第3話 見えてはいけないもの
ピピピピッという目覚ましの音を聞いて気だるい体を起こす。
ローテーブルを挟んだ隣で、ぐーすかと寝ている女の子を見ながら、なぜこいつはこんなにも平然と寝ていられるのだと少しだけ怒りが湧く。
「おい。起きろ」
「ううーん・・・」
脚を軽く蹴るが、少し身動ぎしただけで起きる気配がない。
はぁとため息を付きながらキッチンに立ち、朝食の準備を始める。
冷蔵庫から卵と味噌を取りだし、簡単に目玉焼きと味噌汁を作る。
その匂いに釣られてか、母さんがおはようと言いながら襖を開けて部屋から出てくる。
大きめのTシャツが肩からずり落ちていて、ブラストラップが見えるので、それを注意しながらご飯を用意する。
「おい。そろそろ起きろ」
テーブルに朝食を並べながら再度神宮さんを蹴ると、目を擦りながら起き、目の前に用意された朝食を見て重い瞼を一気に持ち上げ目を輝かせている。
「ほう。お主が用意したのか?うまそうじゃの」
「居候なら手伝って欲しいんだけどな」
そう嫌味を言うが、神宮さんは気にする様子もなくいただきます!と元気に言って朝食を食べ始める。
「美味い!お主料理の才能があるのぉ!」
「真司の作るご飯は美味しいのよ。いつも思うけどお店出せちゃうんじゃないかしら」
2人から褒められ機嫌がよくなるので、俺って単純だなと自分自身でそう思う。
朝食はいつも母さんと2人で食べているが、基本的に母さんは朝が弱いので会話がほとんど無い。そのため、美味い美味いと食べている神宮さんが増えただけで一気に賑やかになる。
少し、ほんの少しだけ賑やかなのも悪くないなと思った。
______
「ちょ!なにしてんの!風呂場で着替えろよ!」
朝食を食べ終え、登校の準備をしていたのだが、神宮さんは当たり前のように居間で着替え始めた。
急に目の前で服を脱ぐものだから、不可抗力ではあるが下着が見えてしまい咄嗟に目を逸らす。
「妾は別に気にしないぞ?家族なんじゃからな。・・・それともお主は意識しているのか?それなら。ほれ、じぇーけーの下着姿じゃぞ」
視線を逸らした俺をからかうように、にひひと笑いながらほれほれと下着を見せてくる。
彼女の胸を包む純白の布が視界の端でチラチラと見えてしまい、必死に見ないように抵抗するが、俺も年頃の男である。正直見たいという気持ちに駆られる。
「ほんとにやめろ!まじで見るぞ!」
「ひひっ。いいぞ?」
なんだか負けているように感じてしまい、じゃあ見るからな!と言って逸らしていた視線を神宮さんに向けると、俺の目に神宮さんの真っ白なブラが飛び込んでくる。
ブラだけならまだよかった。
神宮さんは、座っている俺に見せつけるように腰を曲げて前のめりになっているので、彼女の大きいとは言えない胸と下着の間に空間ができ、白い肌から続く胸の頂点にあるピンク色まで見えてしまう。
「神宮さん、その・・・見えてる」
「ん?見せているんじゃが?」
たぶん神宮さんは下着を見せているつもりなのだろう。
目を逸らさなければと思うが、欲望に負け目を逸らせない。
「下着じゃなくて、その。・・・ピンク色のやつが・・・」
そこまで言われて気がついたのか、神宮さんは1度自分の胸を確認し、そのまま顔を真っ赤に染めて、守るように自分の胸を抱きしめる。
「このっ・・・!変態!!」
「俺悪くないんだけど!?」
そうツッコミを入れると理不尽にも頬に平手打ちが飛んでくる。
下着は良くてもその中身は見ちゃダメなのか。神宮さんの許容範囲がわからない。
頭から離れない神宮さんの胸のことを考えながら、ヒリヒリと痛む頬を押さえるのだった。
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