真夜中のダウンヒル
これは、私が小学校二年生ぐらいの頃、群馬へ遊びに行った時の話です。
◇
私は冬休みに、祖母と2人で群馬のオジさん家へ向かいました。
今回は群馬のおじさんではなく、群馬のオジさん――弟さんの方の話です。
※因みに、ほぼ旅館扱いしている私は、群馬のおじさんの家は本館、群馬のオジさんの家は別館 呼びしてます。
普段は本館か別館に泊まるのですが、いつもお世話になってばかりいるからと、その日 私と祖母は、山の上にあるホテルに泊まることにしました。
おじさんの家から車で50分ほどの場所にあるそのホテルはとても大きく、本当に周りには木しかない、というカンジでした。
そして私はこの後、田舎の怖さを知ることになります。
・・・
午後7時―――
窓の外は真っ暗で、街灯一つない世界が広まっていました。
都会っ子の私は、そんな光景を未だかつて見たことがなかったので、凄まじい恐怖を感じました。
一方、群馬で生まれ育った祖母は、「当たり前だ」と言わんばかりの振る舞いで、何とも思っていない様子でした。
それでもなんとか寝ようと、震えながら無理に目を閉じたのが良くなかったのか。
私は悪夢にうなされ、外を見ても暗黒が広がり、祖母は全く相手にしてくれない。
私は泣きながら群馬の家へ電話を掛け、助けを求めました。
すると、30分ほど で群馬のオバさんが到着。
ホテルの従業員からすると、私と祖母は突然現れ、嵐のように去っていった客でしょう。
「怖かったんか。すぐ家に戻るからね」
群馬のオバさんはそう言うとジムニーを急発進させ、アクセルほぼ踏みっぱなしのダウンヒルを披露。
さっきまでの恐怖は吹っ飛び、また新たなスリルが私を襲います。
しかし、安全第一の運転をする父の車では まず体感することのないスピードに、初めは怖がっていた私も、最後にはゲーム感覚で架空のハンドルを握るように。
オバさんに合わせて右へ左にハンドルを切り、20分ほどで“プチ イニD体験”は終了。
・・・
別館に着き、私はすぐオバさんに尋ねます。
「なんであんな速かったの?」
「昔、族だったからね」
「ぞく?」
「そ。オジさんは頭だったんだよ」
◇
しばらくして その意味が分かった私は、再び震えることになります。
が、今になってみると、暴走族の総長とその女って、個人的に好きなシチュエーションなんだが。
そして、お気づき頂けただろうか。
オバさんの峠の攻めがメチャ速いことを…
【群馬のおじさん】 天野小麦 @amanokomugi
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