7 聖女の秘密

五感から送られてくるその情報を辿っていき、それが突然プツリとなくなってしまった場所で止まれば、そこには本がぎっしり詰まった本棚が設置されていた。


多分常人からしたら、特に異常がない場所の様に見える────が……。



「ん〜??何かエネルギーの羅列……【魔法】がベッタリと本棚にくっついているな。」



魔法でぐるぐる巻きにされている様な怪しい本棚。


それをジロジロと眺め、不敵に笑うと、すぐにその数字の羅列の様なエネルギー配列を正しく組み換え無理やり破錠してやった。


すると────本棚はぐにゃりと形を変えて大きな扉に変わる。


「お〜……すごっ。」


突然目の前に現れた扉は、まるで『いらっしゃいませ〜』と言わんばかりに勝手に開いた。


どこまで続いているのかしらないが光の一切差さない真っ暗な内部も< 超視覚 >を持っている俺にしてみれば昼間の明るさと変わらない。


そのため俺は鼻歌を歌いながらその扉の中へご機嫌で入っていった。



明かり一つ差さない中を進んでいくと、割りと直ぐに外の図書館ほどは大きくないがそれなりに開けた空間が広がっていて、その空間一杯に本棚と本、そして何かの書類の束が沢山山積みになっているのが目に飛び込んでくる。



「これはこれは……。」


俺は待ってましたとばかりに、両手を合わせてスリスリと擦った。


恐らくコレは、表に出せない不味いことが書かれた資料達〜♬


ラッキ〜!と呟きながら早速端から読んでいくと、そこにはこの世界の残酷な歴史についてや、王族や貴族達の知られたくない情報の数々、そして現在の国の情勢まで、だいぶ幅広く色々とヤバい事が書かれていた。



「結局世界は違えど『人』は……ってヤツか。

俺の世界だって『クリーチャー』がいなくなったら……一体どんな世界になるんだろうな?」



夢の様なお話だが、勿論楽園になるとは限らない事は……今まで生きてきた事である程度は分かっているつもりだ。


少々薄暗〜い気持ちになった所で、気になる本を見つけた。



《『聖女』について》



まさに知りたかった事にドンピシャな物を見つけ、ニヤ〜と笑いながら本を開き書かれている文字を目で追っていった。



それには聖女の一生についてが書かれており、召喚後に直ぐに始まる魔法訓練。

そして満を持して決行されるユニークモンスターの討伐が詳しく描かれていて、確かにその実力、戦歴共に華々しいが……何故かどれも、プッツリとある時期からそれらが書かれていない。


勿論なんちゃら王と〜、なんちゃら王子と結婚〜子供何人〜とかの情報は書かれているが、伝説的な偉業の様な出来事は、その時期以降何一つとして記録がない様だ。



「……一つもないのは、ちょっと変だな。

その時期までは、ユニークモンスター討伐後も結構派手な活躍が書かれているし、それだけの力が使えたなら死ぬまで何かしらあったはずなのに……?」



結婚して王族の一員になったから戦わなくなった?とも思ったが……それにしては結構重大事件に発展したモンスター被害がその間にあっても、伝説の『聖女』が表に出てこないのは、何だかとてつもない違和感を感じる。


そこでハッ!として、今まで判明した事実達をゆっくりと繋げていき、ある一つの仮定を思いついた。



「まさか、この世界に長期間いる事で体の性質が変化したのか……?

この世界の人達と同じ様に、エネルギーを体に取り込みだしてしまった……とか?」



ある時期から突然華々しい功績がなくなってしまったのは、強力な魔法が使えなくなったからか。


その答えに最終的に辿り着き「な〜るほどな。」と思わず口に出してしまった。


そして哀れにも聖女として召喚されてしまった少女が元いた世界について考えたが、少なくとも俺と同じ世界からは来ていなそうだとも考えられる。



「新型人類なら、身体に吸収されない様にずっと魔法使えるもんな。

<超視覚>があれば視認できちゃうし、コントロールも簡単だし……。」



異世界って沢山あるんだな……などと考えながら、更にページを進めていき、聖女に関するその本の後半のページをめくった瞬間、俺は眉を潜めた。


そこには白紙が目立つページがあって、恐らく男性のモノと思われる名前と能力などに関する記載が書かれていた。


どれも日付をみれば────ほとんどがユニークモンスター討伐後に殺されている事が分かる。

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