第15話:超越者の買い物〜シェナとオウヒの場合〜

 シェナとオウヒは服屋で買い物をしていた。

シェナは金色の刺繍を施した白いワンピースを着て、オウヒはゴスロリの服を着ていた。

「これで本当に兄にをメロメロにできるの?」

「ふふふ、私たち姉妹でリオスを骨抜きしましょう。」

 リオスに見せるのを楽しみにした二人にチャラい悪漢の三人が迫って来た。

「おいおい、彼女たち、可愛いねぇ。」

「俺たちとお茶しない? 静かな所で。」

「俺たちと遊ばない? 激しく。」

 うざ絡みする悪漢たちにオウヒは呆れ、詰まらなそうな目で見て、シェナは愛想笑いを浮かべる。

「すいませんが、私たちには用事がありますので。」

「兄に以外のロリコンはお断り。さっさと帰れ。」

 素気無く断られた悪漢たちは是が非でも彼女たちに迫り、そのうちの一人がシェナの腕を掴もうとする。

「いいじゃん、別に。大切な用事よりも、大切な遊びだ。」

 しかし、悪漢の手は何者かに叩かれ、阻まれた。後ろを振り向けば、リオスが悪漢たちを睨んでいた。

「痛ってぇ! 何すんだよ、このガキ!」

「すみませんが、この二人は僕の連れです。やらしい目つきで見て、触ろうとするのをやめて下さい。」

 普通、ナンパされた待ち合わせの彼女を庇ったら、すその場から何事も無く去れるが、リオスは少年的見た目を見て、悪漢たちは侮り、彼に食って掛かる。

「うぜぇんだよ、ヒーロー気取りかテメェはよぉ!」

「こんな弱々しい彼氏なんている訳無えだろうが!」

「ガキはお家に帰って、ママのミルクをしゃぶりな、おらぁ!」

 悪漢たちがリオスの顔を殴ったり、彼の脇腹を蹴ったりして、リンチした。

 しかし、リオスは倒れるどころか、殺気を篭るぐらい目付きを鋭くし、殺意をひしひしと彼らに喰らわせる。

「ひぃ!? 何なんだよ、テメェ、雑魚の癖に! おい、この女がどうなってもいいのか!」

 悪漢たちはシェナとオウヒに短剣ナイフを突き出し、彼女たちを人質にした。

「この女を助けて欲しけりゃ! さっさと、俺たちから去れ!」

「そうだ、俺たちは本気だぞ! こんな可愛らしい服だって細切れだ! よく、見てろ!」

 悪漢たちはシェナのワンピースとオウヒのドレスを短剣ナイフで切り破った。

 それを見たリオスは青褪める。悪漢たちは彼が恐れを成したと勘違いするが、彼が見たのは…

 瞳孔を鋭くし、憤るオウヒと血管が浮き出ても、目を瞑って、微笑むシェナだった。

「おいおい、ここでビビりやがるなんて、って、なんかこっちの背筋が寒い…」

「蠱毒の妖術、這出毒毒はいでるどくどく。」

「うわらばべびでぶうぅぅぅぅ!?」

 一人の悪漢は口や鼻、毛穴や臍といった身体中の穴から百足や蜂、蜘蛛などの毒蟲が這い出て来て、それらが全て出た瞬間、心も身体も乾涸びていた。

 先程の妖術は相手の生命力を毒蟲に変える妖術である。

「おいぃぃぃぃ!? どうしたんだ、いったい何が…!?」

「聖天龍たる我が誓う…」

「あがぁっ!? 痛でぇっ!?」

「この愚かな悪心を持つ者に善心を持つ者へと生まれ変わる邂逅を! 祝福之赤子ブレスド・ベイビー!」

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!? おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ!!」

 シェナに頭を鷲掴みされた悪漢が白い光粒子に包まれた瞬間、純粋な赤子に変貌され、泣きじゃくる。

「あっ、あああっ、どけえぇぇぇぇ!」

 最後に残った悪漢は自身の仲間が無惨な姿に変えられたショックで気が動転し、短剣ナイフを振り回しながら、他の群衆を退かせ、逃げようとした。

 その先にエアノーラ、リョーマ、ディムナが来ていると知らず。

「どけどけどけえぇぇぇぇ! 糞があぁぁぁぁ!」

「五月蝿いわね。失意之剣滅ロストソード。」

「はへぇっ!?」

 短剣ナイフの刀身が砂のように分解されたことに呆気に取られた隙にディムナの巨腕に鷲掴みにされ、エアノーラ、リョーマ、ディムナ、シェナ、オウヒ、そして、リオスの六人の超越者に包囲された。

「へぇ、随分、リオスを虐めてくれたわね。リオスが嫌がるから、遠巻きで見守ったけど、あいつを虐めていいのは私だけだからな。」

「随分、俺の弟分を可愛がってくれたな、ガッハッハッハッ…だが、覚えておけ、弟分を可愛がるのは俺だけだ。」

「テメェらの常識は分かった。だが、テメェらの下らない常識は教育に悪い。リオスに常識を教えるのは俺だけだ。分かったか、非常識者。」

「うぅ、兄にに褒めてもらうとした服が傷付いた。万死に値する。」

「後で、可愛い刺繍で縫い直しますよ。」

「わーい、やったー! 兄に大好き!」

「ふふふ、私のリオスを虐める者にはきつ過ぎるお灸を据えないといけませんね…か・く・ご・して下さいね。」

 六人に睨まれた最後の悪漢は髪を白く変色させ、失禁し、情緒が完全に崩壊した。

「あびゃっ! あびゃびゃっ! あびゃびゃびゃびゃびゃっ!」

 そんな彼らに王都の衛兵が取り囲む。

「貴様ら、王都での数々の所業を犯した罪で城へ連れて行く! 皆の者、掛かれぇ!」

 リオス一向はこうして、城へと連行された。グロリアが唖然としている隙に。

「何が超越者だ! 迷惑者じゃないか! チキショオォォォォ!!」

 の彼女の叫びは王都に鳴り響いた。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る