真夜中のダウンヒル

 これは、私が小学校二年生ぐらいの頃、群馬へ遊びに行った時の話です。



 私は冬休みに、祖母と2人で群馬のオジさん家へ向かいました。


今回は群馬のおじさんではなく、群馬のオジさん――弟さんの方の話です。


※因みに、ほぼ旅館扱いしている私は、群馬のおじさんの家は本館、群馬のオジさんの家は別館 呼びしてます。



普段は本館か別館に泊まるのですが、いつもお世話になってばかりいるからと、その日 私と祖母は、山の上にあるホテルに泊まることにしました。


 おじさんの家から車で50分ほどの場所にあるそのホテルはとても大きく、本当に周りには木しかない、というカンジでした。


そして私はこの後、田舎の怖さを知ることになります。


・・・


 午後7時―――


窓の外は真っ暗で、街灯一つない世界が広まっていました。


都会っ子の私は、そんな光景を未だかつて見たことがなかったので、凄まじい恐怖を感じました。


 一方、群馬で生まれ育った祖母は、「当たり前だ」と言わんばかりの振る舞いで、何とも思っていない様子でした。



 それでもなんとか寝ようと、震えながら無理に目を閉じたのが良くなかったのか。


私は悪夢にうなされ、外を見ても暗黒が広がり、祖母は全く相手にしてくれない。


私は泣きながら群馬の家へ電話を掛け、助けを求めました。



 すると、30 で群馬のオバさんが到着。


 ホテルの従業員からすると、私と祖母は突然現れ、嵐のように去っていった客でしょう。



「怖かったんか。すぐ家に戻るからね」


 群馬のオバさんはそう言うとジムニーを急発進させ、アクセルほぼ踏みっぱなしのダウンヒルを披露。


さっきまでの恐怖は吹っ飛び、また新たなスリルが私を襲います。


しかし、安全第一の運転をする父の車では まず体感することのないスピードに、初めは怖がっていた私も、最後にはゲーム感覚で架空のハンドルを握るように。


オバさんに合わせて右へ左にハンドルを切り、20で“プチ イニD体験”は終了。


・・・


別館に着き、私はすぐオバさんに尋ねます。


「なんであんな速かったの?」


「昔、族だったからね」



「ぞく?」


「そ。オジさんは頭だったんだよ」



 しばらくして その意味が分かった私は、再び震えることになります。


が、今になってみると、暴走族の総長とその女って、個人的に好きなシチュエーションなんだが。



そして、お気づき頂けただろうか。


オバさんの峠の攻めがメチャ速いことを…

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【群馬のおじさん】 天野小麦 @amanokomugi

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