第100話「悪役令嬢ト王都ノ騒乱」
俺様たちはテネブラエ王都までの道を急いでいる。道と言っても空を飛んでいるのだが、端から見たら空飛ぶデコトラってシュールだろうな。
「ねー、王都までどれくらいなの?」
【ご案内します。概算ですがあと1時間程度です】
「早いな、代わりに
「でもでも、あーしとじゃばっちのコアがキョーメー?してるのか減り方はむしろ少ないと思うんですけどー?(੭ ᐕ)) ?」
【ご案内します。ツインコアドライブモードは、フォルトゥナ様が仰ったようにDEを2つのコアで同時に反応させる事で増幅させて効率的にDEを使用する事ができます。
とはいえ減っていく事に変わりはありませんので適時補充をお願いいたします。前方にレッサーワイバーンの群れです】
何事も楽なだけで上手い話は無いって事か、【ガイドさん】の言う通り前方にレッサーワイバーンの群れが見える。ざっと数十匹はいるかな?ならば。
「おっしゃー!狩りの時間だー!」
「ヒャーハハハ!あーしらに見つかったのが運の尽きー!三三三三⁽⁽٩(๑˃̶͈̀ ᗨ ˂̶͈́)۶⁾⁾キャー」
俺様は群れに遠慮なく突っ込んでデコトラブレードで斬って
リアさんも思い切りハンドルをブン回して車体を回転させ、刃の竜巻のようになってレッサーワイバーンを薙ぎ払っていく。
「おいおい、レッサーとはいえワイバーンの群れをあんなにあっさりと。あの数なら熟練の冒険者でもかなり危ないぞ。どんなバケモンだよ」
「敵に回したく無い相手ですね、聞いた限りでは絶えずDEとやらの補充が必要という弱点はあるようですが」
フェルドとマクシミリアンがお茶を飲みながらわりと勝手な事を言いながら俺様達の狩りを見物している。
「化け物みたいに言わないで欲しい、ちょっと傷つくぞ。俺様は本来無害なデコトラだよ?」
「そんなわけのわからん戦闘力を見せておいて何を言うか。ほれ、茶が入ったぞ」
レイハが皆にお茶を入れてくれていた、ケイトさんは置いてきたからどうしようも無いんだよな。
本来遺跡調査ですぐ帰るはずだったのが、戦争になっている所に突っ込むのではどのような手段があろうと連れて行くわけにもいかなかったのだ。
「んー、さすがにケイトの入れてくれたお茶には負けるねー」
「じゃよなぁ、あの茶は中々だった」
本来なら口喧嘩くらいは起こってしまいそうな会話内容だが、なんとなくそんな雰囲気にはならなかった。
俺達はこれから帰れるかどうかわからない所へ行こうとしているのだから。
「で、リア。テネブラエ王都まで行ったらお主はどうするのじゃ?」
「えーっと、とりあえず王妃様見つけて、あとは流れで?」
ざっくりすぎる計画だった。あの王妃様なら城を枕に討ち死にすると言い出しても仕方ない気がする。説得は難しそうだがとにかくまずは会わないと。
「そういえば、『スサノオ』はどうなったんじゃ?あの時は優先順位もあったから仕方なかったが。本来ウチはあやつに用があったんじゃが」
【ご案内します。『個体名称:スサノオ』は数時間程未来に飛ばしました。多少の時間稼ぎにはなるかと思います】
あの場で得られたDEではそんなものか、実際俺様達も数十キロの距離を転移しただけだしな。いずれあいつとも決着を付けないといけないんだろうな。
「なぁレイハ、良い機会だから聞きたいんだけど、あの『スサノオ』って何なんだ?デコトラってのはわかるけど」
俺様もついでにいい機会なので以前からの疑問を聞いてみる事にした。
「あやつはな、かつての古代デコトラ文明のデコトラそのものじゃよ。
あの古エルフが作ったようなまがい物ではなく、ウチの国で封印されておったのが逃げ出した、と言うか逃がしたのがウチの兄じゃ」
そういえばそんなような事を出会った時に言ってたっけ。事情がありそうだと思っていたけど結構大事のようだ。
「『スサノオ』は1000年以上前、ウチの先祖がデコトラを依り代に神を宿らせて造り上げ、文字通り御神体のように崇めていたそうじゃ。どこにいるのかわからぬ神よりも現実に存在しておったあやつは多大な信仰を集めておった。
じゃがそれも
姉神っていうと、以前レイハが呼び出したアマテラスとかいう神様かな?神様材料に作ったって結構えげつない事してるな、『スサノオ』が利用されたとか言ってたのはこの事か。
「色々あって己の道に迷っておったウチの兄は魔王薬に手を出したのみならず、その時に生じた心の隙をつかれて乗っ取られてしもうた。後はだいたい想像つくじゃろう?あやつはデコトラに吸収されていずこかへと消えた」
レイハは沈痛な面持ちで語る、いくらなんでも自分の兄の事だしな、穏やかではいられないんだろう。
「じゃがこれは
じゃがデコトラがいずこかへと消えてこの国に実害が無いのであれば放っておこうという者まで出てな、我慢できなかったウチは奴を追って旅に出たのじゃ」
薄々感づいていた事ではあるけど、レイハは日之元国で王族のような立場なんだろうな、権力者達の臭い物に蓋をするかのような行動が我慢できなかったのはいかにも生真面目な彼女らしさだった。
「レイハ、これが終わったら今度は『スサノオ』を相手したげるから、ちょっとだけ待ってて」
「うむ、ウチも正直デコトラの力を侮っておった。どうか頼む」
レイハがそういうとリアはにっこり笑ってデコトラのアクセルを踏み込んだ。
程なくしてテネブラエの王都が見えると俺様達は絶句した、城から火の手が上がっているのだ。
それも一箇所や二箇所じゃない、王都自体があちこち火事のようになっている。
「どういう事!?ダルガニアってもうこんな所にまで来ているの?」
「落ち着けリア!よく見よ、軍隊同士が戦っておる様子は見られぬ、あれはおそらく内乱じゃな」
レイハが指差す先を見ると、確かに城の前では軍隊同士が戦っているという雰囲気ではなく民衆が城に攻め入っているような様子に見える。兵士も民衆を威嚇しているがいかんせん数が違いすぎる。
「内乱って、要は国の中で揉めてるって事ー?戦争始まってるのに?(੭ ᐕ)੭?」
「あの皇帝は中々の曲者のようでしたからね。戦争に先立ってこの国の民衆に呼びかけて決起させて政権転覆を目論んでいたとしても不思議はありません。場合によってはその動乱を利用してこの国を圧政から開放するという大義名分すら出てきますからね」
フォルトゥナの疑問に答えたわけではないだろうがマクシミリアンが推測を述べるけど、それが本当なら手段を選ばないにも程がある。
「なぁリア、テネブラエって軍隊弱そうだよな?」
「多分……、色々教わったけど結局自分たちは外交でバランサーになっている、みたいな自画自賛ばかりだったもの」
反乱起こした民衆を押し戻せず城に攻め込まれちゃってるくらいだもんなぁ。ちょっと待て、そんな状態だと王妃様大丈夫か!?
次回、第101話「悪役令嬢ト別離」
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