聖属性魔法
迫り来る白金のオーラは周囲の空間を歪め地面すらえぐり、もう既に満身創痍であったAランク傭兵アーウェルに向かっていた。
先程のフェニックスオーラを付与した攻撃の時と比べてはそこまで速さはないだがあまり
にも攻撃範囲が広すぎるのだ...
これではいくら速さに自信のあるアーウェルといえど逃げ切ることは不可能だった
例えギリギリのところで避けきれたとしてもその後にはキズどころかあの様子ではほとんど魔力を消耗していないウィリアムが後ろに立っている...
もはやアーウェルにはここから奇跡的に挽回できるような、そんな勝てる方策は全く思い付かなかった
「あ...あ...あああああ!!!」
アーウェルはヤケクソになって低位の光魔法
ライトボールを放つが焼け石に水...
むしろいま放ったライトボールが白金のオーラに飲み込まれるとその白金のオーラが増大したようにも見えた
もうどうしようもない
アーウェルはただ立ち尽くすしかなかった...
そしてアーウェルはここで2つの選択を迫られていたのだった...
放たれた魔力が離散した魔力とそれにより発生した粉塵で今現時点ではアーウェルなどうなったのかわからない
ただこの攻撃を食らってはもう奴は戦うことは不可能だろう
そう考えたゆえウィリアムは戦闘体勢を解き警戒すらも解き一息ついてしまった
奴にもう勝ち目など万に一つもないと
そう...
ウィリアムは油断してしまったのだ
「まだ終わってねえぇぇぇ!!」
もう勝機はなかったアーウェルだったが諦めなかった。
戦意を失うと予測していたウィリアムの考えとは逆に、ウィリアムの繰り出した聖属性魔法の広範囲攻撃に当たって死ぬ可能性もあっただろうにアーウェルは戦意を失い敗けを認めるのではなく、一か八かの賭けにでたのだ
そして最初の賭けには勝った、広範囲攻撃に当たることなくこれを避け
いつの間にかウィリアムの側面を突き
ウィリアムを殺せるあと一歩のところまで来ていた
ウィリアムは一瞬驚きはしたが
そのあとには嬉しそうに笑顔を見せるのであった
「その程度の実力ではこの俺に遠く及ばない、だが決して諦めないその志は見事!」
ウィリアムはそう言うと次の瞬間間一髪のところでアーウェルの剣避けることに成功した
ただ肝心なところはそこではない
ウィリアムは神速の速さ回避技を繰り出した
ほんの一瞬のうちでもあるがそれを見てアーウェルは驚く顔を見せていた
アーウェルは驚いてしまった
そしてそこに隙が生じてしまった
斬....!
アーウェルはただの一つも、ウィリアムにその剣を当てることはできず、キズを負わせることもできず、
あっけなく背中を切られてしまった
「貴様...その回避技...俺の技をこうも簡単に...!」
そして肝心なところはそう、
ウィリアムはアーウェルが最初に使った回避技を使いアーウェルを倒したのだ
「お前は最初こう思っただろう
俺は剛剣使い、そしてお前は俊剣使い、
剛剣使いは威力は高いがスピードが遅い
速さで攻めて最高速の回避技を決めれば俺を倒せる、だが一つ言ってなかった」
ウィリアムは剣を地面に突き刺しこう言った
「俺は剛剣使いであるのと同時に俊剣使いあでもあるんだ」
「なん...だと...!」
この大陸において、魔戦士の戦闘体系はおおまかに分ければ2つに別れる
一つは剛剣、一撃の威力を重視した剣であるが一撃の威力を重視する反面スピードに劣る。それに対して俊剣は一撃のスピードを重視した剣であるが一撃のスピードを重視する反面威力が劣る。
おのおの魔戦士は剛剣か俊剣このどちらかを使い両方を使いこなすことなど困難に等しい。だがときにはこの剛剣、俊剣この両方を使いこなすものが現れるのだ。
大陸の英雄と呼ばれたレムルス・ラスタフしかり、騎士団長として名声高いシリウス・カイザーしかり、そしてこの男ウィリアム・ブラックスもまた剛剣と俊剣この両方を使いこなす数少ないものの一人なのだ
「ハハッ...なるほどなぁ...剛剣と俊剣両方を使いこなすのなら勝てるはずもないか...」
「まあ確かに今のお前は俺には到底及ばない、だがな...」
ウィリアムは倒れるアーウェルに対してしゃがみこんでこう伝える
「お前の最後の攻撃、あれには俺も肝を冷やした...俺はお前がもう諦めて攻撃してこないものだと思っていた。
だがお前はそうじゃなかった、どんなに勝ち目のない状況であったとしても
お前は決して諦めなかった
やはり、どんな状況になろうとも決して諦めない敵が一番怖いものさ」
「けど、結局は勝てなかったけどなぁ...
所詮Sランク傭兵になる俺の夢も...
叶わないだろうな...」
「そうだろうな」
!?
アーウェル自分で言っておいてウィリアムの発言に少しだけだが驚いたが、
それはそうか...と自分で納得する
だが...
「お前が夢を叶えるなんて誰も信じていない
信用していないんだ、そんな中で、
お前までもが自分の夢を信じられないんなら
一体誰がお前の夢を信じてくれるんだ?」
「そ、それは...」
ウィリアムはしゃがんだ状態からさらに地面に座りこむ
「俺にも夢がある。
でも...その夢はとても大きくて、そして困難で、例え俺が自分の夢を語っても誰も信じちゃくれない。誰も俺の夢を信用なんてしてくれないんだ。
だからこそ...
自分だけは、自分の夢を信じるんだ
夢が叶うか叶わないか、そんなことはどうでもいいんだ、根拠だってなくていい」
ウィリアムはゆっくりと立ち上がり持っていた剣を鞘に納める、ゆっくりと。
「自分の夢を信じるんだ
自分の夢を信じる人間が夢を叶えると
俺はそう信じている。
だからな...」
「自分を信じろ、
そして必ず夢を叶えるんだ
お前にならできるさ」
そういうとウィリアムは屋敷のほうへ戻って行った
その場でただ倒れなにもすることのできないアーウェルだったが彼の目からウィリアムという存在は大きくもあり恐ろしくあるが
なによりも眩しく、その背中は輝いて見えてしまった
「はっ...全く...負けてみじめなこの俺に...
あんなこと言われたら...
諦められねぇじゃねぇか、よ...」
アーウェルは次第に意識を失っていった
だがその心の中にある闘志は
消えるどころか、さらにより大きく
燃え上がるのであった
「大技は使うなと言っただろうに...」
と、そういいながら領主の屋敷の玄関からでてきたリースとその後ろからカラムや辺境伯、そして嫌な顔をしていたドレアスが一同が俺を迎えにしたまで降りてきてくれた
「ウィリアム殿、この度は客人の身でありながら我が屋敷に襲撃した賊を討伐し、それどころかこれほどの見事な勝負を見せていただけるとは、誠に感謝申し上げます...」
「いやいや、それほどでもありません。
ですが今は私よりも彼の治療をお願いします」
俺は後ろを振り返り、その視線の先には、背中を切られ倒れるアーウェルがいる。
確かに倒れてはいるが死んではいない
だが
「ウィリアム殿彼は生きておるのですか?」
とはためからはそう見えるくらい
アーウェルの体は傷つきボロボロだ
死んでいるようにもみえるだろう
「まあ確かに体中ボロボロではありますが
大きな傷は背中の切り傷のみ、それも致命傷にはならない程度で斬ったので死にはしません、ですが治療が遅れれば出血多量では死ぬ恐れがあるので急ぎ治療をお願いします」
「わかった...
おい、今すぐこの者を屋敷に運び治療せよ」
と側にいた使用人たちが三人ほどでてきて
倒れていたアーウェルを担ぎ彼らは屋敷に中に入っていったが、その最中に隙を見て
カラムの方に目線を向ける
そうするとカラムは他の者にばれないようにゆっくり首を横にふり否定する
否定...ということは
俺とアーウェルが戦ってる間に唯一生き残った賊、見た感じ剣も魔法もかなり使いこなす上級戦士のあいつだ
だが逃げたとあっては今はどうしようもない
が、それでも一応は聞いておくか
「辺境伯様、あたりを見るに、最後まで立っていた賊がいないのですが、そいつはどこに行ったかわかりますか?」
と俺が聞くと
辺境伯はニコニコと笑顔でこう答える
「ウィリアム殿安心なされよ
奴は逃げ仰せたが私の配下が彼を捕まえることに成功しました!
しかし私の配下の不手際により捕らえるさえに殺してしまったようなのです...
なにぶん奴は実力者で手加減ができなかったとか、ウィリアム殿、申し訳ございません」
と笑顔から悲しみの顔、そして申し訳なさそうな顔えとコロコロ変えながら
俺に謝罪をしてきた。だが今度は俺はカラムを直接見ることはなく視界だけで全体を見る
そしてカラムはまたもやゆっくりと首を振っていた。
まさか...とは思ったがカラムはある魔法を得得しておりその魔法により辺境伯が間違っている...
もしくは嘘をついてるといる可能性があるのだ。
信じたくはないが
またあとでカラムから話を聞いてみよう
と俺は今の思考を頭の片隅に追いやる
「そうでしたか...
死んでしまったとあれば仕方がありません」
「ええ、そして私はその間に帝国と聖国、それぞれの密偵に連絡し情報を得ました、彼らは金でなびく我らにとって都合が良いもの達であり嘘や偽の情報を伝えることはありません。なので彼らの情報は信じるに値します、そして彼らの情報では、二大国双方とも今回の首謀者ではありませんでした、
今回の襲撃の首謀者、それは...」
辺境伯は深刻な顔でこう言い放った
「魔帝国です...」
魔帝国!?
と、最初は驚いたが
辺境伯が少しでも嘘をついている可能性がある以上、今の言葉も真実かどうかはわからない、そのことをふまえ俺は盲信するのではなく一旦その情報を頭の片隅に留めておき、
「魔帝国ですか...
では奴らに関しての調査することにしましょう、構わないですか?」
そういうと辺境伯の笑顔が戻り
「もちろん!むしろこちらからお願いしたいところですのでどうかよろしくお願いいたします」
とニコニコとした表情でそういった。
なぜ魔帝国とわかったのか、その理由は一体なんなのか、それらを聞いてしまいたくなるがまずはカラム、リースと話をしないといけない。だからまずは一旦この場を立ち去り
まずは宿でも取ってから作戦会議をするべきだろう。
だがそれ以外にも俺にはやるべきことがあったのを忘れていた。
「あともう一つ構わないですか?」
「ええ、なんなりと」
「公爵様から依頼の仕事を用意してもらっていると聞いたのですが、話は伝わっておりますか?」
「あぁ...!
そうでした!申し訳ありません、襲撃者のことですっかり忘れていました
もちろん話は伺っており依頼も用意しております。ですが一つだけよろしいですか?」
「なんでしょうか?」
と相変わらず笑顔で接してくる辺境伯
「公爵様は有能なお方、そして貴族派は王国においても大派閥でありその資金力すら王国一でありましょう。そんな貴族派の援助を得たウィリアム殿が何故仕事などを求めているのでしょうか?」
仕事を探してるのは金が欲しいからだというのに、至極当然のことを何故か聞いてきたので俺は一瞬頭に疑問が浮かんだが
気にしないことにした
「もちろん任務における資金を集めるためですよ、今回の任務における資金は一切なくこちらで資金を集めなければならないのです」
と俺はそう返したが
ニコニコの笑顔が消え
辺境伯はかなり驚いていた
「資金が一切支給されなかったとそう申すのですか!?」
「はい、そうですが...」
「そうか...あの公爵が...」
と真顔に戻った辺境伯であったが一瞬、ほんの一瞬だけにやりと笑ったような、
俺にはそんな気がした
「辺境伯!それよりも仕事の斡旋を頼んでるんだ、なにかないのか?」
と突然話を遮るようにリースが話に入ってくる
「ええ、これはすいません、
ご安心を仕事ならいくらでもありますが
ウィリアム殿達に頼むべきなのは2つ、
一つは冒険者ギルドでの高難易度依頼である大型魔獣の討伐、こちらは難易度が高くこれを達成できるものがおらぬゆえウィリアム殿にお任せしたい」
傭兵ギルドも存在するがこの国には冒険者ギルドも存在する
こちらは聖国発祥の簡単に言えば人材派遣を主にした組織で、戦闘系の人間に魔獣の討伐をしてもらったり、それ以外であれば薬草採集や運搬、そして1日の単発の作業員の仕事があったりもする。
ちなみに帝国には傭兵ギルドのみ
聖国には冒険者ギルドのみ
だがエラリアル王国には
この2つのギルドが両方存在しておりそれぞれの組織が各々の役割を果たしている
「確かに、高ランクの者はなかなかいないですからね」
冒険者ギルドにも傭兵ギルドと同じようにランク制度を採用しており
EからSまでのランク付けをギルド員にしており、まあランクが高くなるように人材は戦闘でより強く、そして有能な人材であると考えればわかりやすい
だがもちろんのこと高難易度の依頼もありそれをこなせる人材はそう多くはないのだ
「わかりました、その依頼引き受けましょう
そしてもう一つの仕事は?」
「もう一つは、この国で戦う兵士の徴兵と訓練をお願いしたいのです」
「徴兵と訓練ですか...」
確かにさきほど見た兵士達は賊を倒すぐらいならなんとかできるだろうが
それでも少し頼りないのが正直な感想だ、
それと...
「失礼かとは思いますが辺境伯様は今いかほど兵をお持ちなのですか?」
ハハハ...と辺境伯は苦笑いする
「お恥ずかしい限りで、今現在は城壁や町の治安を維持する守備隊とこの屋敷にいる兵、合わせてたった200しかおらぬのです...」
200...!?
一領主の兵士数ではあまりにも少なすぎる
この規模の領主であれば最低でも1000はいるはずだ
だがそれで一つわかったこともある
「リース!
お前はさきほど辺境伯様の裏切りを疑っていたが、たった200の兵で謀反を起こし、独立することは可能か?」
と後ろのリースに声をかける
「できないことはないが大きなかけになるだろう、俺だったそんな博打を打って裏切ることなどしないな、少なくとも時期尚早だ」
俺はそれに対して
うなずいて返すとまた辺境伯に向かい、
「その通り、200で謀反など無理でしょう
これで辺境伯様に反意がないことが明らかになりました。なので徴兵と訓練の依頼も受けさせてもらいます。
なら各々得意分野で、俺が魔獣討伐、リースとカラムが徴兵と訓練で...」
「いや...」
とリースが待ったをかける
「ウィリアム、お前は魔獣討伐の経験が豊富だが俺はお前ほど魔獣と戦っていない
この先魔帝国を目指す上でなにが起きるかわからない、そのために俺も対人だけでなく
対魔獣の経験をもっと積んでおきたいんだ。
だから、俺は一人で魔獣討伐、ウィリアムとカラムで徴兵と訓練をしてほいしんだが構わないか?」
「ああ...お前がそういうならそれで構わない、カラムは?」
「うん、私もそれで大丈夫」
とカラムもこう言ってくれた。
「ならリース殿は冒険者ギルドに向かってください、依頼を用意してあるでしょうからこちらから通達しておきます」
とリースに対し話すと今度は俺たち二人のほうを向く
「ウィリアム殿、カラム殿は翌日この屋敷の隣にある訓練所までお越しください」
「翌日ですか?」
「はい、なにぶん休暇をとっている兵士や夜の警備に当たっているものもおります、そしてせっかくなのでより多くの兵士に訓練を受けさせたいので少し時間をもらいます。
あと徴兵に関してはそのときにお話させてもらいます。よろしいですか?」
「わかりました、それで構いません。
リース!」
と、話を区切ると俺はリースに話しかける
「そっちは任せるぞ」
そういうとリースは少しにやけた顔で頷いて答えた。
「それでは辺境伯様、これで失礼します」
「はい、また明日、お待ちしております」
と辺境伯は深々と一礼をし
俺とカラムを見送った。
さて...
俺は辺境伯は白だと思っていたのだが
リースだけでなくカラムまで疑いの目を向けていた。俺は戦闘面で戦い方や技術なんかにはめっぽう自信はあるが、
こういう人を観察したり嘘をついているかいないか判断したり、逆に嘘をついたりすることが苦手だ。
だから俺よりかは二人のほうが人を見る目はあると俺は思っている。
そんな二人が怪しんでいる以上、恐らくなにかあるのかも知れない
だが今はそれよりも、この場から早く離れてカラムに事情を聞く必要があるだろう
俺とカラムは足早に辺境伯の屋敷を去り
街中へ赴くことにした。
ついでに三人で泊まれる安めの宿もさがさないとな。
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