<第1章①「1人目のギャル・月城ミサキ」1-1〜1-2を読んでのレビューです>
物語は、仕事帰りの二十代後半の男性と、駅前で偶然出会う白ギャルとのやり取りから始まる。登場人物の立場や状況を細かく描写することで、会話のやり取りにリアリティと軽快さが生まれている。テンポのよい会話文が続き、読者は自然とその応酬に引き込まれていく。
個人的に印象的だったのは、ギャルが失くしたストラップの星を探すよう主人公に迫り、「見つけてくれたらほ・っ・ぺ・に・チ・ュ・ー・してあげる!!」で、この一瞬の転換によって、彼女の奔放さと主人公の可笑しみが鮮やかに浮かび上がっているように思えた。
全体として、軽妙な対話と細部に及ぶ仕草の描写が印象的であり、登場人物の距離感や関係の変化をテンポよく楽しむことができる構成になっている。
「ご都合が過ぎると萎える」と「ラブコメなんてご都合でナンボ」
「主人公は主張の少ない無個性がいい」と「主人公が立ってないとヒロインも際立たない」
「一人に一途であるべきだ」と「ハーレムの何が悪いんだ」
流行り廃りの激しいラブコメというジャンルにあって
過去の流行を引きずるタイプの読み手(俺)は色々な二律背反に悩まされ続けている。
ちょっとしたことで引っかかりを覚えてしまうことが多々あるのだ。
翻って今作は「冴えないアラサー男が何故かギャルたちにモテモテハーレム」という
20年30年前感覚では眉を顰めそうになるタイプの作品だ。
だというのに読むのに詰まりを感じない。
「そうはならんやろ」という状況でも各人のしっかりとした意志が介在していたり
あるいは疑問を塗りつぶすほどに勢いのあるイチャイチャで乗り越えるパワープレイを見せる。
主人公もともすればキモい一歩手前なキャラクターをしているが
一歩手前で済んでるからこそ嫌悪感が少なかったり、逆にそれがヒロインを引き立てたりもしている。
直球イチャラブに見せた技巧派かもしれないバランス感覚、感服しました。
なんと言っても、ギャル! 生き生きとしたギャル! ギャル全開のギャル! やはりギャルは全てを救うんだ!という確信をもたらしてくれる作品です(ちがう、そうじゃない)。
まだまだ読み始めではあるんですが、オッサンがもう絶妙です。地の文の本音と口から出るセリフの乖離具合、そして零れ出る本音。
スマートな行動を混ぜ込んでくるくせに、後先は考えないし、後悔もするし、ちゃんとエロを期待してる。
ここのバランスの妙が、登場するギャルの可愛さをさらにブチ上げていますし、何より自然とオッサンを応援したくなります。おかしい。ギャルが目当てのはずなのに。
あとは、テンポ感ですね。自分にはまるでないので、このテンポ感は本当に憧れます。
例えるなら、BPM125くらい。気分上々↑↑ / mihimaru GTのような軽快なコメディ作品です。