第210話 笑み
王立セントラル魔法科学研究院の第一演習場、今ここに魔法学校の教師たち、学生、さらには王国魔導士団や大小さまざまな魔法ギルドの代表者が集っていた。
「おいおい? スピカの応援をできるってのはありがたいんだがよぉ……」
「この人は一体……、さすがに注目され過ぎなんじゃないかな?」
学生の集まる席の最前列を陣取ったベラトリクスとサイサリー。彼らは演習場に集まった人の多さに驚きを隠せないでいた。
「一般の入試、編入試験と違って、飛び入りは外部の目が入ります。通常とは異なる方法での入試――、それを実施するに値し、入学に値する人間なのか、厳しく評価されるんです。もっとも――、前者はすでにクリアしているがゆえの舞台なのでしょうけど」
2人の疑問に答えたのは同級生であり、研究員を志望するアルヘナ・ネロス。
彼の家系は王国を代表する魔法ギルド「やどりき」の幹部を代々務めており、こうした事情に人一倍詳しいようだ。
「ひえー、おエラいさんの前で戦わされるのか? スピカったら、ガチガチになってやしないだろうな?」
「あの子ってそういうタイプじゃないでしょ? それにこれって――、実力を示せば一気に名が売れるわけよね? ある意味、羨ましいかも……」
「……なんだっていい。とにかく挑戦するなら絶対に受かってもらわないと。その上で――、
アトリア、シャウラ、ゼフィラの3人も最前列に集まっていた。アトリアは眉間に皺を寄せ、じっと闘技場を見つめている。
「アトリア、いつまでその顔してるのよ? 皺、跡になって残るわよ?」
「……私、そんな変な顔してる?」
アトリアは、人差し指で眉間をさすりながら首を捻っていた。
「してるしてる! ずっと仏頂面! アトリアってクールなようで案外顔に出るよなー?」
ゼフィラはわざと眉間に皺を寄せて、「こんな顔!」と言わんばかりにアトリアの方を向いて見せていた。その横でシャウラは半笑いの表情を浮かべている。
「……人を笑いものにしないでくれる? 仏頂面にもなるわよ、まったく」
◇◇◇
演習場の一角、学生の集まった席が沸き立った。闘技場にスピカとその対戦相手、リリィが姿を見せたからだ。
両者は手の届く距離まで歩み寄り、挨拶を交わす。スピカは半期の間、セントラルに在籍していたが、リリィと顔を合わせるのは初めてだった。
「スピカ・コン・トレイルです! 本日はよろしくお願いしますです!」
スピカはいつも通り、重しでも付いていると思うほどの勢いで頭を下げ、最敬礼のお辞儀をした。一方のリリィはそんなスピカの姿を、口元を緩めて見下ろしている。
「ウチはリリィ・アンバー。お初だねー、よろよろー」
頭を上げたスピカとリリィの視線が交差する。自信に満ちた満面の笑みを浮かべるスピカと不敵な笑みを絶やさないリリィ。同じ笑顔でありながら対照的なふたりの戦いが幕を開けようとしていた。
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