第37話 ベルリスと騎士の道

 私、エリム

今日もフロンティア学園の授業が終わり下校する。


 すると。


「おぉエリムか」


 通りかかったベルリスが私に話しかけてきた。


「ベルリス、どうしたの?」


「見回り中だ」


 見回りをしているみたいだった。


「そう」


「エリムも久しぶりに見回り、どうだ?」


 ベルリスから一緒に見回りを誘われた。

ベルリスと見回りをしたことあるが、正直楽しいしベルリスは偶にツッコミたくなるところは出てくるけど、可愛い一面を持っていたりするので一緒に見回りしたい。


「いいね!しよっか」


「では行こう」


 そうして私とベルリスの見回りが始まった。


「学園生活はどうだ?楽しいか?」


 ベルリスが学園生活について聞いてきた。

ベルリスも今は騎士だが、私みたいに学生の頃があったので気になっているのだろう。


「楽しいよ!授業もとても参考になるし、友達とも楽しく過ごせてるし!」


 私が今の学園生活の感想を率直に言ってみた。

参考になる授業、そして仲の良い友達と共に学園生活を過ごせているのでとても楽しい学園生活が送れている。


「そうか…なら良かった。今ある青春を大事にするんだ」


 聞いてきたベルリスは私の話を安心そうに聞いている。


「するよ。授業も友達の皆も私にとっては大事な存在だからね」


「なら良い。もし何かあったら誰でも良いから話すんだ。勿論、私でも良いぞ。力になる」


 ベルリスはもしかしたら私のことが気になっていていたのかもしれない。

ベルリスは学園の生徒ではないので学園内での私の様子を知らないのでそう気にしてしまうのも無理はない。


「ありがとうベルリス!いい人だね」


「そ、そうか?まぁ…これでも騎士だからな!」


 私が褒めるとベルリスは恥ずかしそうにする。

可愛い。


「ベルリスは?順調?」


 私の学園生活がどうなっているのかをベルリスは聞いてきたので今度は私がベルリスが騎士としての生活がどうなっているのかを聞いてみる。


「...あぁ。と言いたいが順調とは言い難いな」


「何かあったの?」


 深刻そうな顔をベルリスはしたので心配して聞いてみる。


「誰でも倒せれるぐらいのモンスターに苦戦したり、書くべき文章の文字を沢山間違えたり...順調と言うには程遠い。今では私より強い後輩が沢山いるからな。本来ならかっこいいところを私が見せてあげたいのだが...難しい」


「そっか...」


 ベルリスは悩んでいるみたいだった。


「だからエリムが羨ましい。多分、私より強いし私が使いこなせなかった魔法を使いこなせている。尊敬していたり目指していたりしている人物は誰か?と聞かれれば真っ先にエリムと答えるだろう。私にとってのエリムはそれぐらい偉大だ」


 ベルリスは私を羨ましそうな目線で見ながらそう語った。

けれど。


「そう?私だってつまずきそうになったりすることあるよ。何かを判断したりすることとか凄い苦手だし...何かに真っ直ぐに立ち向かうことだって正直不安になったりすることとかあるよ」


「そうなのか?てっきりエリムは何事も完璧な...」


 ベルリスは私に対して疑問を持った。

多分、私はなんでもできる完璧な人だと思っていたのだろう。


 誤解を解かなくては。


「違うよ。完璧じゃないよ。ベルリスみたいに真っ直ぐに立ち向かうことは私、あまり得意じゃないから」


「そうか...」


「ベルリスは木登り得意だったり子供たちと楽しく一緒に遊んだりできたりするでしょ?それ、ベルリスの良いところだよ!」


 ベルリスに良いところは沢山あるので本人にも知ってほしい。

なので、私はベルリスの良いところを伝えて褒めてみる。


「そ、そうか?か、感謝する...」


 褒めたからベルリスは照れている。

褒めたら可愛いのでもっと褒めたくなる。


「だから良いところベルリスには沢山あるし自信持って!」


「分かった…自信を持とう」


 ベルリスは頷いてくれた。

どうやら私の狙い通りに話を聞いてくれていたらしい。


「エリム、フロンティア学園を卒業したらどうするつもりだ?」


「あー…どうしよ…」


 ベルリスの質問からまたもや将来のことを思い出した。


 まだ決まっていない。


「悩んでいるところか?」


「うん…まだどうしようか悩んでる最中なんだ…決めないと…」


 今のところ、商店街とかで働くかお芝居の道に進もうかで悩んでいる。

色々選択肢があるのでどれが私に向いていてどれが私の未来に合っているのかが今のところ、自分の中では明確になっていない。


「それなら騎士はどうだ?」


「騎士?」


 騎士になるとベルリスと同じ職につくことになる。

考えていなかった。


「あぁ。エリムは困ってる者を助けてあげたり、先程の私を褒めてくれたみたいに誰かの良いところを見つけるのが得意だ。現に騎士の私から見ればエリムこそ騎士に相応しいと思っている。どうだ?騎士の道に進むというのは?」


「ありっちゃありかも…」


 誰かを助けたりするのは好きだ。

向こうが幸せになってくれるのもそうだが、褒められたりするとまた頑張ろうという気持ちになれるからだ。


「だが、この先の未来を決めるのはエリム自身だ。なのでじっくりと考えてくれ」


「ありがとうベルリス。考えておくよ」


 新しく騎士の道に進む考えがここで生まれた。


「エリム、見回りが終わったらまた防具を身に付けてみないか?」


「いいよ。じゃあ見回り終わったらギルドでね」


 そう約束し、2人で見回りを続けた。


 そして見回りは無事に終わり、2人でギルドの更衣室に来た。


「どう?防具、似合ってる?」


 更衣室で私は防具を身に付けた。


 幽霊退治とかで何回か防具は身に付けた経験があるので既にベルリスは見たことはあるが、改めてここで私の防具姿が似合ってるかどうかを聞いてみる。


「あぁ…やはり似合っている。こうして見ると…本物の騎士に見える」


 ベルリスはもう既に何度か見ているのにも関わらず興味津々に私の防具姿を見ている。

側から見ればそんなに似合っているのだろうか?


「私は学生だってば〜」


「分からないぞ?いつか将来、日頃からその姿になる日が来るかもしれない」


 そう言われてみればベルリスはいつも防具を身に付けているのでもし仮に騎士になったとすればそうなる。

この防具、私はデザインが好きなのでありだ。


「これ、玩具だが」


 ベルリスは本物に似ている玩具の剣を私に渡した。

多分、これで騎士っぽく振る舞ってほしいのだろう。


「ありがとう。じゃあちょっと…」


 玩具の剣を持ちながらベルリスが普段してそうな騎士っぽいポージングを何種類かとってみた。


 表情もそれっぽくはしている。

けれどベルリスを参考にしているので物真似感は少しある。


「どう?ちょっとベルリスの物真似っぽくなっちゃったけど…」


「おぉ…凄い…本物の騎士みたいだ」


 ベルリスは感動していた。


「ありがとう」


「エリム、いつか私の…」


 ベルリスは何か言おうとしている。

一体なんだろうか?


「ベルリスの…何?」


「いや…何もない。エリムは凄いな」


 ベルリスは何かを言おうとしたが話を逸らした。


「ベルリスだって凄いよ」


「感謝する…」


 ベルリスが抱きしめてきた。


「どうしたのさ?」


 いきなりだったので驚くもベルリスの抱き心地が良いのでそっと頭を撫でてあげる。


「私は何か困ったらエリムのことを思い出している。そうすればまた前を向こう。そんな気になれるのだ。そのお陰で頑張って来れているのだ。だからこそ…言わせてくれ。感謝する…と」


 ベルリスにとっての私はそこまでの影響を与えていたのか。

私のお陰でベルリスが励みになっているのならそれは嬉しいことだ。


「そっか…私こそ、いつもありがとう。ベルリス。これからも騎士、頑張ってね。でも、もし困ったりしたら私に言って。私はベルリスの味方だから」


「エリムには助けられてばかりだな…」


 騎士の道、ありかもしれないと抱きしめられながら思った。

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