第34話 異変?

 魔石を回収し終えて、みんなを一箇所に集める。


 理由は、少し森の様子が変だから。


「みんな、お疲れ様」


「エ、エルク様、お怪我は?」


「オルガさん、大丈夫だって。それより、こんなに魔物がいるの?」


 俺の問いに、みんなが顔を見合わせて困惑する。

 俺は最近は森に行かないしわからないし。

 すると、ユルグさんが手を挙げた。


「オレの知る限りでは、こんな手前付近に現れることはなかった。最近、訓練もしているが精々同時に出会うのは二、三匹がいいとこだ」


「そっか。そうなると、調査が必要かな。これが異常事態なのか、それとも単純に俺達が森に入り始めた影響なのか」


「で、ですが、主君の怪我が……」


「シオンも心配性だなぁ。少し休んだけど、これなら平気だよ。それよりも、早めに調査をしないと……スタンピードだったら笑えない」


 俺の言葉に、全員の顔色が変わる。

 スタンピード、それは魔物の集団が一斉に襲いかかることを意味する。

 理由は様々だけど統率者が現れたり、何かに追われるように起きるとか。


「それは確かに……もしそうなら、今の都市の戦力では太刀打ちができません」


「どう考えても無理だね。だから、すぐに調査をしないといけない。何もないならいいし、何かあるなら対策を立てないと」


 もしかしたら、これは何かのイベントかもしれない。

 例えば都市が襲われて、大きな被害を受けるとか。

 だったら、その前に片付けないと。


「……わかりました。その代わり、無茶だと思ったら抱えてでも帰りますから」


「うん、わかった」


 話を終えた俺達は、再び森の中を歩いていく。

 すると、やはり……同じ種類の魔物の集団に襲われる。

 今のところは下位である魔物しかいないが、これで上位種がいたら危険だ。


「アイスショット!」


「ハァ!」


「フンッ!」


 俺の氷魔法、シオンの剣技、ユルグさんの拳を中心に魔物を倒していく。

 撃ち漏らしを四人の人族が協力して倒していく。

 それでも、限界が近い。

 やっぱり、もう一人遠距離攻撃か魔法使いが欲しい。

 こんな時、ステラがいてくれたらなぁ……いけないいけない、自分で断ったんだ。


「ふぅ……」


「主君、平気ですか?」


「魔力は平気だけど、精神的に疲れたかな。他のみんなはどう?」


 俺の問いにユルグさんは首を振る。

 そして人族の四人は……明らかに疲弊していた。

 最初の探索だし、仕方ないよね。

 でもこれで、大変さがわかってくれたらいい。


「別にここでは気を使わなくていいからね。無理される方が、困ることもあるし。ちなみに、俺は疲れたのでベッドで寝たいです」


「ふふ、主君ったら」


「とりあえず、休憩したらどうだ? それなりに、オレも疲れている」


「うん、そうしよっか」


 ユルグさんの提案に乗り、再び休憩を取る。

 俺はコップに水と氷を注ぎ、それをみんなに渡す。


「オルガさん、しっかり飲んでね」


「あ、ありがとうございます!


「ほら、ユルグさんも」


「ああ、助かる」


「みんなも、お代わりは自由だからねー」


 俺が言うと、みんなが嬉しそうに水をごくごくと飲み干していった。

 俺はお代わりを注いだ後、ユルグさんの隣に座る。


「これは美味い……冷たい水がこんなに美味いとは」


「ふふふ、でしょ?」


「ああ……相変わらず、お主は不思議な人族だ」


「ん? 何か変かな?」


 俺がそう言うと、ユルグさんがじっと見つめてくる。

 あらやだ、黒い目がステキなイケメン……違う違う、そうじゃない。


「シオンという……奴を対等に扱っているのもそうだが、先程の人族を庇った件もだ。それに、こうして自らが雑用のような真似をしている」


「だって、喉が乾いたら辛いじゃん。それに、俺だけ飲んでるのは気まずいし」


 どうやら、シオンの正体に気づいているらしい。

 それでも差別しないでくれるのはありがたい。


「そしかし、上の者はいちいち下の者の気持ちなど考えないと思っていたが……違うのだな」


「そういう人がいることは否定しないけどね。ただ、俺は小心者だからさ。あと、単純に良い人って思われたいし」


「くく、馬鹿正直な奴だ……だが、嫌いじゃない」


 こうして話す機会もなかったし、それだけでもここにきた甲斐があるね。

 すると、シオン話に入ってくる。


「主君、この後はどうしますか?」


「うーん、俺も疲れたし帰ろうか。とりあえず、魔物が沢山いることはわかったし。本当だったら、原因がわかったら良かったんだけど……みんな無理させちゃうし」


「ええ、調査としては充分かと。後はヨゼフ様や、地元の方々に聞くのがいいでしょう」


 何かのイベントだとしたら、これがスタンピードの前兆なのか確認しなきゃ。

 周りを見ると、あからさまにホッとしていた。

 すると、聞きなれない鳴き声がする。

 感高い声というか耳がキーンとなる感じ?


「なんの鳴き声かな? 鳥?」


「……まさか、あの魔獣がいるのですか?」


「心当たりがあるの?」


「はい。もしそうだとしたら、原因かもしれません。何より、放っておくと危険かと」


「むむむっ……仕方ない、もう一働きしますか」


 ふと周りを見るが、中々立ち上がれない。

 あぁー、帰るって言われてからまた動くのしんどいよね。

 定時で帰れると思ったら、残業ありますみたいな……いやだいやだ。


「オ、オイラはやれます! 体力だけが取り柄ですから!」


「ふむふむ……それじゃ、手伝ってもらおうかな。大丈夫、君ならできるはず」


「が、頑張ります!」


「うん、よろしく。ユルグさんは、ここで人族の方々を頼めますか?」


「ああ、任せるといい」


 本当はユルグさんを連れて行きたいが、新人さん達を残していくわけにはいかない。

 なので、俺は最後にシオンに振り向く。


「シオン、君を頼りにしてるから」


「っ——! はっ、我が剣に懸けて」


 すると、顔つきに気迫がこもる。


 さてさて、何がいるのやら。


 とりあえず、破滅フラグになるものは取り除かないとね。

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