてきてます? 墓場とか最近行っていないと思うんですけども。


「普通に馬車から降りて、生徒の方と少々おしゃべりして、おしゃべりして、先生にご挨拶をしてきただけですよ」

「……細かい話は後でにするわ。先にお茶会にしますわよ」

「? ええ」


 ちなみに今日のドレスはまたケネス様から頂いたもの。お弁当のお礼だとか。

 また瑠璃色で、上品且つシンプルなもの。あの人瑠璃色が好きなのかしら。まぁ、この間は畑仕事のまま来てしまいましたし、ちょうどよかったわ。


「いい香りねぇ」

わたくしが選んだのですから当然ですわ。それで話したいことというのが……」


 うん、高級な茶葉に公爵家お抱えパティシエの作ったお菓子はさすがのお味ね。私の粗末な舌で申し訳ないくらいだわ。

 それにしても、そのステラさんはちょっと厄介な人なのねぇ。


「……殿下にペンを貸してもらったり、肩を叩いたり、距離が近かったりと……はしたないですの!! 注意をすればなぜか喜びますし!!」


 この世界では貴族間では男女の距離が違うのよね。生まれた時から恵美子の記憶を持っていたら、私も大変だったかもしれないわ。喜ぶのは、教えてくれて嬉しいからじゃないかしら。


「殿下も殿下ですわ! どうして拒みませんの!?」


 ムキーッと怒っているシャーロット様。

 きのこ狩りの時を思い出しますと、十中八九この顔が見たいからといいますか、修羅場を面白がっているのでしょうね。確かにシャーロット様は怒っている顔も可愛いけれど、女の子は笑っているのが一番なのよ。


「まあまあ、落ち着きなさいな。そもそもが平民なのでしょう? 礼儀の勉強まで手が回ってないのだと思いますよ」

「そ、それはそうかもしれませんが……でもっ!」

「一から、教えてあげればいいじゃないですか。庶民なのに勉強をたくさん頑張ってきた子なのだから、きっと飲み込みも早いですよ」


 と申し上げれば、火を止めたやかんみたいにスッと落ち着かれる。聡明な子なのね。


「シャーロット様は、間違ったことを仰ってるんじゃありません。逆にちゃんと窘めて偉いわ」

「……そうですわ。私は別にいじめなんてしていませんの」


 シャーロット様は公爵家。人の好き嫌いだけで派閥ができてしまうのは仕方のないこととはいえ、周りが勝手に盛り上がって作った罪を被るなんて嫌よね。私は目をつけられないように徹していましたが。


「でもねぇ、人を変えたいならまずは自分が動いて、変えないと、ダメなのよ」


 何かして欲しいじゃ、いつまでたっても変わらないのよ。してあげたいで動かないとね。そうしたら、今度は自分がしてもらえる日がきっとくるから。情けは人のためならずなのよ。回り回って自分に返ってくるの。


「……そうね、私は貴族だもの。富を集め、施しを与える、責任ある使命を背負って生まれたのだから。ずっと言い聞かされていたのに、忘れてしまっていたわ」

「恋は盲目と言いますからね」


 いい子ねぇ。まったく、殿下の目ときたら節穴だわ。


「まずは、ステラさんをよく知ってみようとおもいますわ」

「その勢ですよ」


 なんて和やかな空気でなったところで、


「それで、後ろにいる大量の生徒やら先生はなんですの?」

「はい?」

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