第111話 キリエの頼み
「――わっちらに協力してくれない?」
キリエさんの「ら」は、すなわちまもの。まものに協力するとは、遺跡で戦っている人たち――、人間の敵になれ、という意味なのか?
「あんまりここに長居したくないでしょ? 歩きながら話そうか? わっちと一緒にいる限り、こいつらは襲って来ないから安心してねん」
彼はそういうとまものの群れへと向かって歩いていった。私はおいていかれないよう慌てて小走りでその背中を追う。まものが私たちを避けるように道を開けていく。
「ユタっちの疑問に1つひとつ答えてると、カビ? 苔――、でも生えてきそうだからねん。今は最低限――、わっちの話を聞く気になりそうなことだけ教えてあげるよ」
背中越しに彼の話を聞いていると、若い女性と話していると勘違いしてしまう。ここまで見た目と声にギャップのある人は見たことがない。そもそも「人」なのかすら怪しいところだが――。
「わっちは一応、『人間」。少し――っていうか、いろいろと訳ありだけど、君らの言うところの『まもの』じゃないよ」
心の声が聞こえたのか、彼が最初に解いてくれた疑問は人間であってまものではない、ということ。そう聞くと今度は「なぜこんなところに?」と新たな疑問が湧いてくるわけだが、今はそれを問うている暇はなさそうだ。
「ユタっちがここに降って来た理由は、
避難経路?
そう言われて納得できるところとそうでないところがある。
日本で育った頃、小学校の避難訓練の時に窓から避難用すべり台で滑り降りた経験があった。たしかにここへ落ちてきた感覚はあれに近いものだ。「避難経路」と言われると妙に納得できてしまう。
しかし、それならなぜ上から誰も追って来ないのだろうか?
大声で叫んでも上から反応はなく、まるで私だけが通れる道だったのか、と錯覚してしまうほどだ。
「これはもちろん、あいつらが人間から避難するための道。だからちょっとした細工がされてんの。本来なら人間には通れない」
「――えっ?」
本来は通れない?
ならば、どうして私は通れた――、というか落下したのだろう?
「ユタっちはねー、人間の中でもかなり特殊みたい。魔力が常に解放状態にあってね。きっと精神エネルギーが桁外れなんだろうねー」
魔力云々はよくわからない。だが、精神エネルギーの話は理解できる。私が常時、「言語の魔法」を使っているとラナさんが教えてくれた時、同時に説明してくれたからだ。
MP無限大だが、使える魔法は対話するための魔法のみ。それがこの世界での私の「ステイタス」だ。
「普通の人間はさ、魔法を使うときしか魔力を解放しない。けど、ユタっちの場合、常に精神力と魔力の変換が行われてる。これって君らが言うところの『まもの』に近い状態なんだ。だから、あいつらしか通れないはずのところをユタっちは通過してしまったってところかなー」
キリエさんはその後、「不運だねー」と言ってけらけら笑い出した。
見た目と声のギャップといい、この独特の話し方といい、どうにもこの人といると持つべき緊張感が抜けてしまう。
「わっちがユタっちに頼みたいのはさ、上の連中にここを見つからないようしてほしいんだ。わっちはここで生きてる人間だからねん」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます