「悪対悪」の物語である。
とくに第一話「残虐な女」の印象が強烈である。
二人の裸の男が戦っている。
二人は手をうしろ側で縛られている。
男たちは互いを噛んだり蹴ったりして殺そうとする。
男たちは自分の妻や子供を人質にとられている。
この凄惨な決闘を見つめるのが美貌の女吸血鬼ジョゼフィーヌである……
この第一話のインパクトが凄かった。
悪の造詣が深ければ深いほど、その後のカタルシスは大きい。
本作は初手でそれに成功している。
読者は第一話を読んで早くも
「この女に誰か勝てるのか?」
「だれかこの女を倒してくれ」
という疑念と願望を抱く。
そんな読者の願望に応え、満を持して登場する「討伐者」がまた強烈だった。
単純にヒーローと呼べない、ダークなヒーローなのだ。
自分が思い出したのは『ダーティハリー』だった。
おそるべき犯罪者サソリを追う刑事ハリーも「ダーティ」と呼ばれるように一筋縄ではいかないキャラだ。
そこが「討伐者」と似ている。
アメリカの観客はハリーのタフな捜査に悲鳴と歓声を同時にあげた。
本作を読む読者も、同じように悲鳴と歓声をあげるだろう。
西洋の恐怖小説やゴシック小説、それに西部劇などあらゆる娯楽小説のエッセンスを感じた。
クトゥルフ神話の影響もあるかもしれない。
これらのジャンルに興味ある方、また「決闘」そのものに興味のある方にぜひご一読をおすすめします。