第30話 これからの作戦と訪問者
それから数日後、俺は部屋の中で唸っていた。
ここのところ試しているが、中々に難しい。
今も自室の椅子に座り、休憩がてら試しているが。
「うーん……」
「主君、またですか?」
「そりゃね。これができたら……あっ、出来た」
「へっ? こ、このタイミングですか?」
「うん、多分。シオン、俺の手に触ってみて」
「では、失礼します……冷たくなってますね」
「……よ、ようやく成功したァァァァ!」
長かった! いやー、これは中々に難易度高いや。
アメリアが熱だけを発生させたように、俺も冷気だけを発生出来ないかと思った。
しかし、これが意外にも難航した。
「これは再現性が難しいですか?」
「多分ね。そもそも、氷魔法を使える人がいないし。そして、アメリアに関しても。他の火属性の人達にも試してもらったけど、誰もできなかったし」
「先入観というのは大きいですかね」
「うん、そうだと思う。どちらにしろ、アメリアは逃しちゃいけないや」
どう考えても、重要キャラでしょ!?
何より、領地開拓に役立つ人材だ。
「ふふ、では手厚くしなくてはいけないですね」
「もちろん」
「ですが、あちらの家族も感謝していましたよ? 何やら、アメリアは具合が悪くなることが多かったとか。それが、あの日以降良くなったと」
「原因については……憶測だけどわかってる。多分、魔力過多かなと」
魔力があるのに、それを放出できない。
言い方はあれだけど、便秘のようなものかなと。
当然、体調は悪くなるだろう。
「なるほど。それでしたら、働けて健康になって良いことづくめですね」
「そういうこと。よし、俺の冷気も魔石に込めてと」
「それを団扇で仰げば、冷風というわけですか」
「そそっ、むしろこっちの方が気持ちいいよ」
なにせ、この世界は基本的に暑いのだ。
それこそ冷房とかあれば、どんなに助かることか。
俺の氷も役には立つけど、あくまでも気休めにしかならない。
「確かに風呂上がりは暑かったですね」
「……」
風呂上がりのシオンは色っぽくて大変だった。
美人さんだからガウンが似合うし、濡れ髪に汗とか垂れてたし。
いやー、良くもこんな綺麗な女性にエルクは何も思わなかったものだ。
多分、良くも悪くも王族としての自覚があったのかもしれない。
「主君?」
「へっ? な、なに?」
「いえ、変な顔をしていたので」
「むぅ、失礼だなぁ」
「ふふ、すみません」
ふぅ、アブナイアブナイ。
こんなこと思ってるって知られたら愛想つかされちゃうよね。
すると、ノックの音が聞こえた。
許可を出すと、ヨゼフ爺が入ってくる。
「エルク殿下、お疲れ様でございます」
「うん、ヨゼフ爺も。それで、どうかしたかな?」
「ご報告に参りました。食料の件ですが、今のところ順調に進んでおります。ユルグやシオン殿が鍛えてくれたおかげですな」
「いえ、主君のおかげかと。主君が回復をした者たちのやる気がすごいのですよ」
「そっか。まあ、上手く行っているならいいや」
しめしめ、これで好感度も上がるし良いことづくめだ。
この冷気もあれば、更に好感度を上げられるぞ。
ただ、風魔法が少ないのがなぁ。
「それで、次の策ですが……何か考えはありますかな?」
「あのさ、エルフ族はいないんだよね?」
「……私の知る限りでは。私より上の代の頃は、少数ですが交流があったらしいとは」
エルフ族、それは長い年月を生きる種族。
容姿端麗な姿と、風と弓を得意とする森人だ。
噂では人族に愛想をつかして、森の奥に消えていったと。
「じゃあ、風魔法は難しいかな。あれがあれば、冷風とか温風とか出来るんだけど」
「風魔法に適正のある者は、基本的に戦場に配置されるでしょう」
「そもそも、辺境にいる理由もないもんね」
「それに、風魔法使いはレアですので。四属性の中では、一番少ないとされてます」
エルフはダメ、そして風魔法使いはそもそも適正か少ない。
ドライヤーには風魔法が必須だから、何か考えないとだね。
その前に、ドライヤーを作れる人を……ドワーフか。
「ドワーフの国に手紙は送った?」
「はい、氷の魔石と共に。こちらには、これを用意できる方がいますと」
「それじゃ、後は返事待ちだね」
ドワーフ族は鍛治を生業としているので、暑さは大変だろう。
なので氷の魔石を送り、交渉材料に使った。
「あっ……失敗した」
「何か問題が?」
「いや、今良い案が浮かんだんだけど……とりあえず、手紙が来る前に用意しよっと」
すると、再びドアのノックがする。
許可を出すと、アルルが入ってきた。
「エルクお兄ちゃん! お客さんが来たよ!」
「こら、アルル」
「ご、ごめんなさい! え、えっと、お客様がいらっしゃいました!」
「はい、よくできましたね」
「えへへ……褒められちゃった」
ヨゼフ爺がアルルを撫で、デレデレである。
そして、アルルも嬉しそう…ほっこり。
「……じゃなくて、また俺にお客さん?」
「はい! なんでも、雇って欲しいって……屋敷の前で立ってます」
「なるほど……まあ、とりあえず会ってみようか」
よくわからないが、使える人材なら大歓迎だ。
ヨゼフ爺も気になるというので、全員で部屋を出ていくのだった。
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