脳内不倫アプリ♡【修正済】

三愛紫月

昔の友達

 結婚して11年目を迎えた。

 私事わたしこと鴨河原かもがわらみくるは、明日で40歳になると言うのにいまだ子宝に恵まれてはいない。


 って、当たり前だ!

 だって、私達夫婦はもう7年もレスなんだから!


 スーパーの惣菜コーナーの特大エビマヨを睨み付けながらいったい何を思ってるのだろう。

 馬鹿なのか、私。


「あれーー。みくちゃん」

「えっ?誰?」

「えっ?やだ。覚えてない?私、西本桜にしもとさくらだよ」


 西本……?

 頭の中で私の知っている西本を探す。

 しかし、頭の中に浮かんだのは、結婚して20キロ太り、出産してさらに10キロ太った西本桜だ。

 だけど目の前にいるのは、見た目は少しポッチャリしているけれど、肌が艶々して20代後半と間違われるのではないのかと思う人物。


「えっと?ちょっと誰だか……」

「嘘、何で。30キロ太った時、心配してくれたのみくちゃんだけだったじゃん」

「えっ?」


 西本はあの西本だったようだ。

 そのことに驚いて、私は言葉を失っていた。


「どうしたの?顎、はずれそうだよ」

「い、いやーー。なんか、めっちゃ綺麗になっててビックリしたといいますかぁーー」

「みくちゃん、しゃくれてない?」

「元からだよ」

「そんなわけないじゃん。ハハハ、面白すぎ」


 西本桜は、お腹を押さえながら笑う。

 私と彼女。

 5年も会わなければこんなにも変わるもの……なのか。

 正直、落胆していた。


「あからさまにガッカリしない!みくちゃん」

「えっ、あっ、出てた?ごめん、ごめん。気にしないで」



 見なかった事にして。

 特大エビマヨを持って、レジへと急いで向かった。


「待ってよ!みくちゃん。子供は?」

「まだだよ」

「もしかして、レス?」


 自分がすでに、一人子供がいるからとレジの前で、私にレスだと聞いてくるなんて!

 なんちゅう女だ!!


「ごめん、怒ってる?」

「いや、怒ってません」

「嘘だよ!怒ってるでしょ?」

「いえ、本当に怒ってません」

「目が開いてないし、しゃくれてるから!」


 西本桜が、若干引いている声を出した。

 私は、うっすらと目を開ける。


「教えたい事があるの。今から話せる?」

「えっ?」

「いいから、いいから。待ってるね」


 私の返事など聞かずに、彼女はお会計を精算する機械付近に立っていた。



 って、何?


「895円です。精算機、1番でお願いします」

「はい」


 私は、背中を丸めながら精算機にお金を投入した。

 じゃらじゃらと小銭を流し入れたけれど、100円足りない。


「出すよ!1000円崩したらすぐになくなっちゃうもんね」

「あ、ありがとう」


 何だか貸しを作った気がした。

 でも、やっぱり主婦なんだよね。  

 改めて、西本桜を見た。


「それで、話って?」

「近くの喫茶店に行かない?」

「う、うん」

「コーヒー奢る」

「いいよ、いいよ」

「いいから、ねっ」


 少し高級そうな喫茶店に入る。

 オドオドしている私とは違い、何の躊躇いもなく彼女は堂々としていてカッコいい。

 店員さんがやってくると、西本桜はホットコーヒーを2つ注文してくれた。


「で、さっきの質問だけど……。レスなの?」


 その質問に、私は首を上下に振った。


「やっぱりね」


 その話が終わったと同時に店員さんがホットコーヒーを2つ持ってきてくれる。


「それなら、うちと同じだね」


 店員さんがいなくなると西本桜は笑いながら話す。

    

「えっ……。さくちゃんの所は、ラブラブじゃないの?」

「なわけないじゃん。30キロ太って、子供も産んだから……。お前はもう女じゃないって言われたし」

「えっ!ひどっ」

「でもね、最近、レス直ったんだよ」


 私は、西本桜のことをさくちゃんと呼んでいる。

 レスが直ったことを嬉しそうに話しているけれど、それはダイエットに成功したからだ。



「みくちゃん、気になる?」

「気になるって?さくちゃんは、痩せて綺麗になったんだからレスじゃなくなったんでしょ?」

「そんなわけないじゃん」

「えっ?」

「痩せて綺麗になったって。私が娘を産んだ事実は変わらないし。痩せた私に、旦那は触れもしなかったから」

「それでどうやってレスを解消したの?」


 さくちゃんの言葉に前のめりになって私は聞いていた。

 だって、レスが直るなんて話が本当にあるなら教えて欲しい。

 だってレスが直ったら、望んでいた赤ちゃんも出来るかも知れないから。


「せっかくだし、みくちゃんにも教えてあげる」



 さくちゃんは、鞄からスマホを取り出す。

 スマホにレスが直る方法があるの?

 レスになって、私も検索はたくさんしたけれど。

 それでそこに載っていた色々な事も試したけれど、うまくはいかなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る