キャパに限界
3月のライブのチケットが出来たのは12月のライブ開催中。
その日のうちに1000枚近くのチケットが売れた。
年が明けて1月になり、1月の2週目のあたりにはもう2000枚のチケットは全て売り切れた。
チケットは2000枚以上売ってしまうとライブハウスに入りきれないくらいの人が集まってしまうので入場規制をかけてしまう必要が出てくる。
チケットを購入しているのに入場規制で入れないお客さんが出てしまうのだ。
そのような詐欺みたいな事は出来ない。
2000枚のチケットが売り切れた後にも、チケットが欲しいと何度も問い合わせがあった。
吉沢さんに相談した結果、このライブハウスでやるのは限界ではないかと言われた。
もっと大きな場所でやるか、2日間以上跨いで同じライブをやるとか、会場を分けて『ツアー』のようにしてしまうか、様々な提案があった。
開催日を分けると確かにお客さんは分散するだろう。
だけど演劇などではなく、その場の雰囲気で演奏曲やMCが変わる『ライブ』をしているのだ。
初日と2日目の内容を同じにする事なんて到底出来そうにない。
たとえ無理矢理2日間に分けたとしても、その2日間両方に行きたいお客さんには体力的に負担をかけてしまう事になる。
悩む事が多すぎて僕達には簡単には決めれない。
さらに大きな問題は演奏する自分達の体力の問題だ。
ライブにはかなりの体力を使う。
1日だけのライブでも終わる頃には体力の限界が近い。
身体中のエネルギーを全部出し切ってしまった感覚になり、疲れ果てて次の日なんて一日中ダラダラ過ごしている事ばかりだ。
2日続けてやるなら体力作りもしなければいけない。
体力なんてすぐにつく物でもなく、日頃の習慣から基礎体力を上げていかなければいけないので毎日継続のトレーニングが必要となり時間がかかる。
僕以外は高校生。学校に通いながら体力作りを習慣にするのも大変だ。
そして僕は仕事の研修があるので6ヶ月はライブが出来ない事は決まっている。
総合的に考えた結果、次回のライブ予定は日程未定としておいて、後日告知を出す事にした。
僕の研修が終わった頃に合わせてポスターやフライヤーを作り、宣伝活動を頑張ろうと決めた。
しばらくまたライブがない状態になる。
中学生だから卒業や進学、就職などで日常の変化が多い。
活動休止が多くなるのも仕方がない事だとはわかっているがせっかく勢いに乗っている時期なので少し寂しい。
このまま復帰できなかったらどうしよう。
そんな不安がないわけでもない。
全員がまだ子供なのだ。
いつどうなるのかはわからない。
そんな不安もよぎる中、休止せざるを得ない理由が多々あるので仕方がない。
絶対にまたライブをしようと誓い合いながら、1998年3月のライブを迎えた。
3月のライブでは、開場と同時に1000人ほどのお客さんが流れ込み会場を埋め尽くす。
会場内はフロアもバーエリアも人で溢れて密度も高く、移動する事すら困難だ。
人に溢れたライブハウスを見れば見るほど、キャパの限界を痛感する。
ライブはいつも通り大盛況。
多くのお客さんが熱狂し大歓声が絶えず続く。
キミと見たライブの景色は1000人規模のキャパではもうキャパオーバーで持て余す力が暴走しているように感じた。
ライブ中に次回ライブ予定は未定である事を公表した。
僕が就職して半年ほどの研修が始まるので音楽活動が出来ない事を告げた。
研修が終わり次第、次回ライブの告知すると宣言したのだ。
多くの人が僕の就職を祝う言葉をかけてくれたり応援してくれた。
僕はステージ上で早く次のライブを開催できるように頑張ると誓った。
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