企画への参加ありがとうございます。
元恋人が記憶喪失になり、別れる前の気持ちのまま目を覚ます。
設定だけを見ると劇的な恋愛物語ですが、この作品で強く残るのは、派手な奇跡よりも、過去に傷ついた二人がもう一度きちんと向き合おうとする痛みでした。
彰は、夏香を忘れられない。
けれど、彼女に近づく資格が自分にあるとも思えない。
未練、罪悪感、後悔、逃げたい気持ち。
その全部を抱えたまま、記憶を失った夏香と向き合わなければいけなくなる流れが、とても丁寧に描かれていました。
夏香も、ただ守られるヒロインではありません。
記憶を失った彼女と、記憶を取り戻した彼女。
そのどちらにもちゃんと意思があり、彰を好きだった自分、傷ついた自分、今の自分を引き受けようとしているところが印象的でした。
映画や音楽のタイトルが各話に添えられている構成も良く、二人の時間が、ただの恋愛の記録ではなく、思い出の中に残るワンシーンの連なりのように感じられます。
傷つけたことも、傷ついたことも、なかったことにはできない。
それでも、謝ること。
話すこと。
少し距離を取りながらも、同じ世界に立ち直すこと。
この作品は、恋を取り戻すというより、失敗した恋の痛みを抱えたまま、それでも相手をもう一度人として見つめ直す物語だったと思います。
甘さだけではなく、苦さもある。
けれど、その苦さの奥に、ちゃんとやさしい光が残る青春恋愛でした。