最初は、ちょっと変わった魔王勇者ラブコメだと思っていた。ところが読み進めていくと、これが恋愛の皮をかぶった「安全保障の物語」を軸に収束していくのである。
勇者は戦略兵器。魔王は抑止力。
村は避難民を抱える後方拠点。
王国は勇者を失い、代わりに魔王を守護者として受け入れる。
魔王が人狼で、礼儀正しく、白湯を飲み、畑が分かり、恋愛だけ妙に鈍い。
属性が、「上品などスケベさ」なのである。
性癖の配置がずるい。
豚たちのスケベ心をくすぐるのに、彼の倫理がちゃんと手綱を握っているため
ストーリーに推進力がある。一気に30話まで読んでしまう。
勇者ユーシアもいい。
戦いたくない勇者として、兵器であることを拒みながら、それでも兵器でありつづける。
勇者と魔王の愛。
愛とは、欲しい相手を自分の都合で奪わないことなのだと思わされる。
戦記としても、外交劇としても、ラブコメとしても極上の餌だった。
もちろん誉め言葉です。
降伏するしかない。
とてもよい読了感と敗北だった。