第3話 家族 Ⅰ

 貧民街ひんみんがいエルディナム地区オロハにある教会、グレイテスト。

 壁は薄いベニヤ板で作られていて、今にも崩れそうな建物に、神父のレオル・メイブリングだけが住んでいた。

 彼は昔、冒険者で荒くれ者だったが、子供が出来てから悔い改め、武神グラハムを信仰する教会へ入門──

 見習いとして精進する中で、どうしても酒をやめれず妻と離婚、その妻に親権を取られ今は天涯孤独の身の上であった。


 ある寒波の日。

 教会にノックの音が響く。

 レオルは舌打ちしながら「は~い」と答える。

 しかし、玄関からは何も音がしない。

 いぶかしんで建付けの悪いドアを開けると、地面に続く段差には白い布に包まれた赤子が置かれていた。

 レオルは辺りを見やるが人は歩いておらず、雪だけがしんしんと降っていた。

 捨て子か。

 布をあらためると、「ジーノ」とだけ書かれた紙片が挟まっていた。

 籠ごと抱きかかえると、赤子は急に泣き出した。

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