第2話 蠢動

「ざわめけ、夜叉鴉やしゃがらす

 ジーノのドスのきいた声に反応して羽織っていた黒のコートが風もないのにはためいた。

 そのコートから無数の鴉たちが蠢き飛び出した。

 鴉のくちばしから得体の知れない暗黒のナニカが這い出てきた。

 驚くラカティア二人。

「何だ、その魔法は」

「魔法ではない。召喚術だ──悪魔のな」

 引きった顔で逃げろと叫んだ長身の男。路地裏から逃げ出そうとするが、壁をすり抜け黒い悪魔は右手を伸ばし頭が禿げた男の背中を触る、途端、男の口から泡が吹き出し転倒する。

 相方の長身の男は叫びながら腰を抜かす。

 なんだ、なんだこりゃ、ああ……神よ……放尿失禁してだらしなく頭をもたげる。

「この悪魔は魂を欲しがる、お前のツレはもう屍だ」

「た、助けてくれ」頭を素早く上げ合掌して懇願する。

「誰に頼んでる。俺はラカティアだぞ? 神に頼め、さっきのように」

 相方の男の魂も引きずり出され絶命した。

 ──うちの縄張しまで魔薬を売るなんざ決して許されない──

 ジーノ・メイブリングはハンカチーフで右手の指輪を拭う。ため息を吐いてそこを去った。

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