第17話:屈辱の女騎士

 リオス一向はデイヴの案内の元、城門までの帰路に着く為に王城の廊下を歩いていた。

「皆様には大変失礼ですが、王都ではある催しでどの宿屋も満席状態でしてね。」

「ある催しとは?」

「王国が誇る十三騎士団による武闘大会が毎年行われるのです。その為、各領地から推しの騎士を勇敢に闘うのを見る為に国民一丸となって、見に来るのです。」

「そりゃあ、凄え楽しい事じゃねぇか! 俺たちも出れるか?」

「これはこれは御冗談を。伝説の地である英霊郷ヘロアスファリアの種族はランクが違うというではありませんか、貴方方が御目に適う相手がいるかどうか、分かりませんよ。」

 ディムナが武闘大会に喰いつき、デイヴが笑って謙遜する中、グロリアは王の謁見から心ここに在らずと落ち込んでいて、リオスは心配していた。

「グロリアさん、貴方の屋敷ならこの方々を泊めることが出来ましょう。使使でしょう。」

「…! はっ、はい! その任、慎んでお受けします!」

 毒舌を吐いたデイヴにグロリアは怒りに耐え、懸命に誠実を装う。

「おいおい、相変わらず、旦那に失礼な態度を取っているじゃねぇか! 阿婆擦れ騎士!」

 向かいの廊下から荒く声を掛けたのは黒い長髪と燻んだ灰眼の切れ目を持つヒョロガリの男性で左の目元に切り傷の跡があり、黒い貴族衣装を着ていた。

 グロリアはその男に思わず、身を引いてしまう。

「スマト卿…」

「何だ? 俺にも失礼な目線を送るじゃねぇか、内心でさ罵ってんじゃねぇの? 俺の態度が怖いのか、あぁん?」

 切れ目の鋭さで威圧する彼にグロリアは目を逸らそうとする。

「ああ、そう言えば他の奴もいるな。俺はスマト・フリードリッヒ。旦那、デイヴ卿の腰巾着だと覚えておけ。」

「あっ、あ、はい…」

 スマトの悪びれた笑みに戸惑うリオス、すると、グロリアはリオスの手を引っ張り、その場を後にしようとする。

「スマト卿、これから、リオス達、恩人一向に屋敷を案内しなきゃいけないので、これにて失礼する。」

 しかし、スマトはグロリアの引っ張る腕を掴み上げた。

「おいおい、恩人の手を引っ張るのは無礼だぜ。それとも怖いか…お前の親父さんである先代騎士団長を殺した噂を。」

「…く!」

 グロリアは振り返って、鋭い剣幕でスマトを睨みつけ、彼も嘲笑しながら、鋭い眼光を突きつける。

 その時、デイヴが彼の頭を小突いた。

「いて!?」

「スマト君、グロリアさんを虐めるのはやめて欲しいとあれほど言いましたよ。また、折檻されたいですか?」

「…すまねぇな、旦那。この嬢ちゃんが過ぎた事を言うもんだからな。お前の親父さんを殺したのは、俺か、旦那なのかって。」

「スマト卿、私はもう疑ってませんので、これにて本当に失礼します。すまない、リオス。今は案内させてくれ。」

「えっ、はい! 分かりました。」

 グロリアはリオス一向を連れて、王城の廊下を後にした。

 それを見届けたデイヴとスマトは怪訝そうな表情を浮かんだ。

「スマト君、君はもう少し人当たりの良さを考えるべきです。彼女はより一層、気が悪くしてしまいす。」

「旦那の言う事も一理あるが、どうすんすか? あの嬢ちゃん、も味方しているそうですぜい。」

「何、あの男なら気にする必要はありません。私達を訴えようとしてますが、はありませんしね。」

「流石、旦那だ。例の件も上手くいけるといいですな。」

「ああ、私の采配で騎士団は生まれ変わります。スマト君もそれなりの地位を期待して下さいね。」

 まるで、悪巧みをしてるかのような怪しい笑みは静かに装っていた。








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