第158話 手の内
「――『起源の書』を渡してもらいたいのです」
「起源の書」、この言葉に学長のアウル、シモン、アフォガードは息を呑んだ。従者の青年だけがそれの意味するものを理解できていないのか、周囲の顔を窺いながら目を白黒させている。
「アレクシア最大にして最高の魔法研究機関にあたるセントラル、ここに起源の書があることは調べがついています。こんな状況、一秒でも早く終わらせたいでしょう? 在処まで案内してもらえませんか?」
学生たち同様、アフォガードも今ここで魔法が使えなくなっていることに気付いていた。
『狙いは最初から起源の書……。
セントラルは王立の魔法研究機関。そこの学長や権威ある者たちは当然、国の要職と言い換えることもできる。普段なら彼らの行動はそれなりの警備を伴い、安全が確保されている。
ただ、強いてあげれば学校内だけはその限りではなかった。それはセントラル魔法科学研究院そのものが本来なら厳重に守られた場所であるがゆえ。
ある意味、盲点といえる学内で代表者が集まるタイミングを敵は狙ってきたようだ。さらに学生を人質にとれば交渉を有利に進められることも計算の内だったのろう。
「現学長先生や学年主任のお二方が戦闘に不向きな魔法使いであることもこちらは把握しております。魔法界でさぞ権威あるあなた方が揃いも揃って、武力に屈するとは嘆かわしいことですね?」
仮面の男は笑いを押し殺すようにしながらそう言った。
「嘆かわしい、のは貴様の頭の方だ。なぜここに私がいるかは考えなかったのか?」
そう声を発したのは、シモンの従者を務める青年だった。
「普段はシモン様の助手を務めているが――、今ここにいるのは万が一の護衛も仰せつかっているからだ」
彼は相手が武器を手にしているにもかかわらず、臆せず前へと歩み出た。どうやら戦いに特化した魔法の使い手のようだ。
「下がっていなさい、『ロウレル』。どうやらこの者たちは魔法使いを無力化する術を予め準備していたようだ」
従者の青年ロウレルにそう言ったのは主であるシモン。彼もまた、ここでは魔法が使えないことに気付いているようだ。
「さすが、先生方は聡明でいらっしゃる。それに引きかえ……、血気盛んな助手のお方は交渉の邪魔になりそうですね?」
仮面の男が手で合図をすると後ろに控えていた男2人がロウレルを挟むようにして両脇に立った。
「抵抗しなければ殺しはしませんよ? ただ――、邪魔になりそうな方はこの場からご退場願いましょうか? 時間の無駄ですから」
それぞれの男に片方ずつ手を掴まれどこかへ連れていかれるロウレル。抵抗を試みるが、学長たちに向けられた刃を目にし、それもすぐにやめてしまった。
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