第154話 沈黙

 屋内演習場の最奥、壁際に集められた学生たち。魔法用のスティックやアトリアの木剣は回収され、どこかへ持っていかれてしまった。


 敵側のグループは、学生を囲むようにして3人の男が目を光らせている。いくつかある出入り口には各2名ずつ人が配置されており、正面のもっとも広い出口には5人ほどの男がおり、リーダー格と思われる傷の男と――、そこにサイサリーの姿もあった。



 アトリアはひとり、思考を巡らせていた。仲間が近くにいても見張りがいる以上、迂闊に言葉を交わすことはできない。彼女はまず今の状況を自分なりに整理することに務めた。


『……敵の狙いは――、不明。 さっきまでいた先生方は――、私たちと同じ状況にあると考えるのが自然か……。魔法が使えないのは……、わからない。ダメ、わからないことばっかり……』



 シャウラとゼフィラは隣り合って座り、見張りの人間と目を合わせないよう注意しながら敵の動きを追っている。


『舐められたものね? 縛られもしないし、口を塞がれるわけでもない……。サイサリーのおかげなのかしら? とにかく、舐められてる間に策を考えないと――』


 シャウラは膝に肘をたて、両手のひらで鼻から口のあたりを覆っていた。傍から見て特におかしな姿ではないが、口の動きを気取られないようにしながらとても小さな声でゼフィラに話しかけている。


「魔法が使えない理由――、わからないわよね?」


 ――トン。


「ゼフィラはなにか策がある?」


 ――トントン。


 ゼフィラは片手をシャウラの足にのせ、小刻みに指を動かしている。シャウラの問い掛けに対して「Yes」なら一度、「No」なら二度、指でノックしているようだ。


『このまんま魔法が使えず、もし戦うことなったらオレの拳闘がちょっとは活かせそうだけど……。あと戦力になるとしたらベラトリクス、得物さえあればアトリアもやれるよなー』


 ベラトリクスは落ち着いているのか、単に疲れただけなのか、不気味なほど静かに俯いて座っている。傍からはその表情を窺うことはできない。

 しかし、校内でおそらくもっともサイサリーと仲の良かった彼がただ意気消沈しているだけとも思えなかった。




◇◇◇




 演習場の観覧席奥、魔法学校を急襲した者たちはここにも数人押し掛けており、そこに4人の大人を捕えていた。


 捕まっているのは、セントラル学長のアウル、副学長のシモンと彼にいつも付き添っている従者の青年、そして3回生学年主任のアフォガード。

 彼らもさすがに魔法学校内は安全とみていたのか、周囲の警備は甘かったようだ。剣を突き付けられ、動けない状態となっている。


「集まっていた学生たちもここに拘束してあります。あなた方との交渉に一番使える手札でしょうから」


 話している男は、目の部分だけを黒い仮面で隠している。露出している口元と声を聞く限りだとそれほど歳のいった人間ではなさそうだ。


「時間は有限です。お互い無駄を省いて効率的にいきましょう? こちらの目的は1つ――、『起源の書』を渡してもらいたいのです」

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