第2話 蝙蝠
寒さが芯まで沁みる山脈の大きく深い穴の底、地に根を力強く張った植物が雪の埃を払う頃に動き始める蝙蝠達がいた。決して数が多くも、体格に恵まれている訳でもなかったが、食料の少ない深海のような穴では生態系の頂点に立てていた。
その日も飢える者たちは何も得ることができずに眠りにつくのだと思われたが、突然真っ白な天空から飢えた群れの上に死体が落ちてきた。周りに散らばる骨程の大きさで、見てきた生物としては胴が長く、背に緑の大きな腫れ物がある、器官がすぐに取れるおかしな死体。
その日から、穴の底に住む蝙蝠たちに飢える者はいなくなった。
そして、深淵に最も近い大きな窪みには、欲望だけが残った。
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