第2話 混乱

 とりあえず店に入ろうぜ、聞きたいこと沢山あるんだよ!

 混乱しているウィリアムに、やけに機嫌のいい同僚の男は構わず近くの喫茶店に連れて行った。


「おい、おいジャック。いい加減にしろよ、お前。俺は聞きたいことがあるんだよ!」

 適当にコーヒーとオレンジジュースを頼んだ後、また男が矢継ぎ早に話そうとしたのを、少々声を張り上げて止める。

 ジャックはあぁ、悪い悪い。そうだよな、話したいことあるもんなお前は!と、ニヤけていた。

 何が可笑しいのかと、俺は聞きたいことがあるって言っているんだよと、苛立ちが湧いてきたが、それどころではない。

 先ほどの部屋、一夜にして変わった街並み、そして昨日会ったはずのジャックが「2週間前に会った」という発言。混乱から生じる怒りを隠さずぶつけるも、ジャックは何を言っているのかと、呆けた顔をしていた。


「おまえさ、それ昨日飲み過ぎたとかじゃねぇの?……あ、まさか、メアリーちゃんとうまくいかなかったのか……?」


 メアリー。聞きなれない名前に眉間を寄せた。

「誰だよ、そいつ」

「え、お前それ本気で言ってんのか?自分の彼女だろ、いくら酒飲んで記憶飛んだからって、今のはヒデェぞ」


「お待たせしましたー」

 険悪な空気に割って入るように、気だるげな店員がドリンクを持ってきた。

 適当に置かれたドリンク。ジャックは当たり前のようにコーヒーをウィリアムの方に置いた。

「おい、俺はこんな泥飲めないぞ、知ってるだろ」

「泥ってお前、この前って言ってたじゃないか」


 いよいよ自分は悪い夢を見ているようだ、ウィリアムは堪らなくなり、店を飛び出した。


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