第36話 過去からの呼び声

「みんなが行方不明!?」


 日曜の昼下がり、第一報を聞いた俺は、当然叫び声を上げた。


「そうなの。いま、親御さんたちみんな大騒ぎしてるみたい。雄介さんが無事でよかったわあ……」


 義母さんは家の中をバタバタしていた。


 電話が鳴りやまないようだ。


 なにしろ、クラスの半数以上の生徒が行方不明になったのだ。


 前代未聞の事件だ。


 俺も大人たちから事情を聞かれたが、こっちはキャンプをするらしいとかその程度の情報しか持っていないので答えようがなかった。


 ふと、自分のスマホを見ると一件、チャットアプリの通知が来ていた。


 蒟蒻山からで、時刻は日曜の夜8時ごろ。


 ただ一言、「たす」。


 どう考えても「助けて」だろう。


 尋常ではないことが起きている。


 全身の鳥肌が立つ。


 もちろん、学校や警察に「たす」の件は伝えたが、それで何かが進展した様子はない。


 なんでも、大山車たちも家族や友人に助けを求めるようなチャットを送っていたそうだ。


 彼らの行った白黒キャンプ場では、警察の捜索が続いていて、町中でパトカーのサイレンの音が聞こえる。


 白黒山の近くには、昔住んでいたが、そんなに物騒な何かがあった覚えはない。


 蒟蒻山たちが心配で仕方ないが、自分に出来ることは無かった。


 何か連絡がないかとスマホを前に、自室でじっと待つのみ……。鍛えるわけでもなく、ただ手持無沙汰でダンベルを上下させるくらいしかやっていない。


 そして、昼下がりにスマホが震え出した。


 緊張して電話を取ると、霊子からだった。


「やあ、大変なことになったね」


「大変どころじゃないだろ。お前は何か知らないのか?」


「いいや、何も。けれど推測はできる」


「え……?」


「白黒山、他に何があると思うね?」


「他に……? 別に何も……」


 いや、待て。


 昔、あの辺には――


 何か――


「潰れた遊園地があるだろう?」


「ザンギリこどもランド!!」


 はっきり思い出した。


 この間の夢にも出た、遊園地……!!


 気づいた瞬間、急に汗が噴き出す。


 指先が、震え出す。


 呼吸も浅くなるが、霊子に気取られたかどうか。


「……詳しくは会って話せないかい? そうだな……30分後にさぼてん公園にしよう。古田門那珂にも連絡しておく」


「あ、ああ……」


 何かぞわぞわするものが腹の底から湧き上がってくるような、気味の悪さ。


 ずっと蓋をして、押し込めてきたものが、溢れそうになっている。


 だが、もう目を背けてはいられない。

 うすうす気づいているのだ。


 今回の事件は間違いなく、俺の過去と関係している――

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