面接ログNo.2

「先程言った通り、録音を開始する。私を面接官と呼ぶように、君は本名を伏せて、志願した理由と経緯を話してほしい」

「分かりました。避難中に、御社の社員が所持していたスマホからラジオが聴こえました。家族の反対を押し切り、もう一度夢を叶えたくて志願いたしました」

「夢か……書いてあるシンガーソングライターの? 随分飛躍したな。避難した先で再スタートをすれば叶えられる、そっちの方が安全じゃないのか?」

「いけませんか? あのロボットのせいで何もかも壊されたんです」

「命に関わるんだ。前線だぞ? 命を落とす、もしくは敵を――」

「だからなんでしょう、私、この手であのロボットたちを潰さないと気が済みません。尊敬していた方々のためにも戦いたいのです」

「あーすまない、無粋なことを訊いた。覚悟ができているのはよく分かった。だがこれから行う体力テスト、バイオ適合テストをクリアしなければ入隊はできない」

「全く問題ありません。体力も、バイオという物もなんてことありません」

「そ、そうか、任務開始がいつになるかも分からない、短期間で厳しい訓練やAPR、武器の扱いについての講習が幾度もある。途中で無理だと思えばいつでも引き返すことができる。その場合は避難先を」

「面接官」

「どうした?」

「先程も申し上げたように、この手で潰したいのです。逃げるだなんて、あり得ません。それなら戦って死んだ方がマシです」

「あー、そうだった、な、えーと君から何か質問はあるか?」

「いいえ」

「本当にか?」

「はい」

「……次は体力テストとバイオ適合テストを行う。それまで待機していてくれ。録音を終了する」



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