4.「想うは独り」

ーー店先から中を見ると嬉しそうにソレイュが手を振って、その後に手招きした。

1歩進むと空気が変わる。

なんか注目を浴びてる⁇

店に入ったら、客がみんなこちらを見た。 

ーー何⁈

ソレイュは笑って嬉しそうにしてるし…。

「モア!!話したかったんだ〜!」 

 なんで? 

ーーこっちも聞きたいことあったし。 

まぁ、いいけど。

「イマァジはいつから教えるんだ?」

 んん、今の絵が描き上がったらかな。

「それってどれくらいだ?」

 …さぁ?けど、7日はかかると思う。

「じゃあ、イマァジが出来上がるまで暇なのか?」

 あぁ。

「そう言えばモア、好きな食べ物は?!料理だったら、俺、なんとでもするぜ!」

 …ショコラかな。

「え〜、料理は〜?」

ーーがっかりされても、食べないんだから仕方ない。

「…ニラァジュにイマァジを教えるってどう教えるんだ?」

 …んん?次は、人間を描くらしいから描き出してからじゃないとわからない…。

「それ…誰を描くんだ?」

 …描かせて欲しいって言われたけど、なんかなぁ…。

「え〜!モアをッ…!

…ソレ、すっげぇ欲しい!!売るって?

いくらとか聞いてね〜??」

 ……さぁ?

ーー嘘。

くれるって言ってたけど、これを言ったら面倒な事になりそうだから秘密にしておこう。

「…ッ。モアのイマァジか〜…!はぁい、ティア。」

 あぁ、ありがとう。 

「もう、タンティの仕事はしないのか?」

 …んん?仕事があればやるかなぁ?

ーーどうせ暇だし。

「…仕事?かぁ…。」

ーーそんなに簡単には依頼はないだろうな…。

「今日は、これから何するんだぁ?」

 …んん、買い物に行こうかな。

「何買うんだ?」 

 生活雑貨…?

「…?とりあえず、右に出て2通り先のサンチェがいいぞ!

アソコは何でも、揃うしな〜!

そこのヤツにコレ渡せば良いから。」

ーーこいつ…便利。

 じゃあ、布屋は?窓に欲しいんだけど。

「…?ヌノ?マリォ?」

 あぁ、あれ。

「…!ソレな!サンチェから、右に3角を曲がった通りのマ・シェロだな!」

「ソレイュぅう! !ルジェ・ェ、おかわりぃい!」

「ウィ〜!」

ーー誘導してくれる地図⁈

めちゃくちゃ便利‼︎

これから、場所を知りたい時はソレイュに訊こう。

今の内に行こ……思ったより早く帰って来やがった。


「すまん。なんの話だっけ?」

 いや、別に。そろそろ行くから。

「あぁ、ソレイュ!いつも…ありがとうねぇ。

あら、初めましてねぇ?どなた?」

「あ〜!エマさん。

いちいち来なくても、テッチェルに置いて行ってくれればいいのに…!

コイツはモア!4階に住むことになったんだ!!」 

「そぉなのねぇ。よろしく。」

ーーなんだ?このほわゎんとした感じ…?

…花が舞ってる。

ここは、そんな奴ばっかり…。

 よろしく。

「何をされてる人なの?」

「モアは、かっこいいんですよ〜!えぇと…タンティ。」

ーーさらっとお知らせすんなっ‼︎

「まぁっ!タンティさんなの!?

…タンティさんてなぁに??」

「人探をしたり、情報を集めたり、人助け〜みたい仕事です!」

「じゃあ、何かあったら助けてね。」 

「気軽に言って下さいよ〜。たぶん腕は、補償するしぃ!」

ーーぃや、ちらっとこっちを見てにやりとされても…。

「おい、そろそろ行くぞ。」

「わたしは、エマ。この人は、レオよぉ。

あなた!後で部屋に寄りなさい。

…それじゃあね。」

ーー勢いある人差し指で指名された。

「…あのノゥジェルドはココで昔、パティスェ〜ルをやってたんだ!

今は、2階に住んでて。

たまに焼いたモワルゥ・ショコラとマドリァヌをくれるんだょ!

ソレが凄くうまくてさぁ!!」

 へぇ。今度こそ行くから…。

ーーその話はどうでもいい。

もう、いい加減に解放してくれ。

ソレイュが不服そうにひらひら手を振ってくる。


ーーえぇと、2通りの先…。

結構、遠い。

禡車を遣う距離では、ない。

けど、遠い。

普段、歩くと言う移動方法をしてない為か長く感じた。


ーーサンチェ。ここか…。

「ヴェ・ビァン!何か、お探しですか?」

 ブラシとダストパン、クロスとクッション、ピンとハンマーが欲しい。

「…?全て置いてございます。」

ーーあー、選ぶの面倒くさい…。

 では、クロスが見たい。

「?…はい、こちらです。

どうぞ。」

ーーぅーん。

赤と青。

迷うな……サファイア色にしよう。

青系かぁ…。

あ、これいいかも。

絵柄じゃなくて、布地の折り方で勝負してるこの感じ。

これ、大きさも丁度いい。

 これとこれ。後はそちらで良い商品を見繕って欲しい。

「メルスィ…お届けしますか?」

 じゃあ、この住所に。後、これとこれは今持って帰る。

ーー届け先を見た途端にすごく嬉しそうにこっちを見られた。

「この近くにお住まいだったんですね!

コノお店。僕、お気に入りなんですよ!!

最近、越して来られたんですか?」

 あぁ。

「そうですか。いろいろ物が入り用でしょう…。」

 そう…おそらくまた来る。

「オフ・ヴォルゥ!!またを待っています!」


ーー次は、布屋。

右に3角、曲がった通りだっけ?

……地味に精神的にくる距離だな。

1。

2、帰りは禡車を捕まえよう。

3…、の角を曲がった通り。

マ・シェロ……。

ここか。


ーーぅーん。

部屋に貼る布はどうしようか…深いサファイアっぽい色にするか…。

…濃い青、濃い青、あった。

…そう言えば、ないと困る。

見つけた…鋏。

 これを5。後、これも。

「メルスィ。ちょっと待っててくださいねぇ。

何に使いますか?」

 窓に貼りたい。

「…?マ、ド?」

 あれ。

ーーあ、あの布いいなぁ…。

でも、買っても何に使う…?

「はい、お待たせしました。」

ーー早ッ‼︎

やっと終わった。

後は、帰るだけ。

…あー‼︎

エマって言う女の所にも行かないと…。

…面倒だな。


- - - - -

「はい、どなた?」

 下の店で会っ…

「ぁあ、あなた!

待ってたのよぉ!!さ、入って!

レオぉ!“アノ“モアがやっときたわよぉ!!」

「あぁ。やっとかぁ。」

ーーやっと、って。

待たされたって聞こえるけどッ⁈

「ちょっと待ってて。」

ーーなんだろう?

エマに引っ張られ、瞬く間の時…鏡に青い髪を見た気がした…。

「これを渡したかったの。」

 これは?

「良いショコランテを頂いたの。

後、モヮルゥ・ショコラとマドリァヌも入ってるから。また、感想聞かせてね。」

 ありがとう。

ーーぁ…綺麗。

「あ…コレ?良かったらあげるわ。

使い道がなくてここに飾ってたの。」

 でも、家に火をつける物も何もない。

ーーそんなに必要性はないけど…まぁ、くれるならもらっておこう。

「そんなのあげるわよぉ!」

 いいの?ありがとう。

ーー早ッ‼︎

もう刺し終わってる。

ほら、くれた。 

「寄ってくれて、ありがとぉ! 

…夢で心を拐われないよぅにね。」


ーー階段を上がる音が響いてる。静か…。

はあぁぁー。

精神的に疲れた…。

クロスとか選んだの、初めて…。

こんなに面倒なんだ…。

ーーカーテンの隙間からの月灯りが綺麗…。

いくら残ってるんだろう。

…ん?

この紙は⁇

写真か、なんのだろう?

…「あいつ」の子供の頃の‼︎

うぁあー可愛いぃッ‼︎


…逢いたいな。


しっかりしろ‼︎

ここでは独りなんだから‼︎

「独り」

帰りたい。あの場所へ。

帰りたい。あの楽しみがある場所へ。

帰りたい。必要で必要としてくれる「あいつ」の所ヘ。


…さっきエマは何くれたんだろう⁇

良いショコラ…って言ってたし、燭台とかのこともあるし。

今度、礼はしないと…。

ショコラか。

どうせ味は、しないんだろうけど……。

!!

…ぁ。

あぁ…。

…甘い‼︎

ー何⁈

この感覚、初めて‼︎

これは…?

何も味がしない…。

……。

…これは…?

…甘いぃ‼︎


ぁ、なくなった…。


ーー明日は、禡車でこの近所を周ってみよう。


生活に困らない程度に知っておいた方がいいな。

わかんない時は、ソレイユを遣うとして…。

部屋をいろいろ見て周る。

 

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