パワー

男性A「日本を一周して全国のパワースポットを巡ってきたよ。おかげで力が湧いてきた気がする」


男性B「パワースポット……って、いやスピリチュアルの力を借りるまでもなく、日本一周してる時点で十分パワー溢れてるじゃん」


男性A「いやいや、さすがに乗り物は使ったよ」


男性B「そりゃそうだろ。徒歩想定で聞いてないわ。だとしてもそれ成し遂げられたら相当にパワフルだって」


男性A「自転車を、担いで歩いたよ」


男性B「徒歩どころじゃないじゃん。乗れよ。漕げよ。何で苦行に拍車かけてんだよ」


男性A「日本一周して帰って来るのに、10日もかかったよ」


男性B「はちゃめちゃに異常な速度だな。既に人間が到達し得ない領域を爆走してるじゃん。ある意味、神秘的と言えるかもしれないけど」


男性A「あぁ、そうだろう。こんなにもパワーが貰えるなんてな。見てよこの丸太のような大腿四頭筋」


男性B「フィジカル。スピリチュアルと対をなす言葉、フィジカル。普通パワースポットって運気とかを上げにいくんだよ、肉体を仕上げるんじゃなくて」


男性A「もちろん上がったよ、うんき。ほら、記念に写真撮ってきた」


男性B「乗用耕うん機を片手で持ち上げてる写真じゃねぇか。どういう状況なんだよコレ。右手に自転車、左手に耕うん機」


男性A「そうだ、これお土産。霊験あらたかな場所で作られた、あらゆるお力が詰まった特製のドリンク」


男性B「科学的に開発された、あらゆる栄養素が詰まったプロテインじゃなくて?」


男性A「1日10リットル飲むのが目安だ」


男性B「致死量超えてるよ。霊験云々じゃなくて霊そのものになってしまうよ」


男性A「そんなわけでオススメだぞ、パワースポット巡り」


男性B「お前ほど生物としての基準値を置き去りにした存在にはなりたくはないけど、確かに興味出てきたな。それで一体どこに行ってきたんだ?」


男性A「えーっと地図アプリ……。ここと、ここと……、あ、ここは会員証作るの少し面倒で……」


男性B「フィットネスジムのことをパワースポットって呼ぶなよ」

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