幕間「試練」

第18話「金銭トラブル」

勇者一行は、順調に王都まで行き、王城に到着、国王への謁見の準備も進んだが、いざ謁見が始まると、微妙な雰囲気が流れた。


国王が、ハルジークとカナリアを見るなり、一気に不快そうな顔をした。そして、

「何だね、そこの2人は」

と、嫌そうに言った。


他の4人は片膝をつき、頭を下げているが、この2人はそれをする素振りを全く見せないのである。


リュートは、

「彼らはハルジークとカナリアと言います。私の判断で、彼らの助力を要請しました」

と言った。

すると、国王は更に嫌な顔をした。


そこで、ハルジークとカナリアは挨拶をする。

「お初にお目にかかります、ハルジークと申します」

「カナリアです」

しかし、国王は挨拶を聞いてもガン無視した。


ここから、魔王討伐による報酬の話になった。

「では、報酬は金貨100枚で良いな?」

それを聞いたハルジークは、

「勇者様との契約で魔王討伐等依頼に関する契約にて、金貨5000枚を請求致しました。その分の上乗せもお願いいたします」

と言った。

それに対し、

「部外者が何を言うかと思えば、金の話か。我が国で信仰されている宗教の教義が何か知らんのか?"無償の愛"だぞ?それを知っての愚行か?」

と国王は言った。

が、ハルジークも怯むことなく言い返す。


「生憎とその説教は2回目でして。それに、私は特定の宗教を支持するようなことはしませんし、むしろ宗教などというどうでもいいものに縛られてはこの商売は成り立ちませんよ」

「では今まで一体何を信じて生きてきたのだ?そこのひ弱な女か?」

「何を、ですか。己の力以外に何がありましょうか?」

「傲慢だな」

「貴方程ではありませんがね」

「よく口の回るガキだ」

「それで何か都合の悪い事でも?」

「年長者に楯突くその態度が気に食わんのだ!何だねその態度は!?それが国王たる朕に対する態度か!?」

「私はただ労働に対する対価を求めているのみです。それに対して逆上しているのが貴方では?」

「うるさい!うるさいうるさい!!」

「どうなっても知りませんよ?」


ここまで来ると、国王も怒りが頂点に達していた。

怒りに任せ、玉座から乱暴に立ち上がった。




「いい加減にしろ!!何なんだ貴様は!この国の宗教を"どうてどうでもいい"などと言いおって!朕にとっては無知蒙昧の愚民共を騙して金を貪り取る材料にもなり得るものだ!それをあのような形容の仕方は到底許容出来ん!もう良い!お前たち2人は死刑だ!衛兵、今すぐこの場で切り捨てろ!!」




それを聞き、勇者たち4人は「ふざけるな!」等、口々に文句を言うが、直ぐに衛兵に剣を向けられ、黙り込んでしまった。

カナリアも、ハルジークも衛兵によって、首元に剣先が突きつけられていた。

にも関わらず、ハルジークもカナリアも、表情一つ変えなかった。


そして、国王がそれに気づいた頃、


「だから言ったじゃないですか」


ハルジークとカナリアの周りには、


「どうなっても知りませんよ?って」


鎧ごと溶かされた衛兵が、喚き声や呻き声をあげて倒れていた。


それを見た国王は、

「な、な、何なんだ貴様らは!!」

と震えた声で言った。




「では、改めてご紹介致しましょう。私は、キルナフ連邦帝国陸軍元帥、ハルジーク・オストゼルトと申します」


「そして私は、秘書のカナリア・フォン・ガラドラシアです」


そう2人が言った辺りで、謁見の間の扉が勢いよく開いた。


「私は第一王子のアルフォンソです。今までの話は陰ながら聞かせてもらいました。父上、良い加減民を見下すような政治は辞めるべきです!」


そう言い入ってきたのは、フェルメーロル王国の第一王子、アルフォンソ・フェルメーロルである。

しかし国王は、


「庶民なんぞに使う金などあるわけないだろう!!」


それを聞き、ハルジークは、

「この国も、もうじき滅ぶだろうな」

とボヤいた。そして、

「行くぞ、カナリア。命がある内に逃げるぞ」

と言い、すぐさま踵を返して謁見の間を去っていった。

カナリアも黙って着いていった。


それを見て、王子も謁見の間を出て行った。




ハルジークとカナリアの2人が城門を出ようとすると、王子が大きい袋を担ぎながら、2人に「おーい!」と呼びかけながら走ってきた。


「お、お二方、お待ちください!あなた方にお渡ししたい物があります!こちらをどうか、お受け取りください!」


そう言い王子が手渡してきたのは、袋一杯に詰められた金貨だった。


「この中には約1000枚の金貨が入っています。残り4000枚に関しては、後ほど私の方からお渡ししますので、もうしばらくお待ちください」

と王子が言うとハルジークは、

「ありがとうございます、王子殿下」

と返した。


そしてハルジークとカナリアは、とある場所に向かうために、金貨が入った袋を担ぎながら全速力で走った。




同じ頃、王城・謁見の間にて


「衛兵、逃げた2人を暗殺せよ」

「はっ!」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

「何だね勇者?折角人が気持ちよく独裁しようとしてると言うのに」

「宗教は、貴方のような悪者のために存在しているのではない!辺境の村の貧民のような、貧しい人たちの為にあるんです!!」

「愚かだな。お前のような青二才が宗教を語るなど片腹痛いわ」

「でもせめて暗殺などという汚い手段を放棄すべきです!」

「喧しい!衛兵、こいつらを城から追い出せ!!」

「はっ!」

「なぜだ!なぜそこまでして私利私欲を優先する!?」

「それが帝王学だからだ!(※違います)」

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何でも屋ハルジークの奇妙な出来事 自由人天宮 @Amamiya1131

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