蓮の精霊が人に化身し、初代の王を産んだとされる、大陸の端に突き出したタティン王国。
現王ナスイールは、民を愛する穏やかで美しい王。
その王に守られて、人々は平和に暮らしていた。
けれどもその小国に、ある時、力を付けた大陸の皇国が攻めて来る……。
平和に素朴に暮らしている人々が、理不尽に攻め入られる。
胸が痛くなる事態です。
この事態を収めるべく、王は驚きの行動に出ます。
その行動を、読者はどう見るでしょうか。
私には、美しい自己犠牲のようにも見えて、美醜を併せ持つ人間に対する戒めにも見えます。
作者様の作品には、人間が芯の部分に持つ美しさと強さを失わずにあって欲しいという願いを感じることが多いです。
美しくも優しく、そして強く胸に刺さる物語。
お薦め致します。
とにかくストーリーも文章も圧倒的に美しい幻想譚です。全カクヨム利用者の方々に読んでほしいと思うほどに。書き手として自信を失いそうなほどに。
ひとつひとつのことばを十分に味わいたくて、ゆっくりゆっくり読みました。
読み終えたあとは比喩ではなく体が震えました。王のナスイールが民を想う気持ちに、そしてそんな王をタシムが慕う気持ちに、胸がいっぱいになって……。
ナスイールと蓮の花の気高さや清らかさも、悲しくも美しいクライマックスも、王家の指輪も蓮の茎の砂糖漬けまでも、まざまざと脳裏に浮かびます。ラストも完璧。
これからは、蓮の花を見るたびにこの物語を思い出すでしょう。
本作品は、幻想的な蓮の国タティンとその王ナスイールの姿を通じて、人間の内なる美しさと悲劇を浮かび上がらせている。
蓮の花が咲き乱れるその国は、平和と調和の象徴であり、それを守るために王が下した決断は、深い愛と犠牲の意味を我々に問いかける。
物語の中で蓮は、ただの植物ではなく、生命と精神の結びつきを象徴しており、その美しさは読者の心に深く刻まれることだろう。
作者は、細部にわたる描写と豊かな感情を通して、この幻想譚を現実世界に根差した深いメッセージを持つ物語へと昇華させている。
ナスイール王の選択は、人間の尊厳と自己犠牲の美徳を讃え、読者に深い感銘を与える。
美と悲しみが共存する世界を、繊細かつ力強く描き出しており、読者の心に深い余韻を残すだろう。
もしかしたら、今とは違う文明だった遥か昔、あるいは、異なる世界線を辿った遠い未来に――
「自然と人が互いに尊敬し合い愛し合っていて、自然が人を護ってくれていた時代があったのかもしれない」と、作者の鐘古こよみ氏は言います。
『蓮花の王』の舞台は、蓮の精霊を祖とする王が統治する、蓮の中の楽園・タティン王国です。名前のある登場人物は、美貌の青年王・ナスイールと後に蓮畑の管理者となる少年・タシムです。
ふたりが蓮畑の沼を舟で進んで行く情景は、作者ならではの圧巻の描写力によって脳内で鮮明に映像化されるでしょう。気が遠くなるような美しさは、まさにこの世の楽園そのもの。もういっそ、この泥土の奥深く、ゆっくりと沈んで堆積物になりたいとさえ思いました。
(※注意:鐘古こよみ氏の文章には中毒性があります)
物語は、のどかなままでは終わりません。
やがて、この楽園が蛮国に侵攻されるという危機に見舞われます。
強大な軍事力を前に、タティン王国は為す術無し。
民と国を護るために!
蓮の王ナスイールの思惑とは……!?
是非、この美しく温かい世界に、一度溺れてみてください。