第10話:救世主の一団

 冒険者の街、アドベン都。このエウロッパ大陸に存在する最大の冒険者ギルドがある城壁都市にして、かつて、始まりの魔王オディヌ・パンテオンを倒した始まりの勇者アルフのパーティー一向の一人だった名もなき冒険者によって建てられたと言われ、付近には魔物の森や迷宮遺跡ダンジョンがあった。

 しかし、それらから幾つもの暴走した魔物の群れ、魔物行進デスマーチが起こり、四つの城壁を破れられ、対処に当たった冒険者や自警騎士団は全滅、死こそはなかった者の、その全員は身体がもう二度と自由に動かせないほどの重傷者であり、絶望に暮れていた。

 リオスたちが魔物行進デスマーチを退治した後、街に戻れば、街路は倒れた者たちで溢れ、後衛で支援した者たちによって、応急処置が施されたが、冒険者生命を絶たれた者たちの悲痛な叫びがこだました。

「ぢぎじょう…ぢぎじょう…これじゃ村の孤児院の仕送りが…」

「いやだ…俺ば…いづが…神話級ミソロジーぐらずの…冒険者に…」

「じにだぐないよ…だれが…だずげで…」

 四肢や身体が捥がれたり、斬りつけられた彼ら彼女らの様子にグロリアは絶句しか出来なかった。

 そんな傍らでシェナは聖術を唱える。

「聖天龍たる我が誓う。この戦場で懸命に戦うも、命を散らす者たちに再び命が芽吹くように…戦士たちよ再び癒せウォー・ブレスド。」

 唱えた瞬間に上空から翡翠の光粒子が街の内外全体の戦傷者たちに降り注ぎ、包まれ、身体中が癒え、重傷は消失した。

「動く! 動けるぞ!」

「俺はまだやれる! 俺はまだ未来がある!」

「ありがとうございます、聖天龍様! 本当にありがとうございます!」

「ふふふっ、困った時はお互い様です。私は困難に苦しむ者を拾う龍の女神様なのですから。」

「チキショウ! こうなることだと思ったよ!」

 被害に苦しむ自分が馬鹿らしくなったグロリアは悔しくて、自暴自棄に叫んだ。

 一方、その頃、リオスたちはエプロン姿となり、どこからともなく取り出したであろう屋外キッチンを使い、炊き出しをしていた。

「魔物肉の味噌鍋ですよ、美味しいですよ、絶対ゆっくり噛んで飲み込んで下さいね。」

「兄にの料理は天下一だよ、食べて、食べて!」

「この私、エアノーラ様が配膳しているから、感謝しなさいよ!」

「リオスの料理は滋養強壮に良いから、食べないと損だぜ!」

「さぁ、たんと食え! 冒険者も、自警騎士団も、街の人も、食って、食って、喰らい尽くせ! ガハハハハハ!」

 戦いから避難していた街の人たちも長蛇の列に並ぶくらい、疲れが吹っ飛び、活気に溢れていた。

 そんな中、先程のギルドマスターが顔を青褪めたギルド職員を連れ、列を割って入り、リオスの前に立つ。

「すまない、列を割り込む真似をして、あとで、後ろの人たちには何かお詫びしよう。」

「ここのギルドマスター様がこんな僕に何か用でございますか?」

「普通のギルドカード検証水晶で割れてしまうが、特別な検証水晶でLvレベル100だと分かったからな。私の部下を謝らせたい。」

 そう言ったギルドマスターの傍らでリオスに対し、額が地面のタイルに擦り切れるまで土下座をしたギルド職員は冷や汗を掻きながら、過呼吸に陥るも、必死に謝っていた。

「すっ、すいませんでした!Rkランクっていうのは分かりませんが、Lvレベル100なら話は別でございます! 数々のご無礼をお許して下さい! この街を救って下さって、ありがとうございます! あと、殺さないで下さい!」

 どうやら、リオスの戦いぶりをどこかで知ったのか、彼を恐れていた。

 リオスは口元以外笑ってない笑顔を浮かべ、優しく言い放つ。

「いえいえ、気にしてませんので。なので、気にしてませんよ。」

「ひっ、ひぃぃぃぃぃ!?」

 ギルド職員はリオスの睨み笑いに失禁し、後退りした。

「本当にリオスったら、優しい顔して、根に持つタイプだから、まぁ、それが良い所であり、悪い所だけどね。ついでに、樹都転生ウッドタウンズ・リインカーネーション。」

 エアノーラが指先を振りながら魔法を唱えると、街中の地面から巨大な根が現れ、壊れた建造物に侵食し、修復するどころか、生まれ変わるように補強、増改築していった。



 

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