第8話 アイツノナゾ

選ぶこと30分。

「こまち、決まった?私決まったから、先にレジ行ってくるね!」

と菜月に声を掛けられた。

『ちょうど私も決まったよ!』

と伝え、2人でレジへ向かう。

こんな風に、友達と雑貨を買うのは久しぶりだ。

菜月は、薄緑色でクローバー柄の少し深めのマグカップを持っている。

母へのプレゼントは、母の好きなオレンジ色の花柄にした。

ティーセットは、バラがデザインされているものと、牡丹がデザインされているものにした。

自分用のカップは、淡いピンクのリボン柄にした。

「急に、マグカップ変えたらアイツに何か言われそう。」

とつぶやく菜月。

『何を言われても、物を変えるのに理由なんて必要ですか?いちいち誰かに相談する必要ありますか?とか冷めた対応をしていれば、あまり深く聞いてこないよ。』

と言っておく。

まあ、私がそう言っても通用しなかったけど、正直には話さなかった。

「そう?てかさ、そういうこと聞いても、アイツには得ないはずだよね。何で知りたがるのかずっと謎なんだよね。」

菜月、それは知らなくていい事だと思うよ。

『世の中知らない方が幸せなこともあるのにね。』

「そうだね。別に知りたくないから、知らなくてもいいや。」

興味はないよね、うん。

私は、もう同じ職場ではないから、何かを新しくしても突っ込まれることはないけど、菜月と梨乃は同じだもんね。

あの人は、本当に何でもかんでも、深く探ろうとしてくる。

夜勤明けで用事があって出掛けると言うと、何しにどこに行くのか聞いてくる。

«それをあなたに言ったところで、何になるんですか?»と聞けば、«教えてくれてもいいじゃーん!»と返事が来る。

意味が分からない。

何故そんなに知りたがるのだろう?

どこに行くのか言えば、向こうが偶然を装って同じ場所に来るのではないかと思って、すごく怖い。

だから、自分の行動範囲は、なるべく話さない。

貝瀬さんとは、本当にこれ以上関わりたくない。

『遊びに行くって言うと、絶対どこに〜?って聞かれるんだよね。』

「えっ?!やっば。それ言っちゃダメだよ。言ってることストーカーだな。」

『本当にそうなの。何で聞きたがるんだろう?』

「こまちのことが恋愛的な意味で好きなんじゃない?」

その結論になるのも不思議だけどね??

もしそうだとしたら、早く脈ナシであることに気づいてほしい。

『どうして、そうなるの?』

「だって、私と梨乃は、そこまで聞かれないもん。まあ、頼んでもないのに外食の写真が何枚も送られてきて、感想?反応?を求められるのは同じだけど(笑)」

2人も聞かれてると思ってたよ。

『外食の写真は、本当に何で送ってくるんだろうね。毎回、反応に困るよ。』

既読無視をすれば、«無視しないでよー!せっかくご馳走の写真送ってるんだから、何か反応してよ!»と、まるで反応しないのが悪のように言われる。

いや、別に頼んでませんけど?とムカつくこともある。

「せっかくだし、アイツのことは忘れて、スイーツでも食べて帰ろうよ!」

『そうだね!』

と、2人でスイーツを食べて帰ることにした。

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