ーー階段で絵の具で汚れたカーディガンを着た青年と階段で会った。

じぃと観られてる気がする…。

「…！もしかして、上の階に越してくる人ですかっ！？」

　そぉ…だけど？

ーーぅわっ、何？

両手をゎしっと掴まれて、ぶんぶん振られる。

「わあぁ！ヤァテさんだぁ！歓迎しますぅうぅ！！」

ーーすごく嬉しそう、笑顔から花が舞ってる。

…わかったから、手を離して欲しい。

「とりあえず、俺の部屋に来てください。3階です！」

ーー手を離してくれない…。

もう仕方ない、大人しく手を引かれておこう。

「どうぞ。」

ーー画家なんだ、絵がたくさん。

ん？この描き描けの絵は？

「お好きなんですか？」

　…まぁ。

「好きなものは？　

俺は、ァルヴァズを描いています。

あまり認められないですけど…。」

　？…肖像画かな。

「ショゥゾゥガ？どんな所が好きですか？

俺は、空気感を出すのが好きです。」

ーーどこだろう？

　…綺麗な人間が描かれてる所。

ーーぁ、描きかけ絵。

やっぱり気になる…｡

　教えようか？前に少し教えた事あるから。

「え！？いいんですかぁ！！いくらで？

まだ、名前言ってなかったですね。

俺は、ニラァジュ・トロワです。」

　モア・リシャール。絵は趣味だからお金は、いらないかな。

くれるなら、もらうけど。

「モアさん！払います！払いましぇ！！

これから、よろしくお願いします！！」

　昔からここに？

「ソレイュがお店を開いた時からです。

小さい頃からの仲なんですよぉ。」

　へぇ、いつから絵を？

「？…もう10年にくらいなりますかね…。」

ーー年数以上の描き込み。

10年では、これは出せない…。

　この絵はもう少しで完成？次は？

ーー次が少し楽しみ。

「…次は…ぁ…その、モアさんを描きたい…です！！

お願いしても…ぃ、ぃい…ですか？？」

ーー…⁇ えぇ⁈次も風景を描くと思ってたのに‼︎

「…それで…出来上がったら。も…もらって、ください！」

ーーがっかりしないか、ちょっと心配。

「…ダメ…ですか？」

　いいよ。

「わぁい！嬉しいぃ描く事偉い人達の嗜みで、教える立場に立てても。

俺なんかの地位で教えてもらうなんて珍しい事なんですよ！

俺、頑張りますね！」

　あぁ、期待してる。

ーーぁ、綺麗な絵。

「…コレですか？」

　ん？あぁ。

「……気に入ったのなら、あげます。」

　ぇ？いいの？

「俺のイマァジに足を止めてくれた人のイマジィアなんですが。

その人もモアさんが、持っていてくれた方が喜ぶと思うので。」

　ありがとう。

「コレが好きなら、きっとコレも面白いですよ。

ソノ人からお借りしてるんですが。

読み終わったから、ずっと貸してくれるそうで…貸しますよ。」

　ありがとう。　

「俺は、読み終わったので感想を教えてくださいね。」

　わかった。

ーーはしゃいでいろんな事を話して来る。

好きなこと、感動した事、お気に入りのお店の事。

苦手なこと、落胆した事、大きな音が嫌いな事。

そのたびに相槌を打つ。

「モアさんは、何色が好きですか？」

　…サファイア色とかは好きかな？

「好きな食べ物は？」

　…んん、ショコラかな？

ーーなんで好きな食べ物？

食べ物の好みを訊かれても、わからない。

でも、ショコラって言って置けばとりあえずは大丈夫なはず。

「好きなアニャマルはなんですか？」

ーー動物？

強いて、言うなら猫かな？

下の階の飼い猫がやたら懐いてた。　

　…猫かな。　

「ネ…ォ？」

　…にゃあにゃあ鳴く奴。

「ぁあ！アノ、フワフワの！

好きな季節は？」

　…冬かな。雪がきれい。

ーー街に積もった雪は美しい。

葉が枯れ落ちた木に雪が積もった景色はまるで、白い花が咲いたようで美しい。

「ュ''…キ？」

　…寒い時に降って来る冷たい奴。

「寒いの平気なんですか？？」

　あぁ。

「羨ましいです！　

俺、寒いのダメで…。」

「…何かを奏でる事はできますか？」

ーー何故？楽器？

　ピアノとヴァイオリンが人並みにできる。

「すごい！！聞いてみたい！！いつか聞かせてください！！」

　じゃあ、ヴァイオリンが手に入ったら…。

「楽しみです！！

…あ！ちょっとのつもりが。だいぶ呼び止めてしまって！ごめんなさい…。

嬉しくて…つい、話し過ぎちゃいました…。」

　別に。

ーーやっと解放されるー‼︎

　じゃあ、今のが仕上がったら、また。

「はい！お部屋に伺います！！」

　あぁ。夕刻に。

「ぁ！コレ、忘れないでくださいね！」

　ありがとう。

ーー静かな階段、…ほっとする。

前いた所では、この静けさはなかなかなかった…。

水が配管を通って行く音しかしない。

窓から綺麗な月灯りが射している。

でも、ぼやっとしてる

暗い赤い空に三日月。

そっか、あの猫いないんだっけ。

ーー部屋に入ると、更に静か。

真っ暗でがらんとした部屋。

とりあえず、眠ってる間に太陽に射されたくはないし。

カーテンを閉めよう。

もう1枚布が欲しいけど…今は、これで我慢。

じんわり周りは視えてる。

なんだかはっきり観えない…何故？

前の住人がベッドを置いて、引っ越してくれてて助かった…。

なんか、気付いたら知らない所にいて、知らない人に会って…？

ティーを出されて味がしなくて…。

ん？

ん？

…ん？！

ーー味がしない⁈

えぇー‼︎

…味がしない‼︎

じゃあ、あの甘く、奥深く、快美な、あの味がないぃ⁈

…ぁあぁ‼︎もぅ嫌だ。　

1番の楽しみなのに…‼︎

…似てるけど、違う所にどうやら迷い込んだらしい。

…最っ悪、面倒くさいな…。

「狩り」はとりあえず控えよう…。

味がしないんじゃ、意味がない。

ここはきっと…つまらない。

勝手がまだわからないし、とても窮屈に感じる。

味も香りもないし…。

今までのように面白いことを見つけれるだろうか…？

ーー「あいつ」もいないし…。

ーー孤独だ…。

ーーどうしてだろう。

孤独には、慣れてるはずなのに…。

ーー暗い。

闇も慣れてるはずなのに…。

ーー寂しい…。

ーー辛い…。

ーー……。

ーー…。