第42話 アイリスとは気が合う

「と言う訳で、ティエルネ商会の会長さんに協力してもらえることになったんだ」

「……よくもまぁ、そんな簡単にわたくしの前に顔を出せたものね」

「いや、数か月前に会ったじゃん」


 どこに行くのかも説明されずに、アイリスによって連れていかれた先は……王城だった。滅茶苦茶広くて豪華な会議室みたいな場所に通されて、普通に椅子に座って待っていたら……コルネリアがやってきていきなり絡んできた。


「ティエルネ商会の会長さんって、ただのエドワードじゃん」

「ただのってなんだ。俺は別に断っても良かったんだぞ?」

「オリーブ、私が無理を言って連れてきたんだからあんまりエドワードを怒らせないで」

「アイリスって未だにエドワードのこと好きなの? 飽きないよねぇ」


 そんなこと俺の顔を見ながら言われたって、俺の方が不思議に思ってるんだから知らないよ。そもそもアイリスが俺のどこに惚れたのかなんて聞きたくもないし、結局は同級生のままなんだからいいだろ、別に。

 複数人に絡まれながらもメンバーが全員集まるまで待っていたら……面倒なことになった。


「これ、同窓会かなにか?」

「半分ぐらいそうかも」


 おいおい……コルネリア、オリーブ、アレクサンドル、グラン、ユーリ、ケイ、ダイン……いや、ネームド全員じゃないか。追加でいる奴なんて、モーリスとその取り巻きであるカルバンとアーネストだけじゃん。


「諸侯には既に連絡を飛ばしてある。数日後にはリュカオン神聖王国も国としてアヴァロニア王国へと対抗する準備が整っていくはずだ」

「エドワードには伝手を使ってほしくてね」

「なんでお前が俺の伝手を知ってるのか、そこをちょっと聞きたいが……まぁ、戦争が起きればどっちにしろ俺も稼ぎ時になってくるからな。協力は惜しまないさ」


 戦争が始まるなら大量に武器の在庫を用意しておくか……武器なんてものは壊れるのが常だから、用意しておけばおくほどに俺が儲かる。これが関係ないところから見るだけだったら、傷薬を水で薄めて効果を低くして大量に売り着けたり、こっそり敵国にも物を売って戦争をわざと長引かせたりとかするんだが……まぁ、今回は俺も巻き込まれる立場だから自重しておこう。


「うわー……エドワードって商人としての才能はあるのかもしれないけど、人間としては割とクズだよね」

「一度王国を裏切った人間に今更言うか?」


 俺がクズであることなんて、ここにいる全員が理解しているだろ。


「ところで、さっきからアイリスが言っているエドワードの伝手ってなんのことだ?」

「あー……それはねー……」


 アレクサンドルにツッコまれて、アイリスが言い淀んでいているが……そりゃあ聖王であるモーリスが目の前にいるのに、言える訳ないよな。まさか聖都を中心に活動している裏組織と繋がっているなんて。

 商会としてキチンと商人はしているが、それはそれとして後ろめたいことをしてない訳がない。コートス王国との戦争によって闇組織が滅茶苦茶になってしまって、治安が悪化した……みたいな話はゲーム中に出ていたので、それを利用して俺がフィクサーの形でまとめ上げたのだ。

 定めたルールとしては、堅気には手を出さずに無駄な殺しは厳禁。それ以外は全部オッケーってことだ。

 組織同士の潰し合いはあったりするが、堅気には迷惑をかけていないので治安の悪化とかの懸念はない。現代日本ならまず違法になっているであろう覚醒剤ヤクだって、戦争ばかりのこの世界では合法で扱える便利なメンタルケア商品だからな。


「なんでもいいけれど、その伝手を使って、アイリスは何をするつもりなのか聞かせてくれないかしら」

「戦力目的じゃないよ。エドワードの伝手を使って、色々と物資を補給して欲しいの」

「物資の補給?」


 そりゃあ……どういうことかと思ったが、なるほど……そう言うことか。


「それくらいならいいが、本当に大丈夫なのか? その……はっきり言って、イーリス部隊が抜けたリュカオン神聖王国はかなり危ないだろ」

「あ、やっぱりそこまでわかってくれるんだ」

「また2人きりの世界に入ったね。アイリスとエドワードはいつもこうなんだから」

「こういうところが、エドワードのことを唯一無二だとアイリスは思っているんじゃないか?」

「うるさいわね……ちゃんと国の為に働くなら、彼が優秀なことくらい、わたくしもわかっているわ」


 外野がうるさいが、アイリスの言いたいこともやりたいことも理解できた。ゲーム内ではそんなことしていなかったが……俺の影響なのかな?


「アイリス、詳しく説明してくれ」

「あ、すいません……」


 モーリスに言われて、アイリスは少し恥ずかしそうにしながらもこちらをちらっと見てから微笑んだ。


「まず、アヴァロニア王国は強大な国で、真正面からぶつかったら技術でも数でも圧倒されることは間違いありません」

「アヴァロニアは魔導大国として名を馳せている侵略国家……戦争の技術も、魔法の技術もリュカオン神聖王国とは大違いだ。特に……奴らの持っている魔法防護壁は、部隊単位で運用される遠距離からの魔法を無力化するもの。強制的に近接戦に持ち込むことができるから、数で敵を圧倒することができる」


 これがアヴァロニアの最も厄介な点だ。

 数の差は計略、戦術、戦略でひっくり返せる可能性はあるかもしれないが……魔法が一切効かないというのは大変厄介だ。こっちの遠距離攻撃は通らないのに、向こうの遠距離攻撃は届くなんて理不尽、歩兵による戦いが当たり前のこの時代じゃありえないだろ。


「天運が味方してくれれば、何の用意も無しに侵略には耐えることができるかもしれないが……何度も耐えるのは不可能だ」

「だから……敵の先遣隊を叩いて、こっちから少数で攻め込んで相手の王都を潰す! これが、現状考えられる最善策、かな」


 相手は想像以上にでかい国だ。コートス王国との戦争でしたように、カウンター特化で叩き潰すなんてことはできない。何故ならば、先遣隊の時点でこちらを上回る数がやってくるから。先遣隊を相手に消耗したところで、一気に本体に押しつぶされては勝てるものだって勝てない。


「幸い、敵の主戦場は陸地……それも平原でしか使えない騎馬兵だ。先遣隊を海岸か山に誘い込んで潰し、向こうの陸地でなんとか騎馬隊を潰すって感じになるな」


 本当なら海戦で敵の本隊を迎え撃ちたいのだが……満足に海戦ができるほどの造船技術はこちらにない。ただし、向こうだって艦隊戦ができるような造船技術がないことは知っているので、歩兵によるガチンコ勝負になると思う。


「……なんか、2人が揃って作戦を立てていると、心強いね」

「俺はアイリスのことを信頼している。軍にいる時は、ただの兵士として扱ってくれ」

「モーリス様……はい!」


 仕方ない……2年かけて築いた人脈を活かすとするかな。


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